株式会社カスミ 代表取締役社長 山本慎一郎
時代の変化と共にサービスの付加価値も変化する
株式会社カスミ 代表取締役社長 山本慎一郎(やまもとしんいちろう)
■プロフィール
1959年7月24日生まれ。石川県出身。2013年3月カスミ入社、14年5月常務取締役上席執行役員ロジスティック本部マネジャー、17年3月専務取締役上席執行役員、20年3月代表取締役社長に就任(現任)。22年3月ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス代表取締役副社長就任(現任)。
関東地方でスーパーマーケットを展開し、スマートフォン決済アプリや無人レジなど常に新しいことにチャレンジし続ける株式会社カスミ。時代の流れに合わせてスーパーマーケットの在り方は今後どう変わっていくのか。山本社長にお話しを伺った。
私は大学では法律を学んでいましたが、自分がやりたいことと学んでいる学問にギャップが大きく、そこまで勉学に熱中できなかったのが正直なところです。その代わりに学生時代に熱中していたのが、リズム&ブルースやロックのバンドです。音楽の世界は正解があるわけではないので、意見の食い違いや葛藤もありましたが、今となってはいい思い出です。
■日本の流通業界のこれからの「可能性」と「自由さ」に開眼
私が大学を卒業する時代は「流通業界=忙しい」というイメージが強く、就職する人は多くありませんでした。実は、このスーパーマーケットという流通産業は元々アメリカで生まれたビジネスです。そのため、アメリカの方が日本に比べて40年ほど長い歴史を持っており、海外ではスーパーマーケット業界は働きたいランキングに入るほどステータスが高い業界です。
そうした状況を踏まえ、日本でも、スーパーマーケットの生産性を高めれば、より良い産業にできるのではないかと感じ、その可能性に惹かれてこの業界に入ることを決めました。
日本はサービスへの対価があまり認められていないのが現状ですが、時代と共にクラウドサービスや音楽、映像など少しずつ無形のサービスにお金を使う意識が出始めていると感じています。同じようにこの業界でもサービスの付加価値を形にすることが、今後の課題だと思っています。
■時代とお客さまの層に合わせた付加価値を高める
当社の差別化ポイントは、新しいことをどんどん取り込んで自分達のビジネスを変え続けていく点にあります。例えば、お会計の際にレジに並ぶことなくご自身のスマートフォンで商品登録および決済を行うことができるアプリを利用した決済サービス『Scan&Go ignica』を導入しています。これは従来のリアル店舗の課題だった「お客さまの事前情報のなさ」を解決するため、アプリを使用して不足情報を補い、お客さまの満足のいくお買い物をサポートします。『Scan&Go ignica』は開始してから4年ほど経ちますが、毎月サービスをブラッシュアップし続けています。
その他にも取り組んでいることは多々あります。その一つが、ネットで買い物ができない方や一人暮らしで困っている方などに向けて、軽車両に商品を積んで週に何回かその近所を巡回する「移動販売」サービスです。各自治体と連携して現在55台でそのサービスを行っています。高齢者の見守りサービスも兼ねているため、最近販売場所で見かけない方がいれば、家に見に行くなど工夫もしています。最終的には100~200台へと増やしていきたいですね。
あと、他社に先駆けて拡大したのが、無人レジの導入です。それは単なる人員削減を目指したものではありません。レジに人を配置するのではなく、例えばワインの試飲(有料)など、お客さまへのサービスに人を配置し、お客さまに良い体験の場を提供することが狙いです。レジではお客さまを待っているのではなく、お客さまの傍らにアテンダントが寄り添って、操作に困ったお客さまをサポートします。このように、新たなサービスを取り入れる中で、お客さまのニーズや立場を考えて付加価値の高いサービスを追加しています。
また、最近はBLΛNDEという新しいスーパーマーケットもできました。BLΛNDEは他のスーパーマーケットと異なり、専門性を大事にています。ゴールド会員専用のラウンジをはじめ、そのお店ならではの工夫も導入しています。
■ポジティブさが新しいものを生み出す
一緒に働く人は、新しいことにチャレンジするポジティブな人がいいですね。過去に捉われずに、新たなチャレンジに熱意を持てることが大切です。また熱意だけでなく、それを行動に結びつけるためには学ぶことが重要です。最近はブランディングも大事にしているので、専門性の高い人も随時募集中です。現在でも物流からデジタルと様々な分野の人達が関わっています。
■大学生へのメッセージ
学生時代のみならず、社会に出てからも学び続けることは必要です。生きる上で学び続けないと社会から置いていかれてしまいます。社会に出てからの学びは、学生時代と違って、学んだことがすぐ試せる場があります。勉強に終わりはないので、ぜひ何歳になっても学び続けてほしいです。
学生新聞オンライン2023年2月27日取材 日本大学3年 和田真帆
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