スターティアホールディングス株式会社 代表取締役社長兼グループ最高経営責任者 本郷秀之

時代の流れとともに、サービスを進化させる

スターティアホールディングス株式会社
代表取締役社長兼グループ最高経営責任者 本郷秀之(ほんごうひでゆき)

■プロフィール

熊本県出身。29歳で有限会社テレコムネット(現・スターティアホールディングス株式会社 )を創業。
現在は指原莉乃さんのTVCMでもお馴染みのデジタルマーケティングツール「Cloud CIRCUS(クラウドサーカス)」を主軸とするデジタルマーケティング事業を積極展開。
また、中小企業向けのオフィスのITインフラ事業やDX化推進支援事業も行っている。

ITの力で日本企業の生産性を上げることを目標に掲げているスターティアホールディングス株式会社。前回、本郷秀之社長には会社を設立した経緯や経営する上でのマインドについてお話を伺ったが、今回はそんな本郷社長の大事にしているビジネスモデル構築の考え方など、より具体的な内容についてお話を伺った。

ビジネスモデル構築の考え方

ビジネスモデルの作り方については、よく質問されます。でも私自身の経験を振り返ると、「ビジネスモデルを作り上げた」というよりは、「世の中の流れに対応した結果、今のビジネスモデルに至った」という方が正しいと思います。つまり、自分自身が「このモデルがいいはずだ」と決めるのではなく、人々が求めるもの、必要としているものを提供することが重要なのだと思います。

もちろん「この会社でどのような事業を進め、どのような事業を止めるか」を判断するのは経営者です。判断を下すために必要な要素としては、外的要因と内的要因の二つがあります。内的要因は、社内の組織やサービスの強みなど、自分たちの力で変えられます。ただ、その判断は、早すぎても遅すぎてもダメです。時代は急に変わっているように見えるだけで、実は少しずつ変化していきます。その変化を見落とさないために、日頃からIT系の雑誌やメディアを定点観測しておくことが重要になると思います。

一方の外的要因は、社会の流れや制度変更など、自分たちの判断ではなかなか変えられません。でも、どんなに優れた経営者でも、外的要因を把握していないと最大限力を発揮することはできません。たとえば、インターネットの出現は、外的要因の最たるものです。既存にはなかったインターネットという未曽有のサービスが登場して、世界の流れが進み続けるなかで、今まで通りのサービスをやっていては取り残されてしまいます。だからこそ、そうした外的要因を理解した上で、自分たちのサービスメニューを少しずつ進化させる必要があります。

この二つの要因を念頭に置きながら、経営判断を行う必要があります。ただ、忘れてはいけないのは、ビジネスは一勝九敗が当たり前の世界だという点です。失敗する確率が高いとはいえ、何もやらないのもまたリスクです。致命的な失敗のリスクを押さえながら挑むというベンチャースピリットをどれだけ残して行動できるかが、企業を飛躍させるカギですね。

新規顧客の獲得方法、既存顧客のフォロー

新規顧客を可視化することは、当社の場合はお客さまがWebサイトを見ることで履歴が残るため、そんなに難しいことではりません。しかし重要なのはその後です。サイトを見てくれた人にいきなり電話をすると相手は一歩引いてしまい、離れてしまう可能性が高まります。そこで、少し時間を空けてから電話でなくチャットで対応することで、相手の違和感を和らげることができます。このように距離感を大切にして、丁寧な対応をして顧客を育てていくという考え方を私たちは大切にしています。

なお、先ほど挙げた外的要因で考えていくと、今後日本は人口も経済も縮んでいく可能性が高い。だからこそ、以前は目先のお客様だけを見ていて、ダメだったら次のお客様にアプローチするという手法が通用しましたが、今後はいかにお客様とのコミュニケーションを大切にして、商品を好きになってもらうかが大切な時代になります。インフルエンサーに発信を頼むより、一人のお客様がどれだけその商品を好きになってくれて、その良さをご自身で発信してくれるかが重要だと思っています。

また、既存の顧客へのフォローとしては、1か月でどのくらいの人がアクセスして、何曜日の何時ぐらいのアクセス量が多いかもデータで分析しているため、そのタイミングを狙って電話をしたり、チャットで対応したりしています。ヘビーユーザーとは頻繫に連絡を取っていますが、使用頻度が低いお客様にはあまり頻繁に連絡はしないようにしています。お客様のニーズにあったアプローチをする。いわば、「平等」ではなく「公平」にお客様とコミュニケーションを取るように意識しています。

日本では「お客様は神様だ」として、分け隔てなく平等に扱う考え方がありますが、それはあまりよくないと思っています。頻繁に利用するお客様には頻繁に連絡し、たまに利用するお客様にはたまにアプローチする。その人の利用度に応じて、お客様を区別する方が、お客様への負担も減るし、理に適っていると感じます。

■今後の想定される事業形態

まだまだ日本は99.8%が中小企業で、OECD(経済協力開発機構)の中でも生産性は低いです。この要因は、日本人のITリテラシーが非常に低く経営者の高齢化がひとつの問題です。また、DXが進んでいない中小企業の数が多すぎるという問題もあります。

今後は、売り上げを伸ばすために、ITの設備投資ができないと厳しい世界になると思います。しかし、なんとかして、日本企業の生産性を上げることで、社会に貢献しようというビジョンを掲げて、私たちは働いています。

■massage

若いうちに、海外に行った方が良いと思います。そして、海外に行くことで日本の現状が外から良く分かるはず。例えば、円安が私たちの生活にどのような影響を与えるか、みなさんは理解できていますか? 円安は最終的にはダイレクトに私たちの生活に影響してきます。だからこそ今世界で起きている事象にアンテナを張り、しっかりと認識することが大切です。

日本の100年企業は1万社以上あります。しかし、アメリカは残っている企業がほとんどありません。一見悪い結果のように見えますが、新陳代謝が良く、アメリカ経済は伸びています。

日本は生産性が悪くて未来のない会社や倒産予備軍の会社がたくさんあります。結果、既存のビジネスモデル、収益モデルが通用する年数も年々短くなってきています。現在、優秀な大学生に人気の企業が、本当に30年、40年後にも日本に残っているのかを改めて考えてほしいです。

みなさんの親御さんの世代のように、大手企業に入って同じ会社にい続けて、定年退職するまで勤めきる……といったことはもうできないでしょう。今後の社会で、頼れるのは自分だけです。会社は何もしてくれません。もし大手企業に行くならば、いつでも方向転換できるような企業文化を持った会社を目指しましょう。そして、ベンチャーで働くことや、あるいは自ら起業するという選択肢も、ぜひ考えてみてほしいです。

学生新聞オンライン2022年8月22日取材 日本大学 3年 石田耕司

日本大学3年 石田耕司 / 東洋大学4年 伊佐茜音 /東京理科大学3年 伊藤陽萌 / 上智大学4年 八木彩花 /
立教大学4年 須藤覚斗 / 明治大学4年 酒井躍

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