株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO 天沼聰
時間の価値を高め、常に楽しみを見出す
株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO 天沼聰(あまぬまさとし)
■プロフィール
英ロンドン大学卒業後、2003年にアビームコンサルティング株式会社に入社し、IT・戦略系のコンサルタントとして約9年間従事。2011年より楽天株式会社 (現 楽天グループ株式会社)にて、UI/UXに特化したWebのグローバルマネージャーを務めた後、2014年に株式会社エアークローゼットを創業。
会員数80万人を超える、働く女性が選ぶNO.1 のファッションサブスクリプションサービスを提供している株式会社エアークローゼット。サブスクリプションサービスやお洋服 のレンタルサービスが普及していない時代に、どのような想いで創業し、サービスを創り上げたのか。その経緯について、代表取締役社長 兼 CEOの天沼聰氏にお話を伺った。
■自分の興味や関心を大切にした学生時代
小さいころ、父の友人であるキリスト教の宣教師が、クリスマスパーティーを盛大に行っているのを見たときに、「住む場所や人種、持っているカルチャーによって、価値観や考え方が異なるのだ」と知りました。そのとき、自分にとっての当たり前はほかの人にとっては当たり前じゃないのだということに、面白さを感じました。
以来、違う文化の場所で生活してみたいとの思いが強くなり、日本人学校の分校があるアイルランドの高校に進学。その後、人種のるつぼと言われるロンドンの大学に進学を決めました。
ロンドンの大学では情報テクノロジーを学びました。小さいころからPCが好きだった一方、まだ世の中にはそこまでテクノロジーが普及していなかったので、余計に興味がありました。当時、インターネットは匿名性で危ない世界という風潮が強かったのですが、場所を問わずに人とコミュニケーションがとれるインターネットは世界を変えると感じていました。一方、インターネットがない時代だからこそ、海外の人たちが話す日本のイメージはかなりあやふやでした。そのため、インターネットを通じてもっと海外の人に日本を知ってほしいなと思うようにもなりました。
■多様な人と仕事をしたいという想い
ロンドンでの大学生活を通じて、改めて自分は日本が好きなんだと知り、卒業後は日本に帰国し、コンサルファームに入社しました。起業したいという漠然とした思いはありましたが、まずはビジネスにおけるベースとなるスキルを身に付けられるのがコンサルだと考えたからです。以前は、プレゼンなど人前に出て話すことが苦手だったのですが、自分の理想とするかっこいいリーダー像に近づくために、コンサルタントになりました。
ただ、コンサルのプロジェクトマネジメントは最初と最後が決まっているので、慣れてくるとある程度上手く進められるようになる一方で、終わりのない組織づくりについてはわからないままでした。また、コンサルファームで働く人は、自分とスキルセットが近い人が多いとも感じました。RPGで例えると、魔法使いの人にしか会ってないということ。「魔法使いだけじゃなく、他の職業の人たちにも会いたいし、その人たちについてきてもらう方法を知りたい」と思い、転職を考えました。
その後、入社したのが、楽天です。ゼロから創業して世界規模の企業にしている楽天から、いろいろ学ぶことがあるのではないかと思い、入社を決めました。同社では、組織づくりやチームをどう考えていくかを、学ぶことができたと思います。
■時間の価値を高めることができる会社を
そして2013年、コンサル時代の仲間の二人を誘って、2014年に会社を創業しました。ファッションのサブスクリプションを始めた理由は、「時間」がきっかけでした。すべての人が平等にもっているけど、使い方・感じ方によって不平等になるのが時間の価値です。人生において一分一秒の価値を高めることで、ライフスタイルの質も高められるのです。
では、どんな時間の価値が高いのかというと、ワクワクしている時間です。そこで、「ワクワクが空気のように当たり前になる世界へ」というビジョンのもと、会社を作り上げていくことに決まりました。
時間の価値を高め、ライフスタイルの豊かさにつながるものとして衣食住があり、その中でも最もワクワクを身近かつ持続的に感じられるのがファッションだと考えました。特にライフステージの切り替わりによって、自分に使う時間が変わるのが女性です。中には、忙しさのせいで、ファッションに出会うことを諦めてしまう人もいます。
だからこそライフスタイルを変えないでファッションとの出会いを実現するために、どうしたらいいかを考えました。そんな中で「自分には合わないけど、他の人には合うかもしれない」のがお洋服です。シェアの概念からレンタルを用い、日本全国に平等な出会いを与えるためにオンラインのサービスにしました。また、忙しい女性は探す時間がないからこそ、パーソナルスタイリストがそれぞれの方に似合うお洋服を提供することで、新たなファッションとの出会いが広がるサービスも生み出しています。
さらに、返却期限を無くし、クリーニングも自社で行うことで、お客様が時間に縛られずに、お洋服を着て楽しむことだけに集中してもらえる設計にしました。
サービス開始時、前例となるサービスは世界を見渡してもなく、競合他社がいないからこそ全部ゼロからしくみを考えました。類似サービスができることはありましたが、ゼロから組み立てているからこそ常にパイオニアであり続けることができるのだと感じます。特に物が循環する物流基盤を、他社がゼロから組み立てることには相当な難しさが伴うと思います。最初は数百着からスタートしたのですが、信じてくれた人たちの後押しもあり、現在では300ブランド・35万点以上のお洋服を展開しています。
■人生を楽しむには仕事を楽しむこと
仕事では大変なことはたくさんありますが、常に楽しいです。仲間と一緒に本気で取り組んで、達成できた瞬間が一番好きです。法人格と書くように「会社にも人格がある」という考えから、弊社には会社の人格を定義する「9hearts」という行動指針があります。
その中の一つに「全力で楽しむ」という項目があります。社内のメンバーにもワクワクした時間を過ごしてほしいと思っています。すべての仕事にはその組織が実現したい意義があり、その意義を理解できれば、どんな仕事も楽しむことができるはずです。
また、仕事に取り組む際は、常に課題意識を持つことが大事です。その課題を解決するために、変化することや挑戦することを疎かにしてはならないと感じます。成長企業で働く上では、自身が成長していくことで仕事の幅が広がっていきます。より仕事を楽しみたいならば、自分自身が成長するしかありません。スポーツは才能に左右される要素がありますが、仕事については本気で取り組めれば誰でも結果を出すことができると考えています。だからこそ、貪欲に成長していくことが大切だと思います。
■大学生へのメッセージ
時間をどうやって使うかは、自分の姿勢で決まってきます。自分が持てるすべての時間を納得するように使うために、本気で向き合うことが大切だと思います。人生の時間は有限だからこそ、どう時間を使うのかをしっかり考えること。そして、自分の人生を大切にしてほしいです。
学生新聞オンライン取材2022年10月6日 國學院大學3年 島田大輝
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