賀来賢人 人生一度きり、挑戦し続けた 先に新たな世界が広がる 

俳優・プロデューサー 賀来賢人(かくけんと)

■プロフィール

1989年生まれ、東京都出身。2007年に俳優としてデビュー。当初は映画やドラマで主演をつとめるもなかなかブレイクを果たせず、舞台などで腕を磨く日々が続く。
2018年、主演ドラマ『今日から俺は!!』が大ヒット。以後、テレビや映画で存在感のある演技を見せる。
2023年4月28日に劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』が公開。2024年には原案・主演・プロデューサーをつとめる『忍びの家 House of Ninjas』(Netflix)が公開予定。

高校生でスカウトされて芸能の世界へ。コメディなど面白い役を強みとしながらもシリアスな役まで難なくこなしてしまう幅広い顔を持つ賀来賢人さん。
そんな賀来さんに仕事に対する取り組み方や新しく挑戦しているプロデューサー業についてお話を伺った。

僕は小中高と男子一貫校で、バスケットボール一色の学生生活を送っていました。スカウトされたのは高校1年のときです。その当時は部活優先にしており、お芝居の練習にはあまり参加していませんでした。しかし、あるときふと思い立って行ってみたところ、緊張もありましたが、それ以上に楽しかったことを覚えています。
僕は昔から誰かのモノマネをするのが得意だったこともあり、演技はその延長線上だと感じ、徐々にオーディションも受けるようになりました。そして『Little DJ 〜小さな恋の物語』でデビューしたのですが、この作品では監督に言われたとおりに演じることができず、悔しい想いをしました。今までの自分はろくに演技の勉強もしておらず、もっと認められるようになりたいという気持ちが強くなり、俳優としての仕事の向き合い方が変わりました。
その後、大学に進学したのですが、2年生のときにとてもいい役をいただいたのをきっかけに、芸能界で生きていくことを決断しました。このときに「本気でこの仕事をやっていきたいから学校を辞めたい。30歳までに芽が出なかったら辞めるのでそれまでは頑張らせてほしい」、と自分の気持ちを親に伝え、大学を辞める決断をしたのです。親は心配したはずです。しかし、言ったからには頑張るしかないと気持ちを引き締めました。今思うとここが自分の人生の分岐点になったと思っています。大学生という肩書きがなくなることに不安はありましたが、根拠のない自信と勢いで芸能の世界を選んだのです。

■個性を生み出すきっかけになった舞台

個性がないと思っていた僕を変えてくれたのは、「何か武器を一つ作りなさい」とアドバイスくださった劇作家の福田雄一さんです。福田さんの舞台で爆笑を生み出す喜劇役者を見ながら僕は悩みつつ模索する日々を送っていました。
そんなある日、僕の尊敬する俳優の池田成志さんから笑いについてアドバイスをいただいたのです。そして池田さんのアドバイスどおりにやったところ観客から笑いが沸き起こったのです。そのときに感じたのは、喜劇役者はなんとなく面白いことをして笑わせているのではないということ、笑わせるのはテクニックなのだということです。そこから僕は笑わせることにかっこよさを感じるようになりました。同世代の俳優仲間がどんどん売れていくのを見ていて正直焦りもありましたが、僕は舞台でやりたいことをやっているからいいのだと自分に言い聞かせて舞台で笑わせる研究をし続けました。
それとともに、「絶対に俺は売れる、仕事が増える」という気持ちを捨てずに頑張れたから今があるのだと思います。試される舞台でコツコツと努力し、笑わせるテクニックを身に付けられて今は本当に良かったと感じています。

■プロデューサーとしての仕事ー『忍びの家』

自分で作品を作ろうと思ったのはコロナの影響を受けたからです。仕事がなくなることに不安を感じていろいろ考えた結果、自分で仕事を作り出すということを思いつきました。そんなときに海外映画のエンドロールで俳優さんがプロデューサーをやっているのを見て、「これだ!」と感じたのです。そこから2年かけて作品の土台を作り上げ、現在は撮影まで進んでいます。
『忍びの家 House of Ninjas』という作品で忍者をコンセプトにした理由は、夢を語れる作品、ヒーローものでだれでも楽しめてロマンを感じる作品を作りたいと思ったからです。ある日のこと、子どもと忍者村に行ったときに、子どもが忍者を見て目を輝かせて喜んでいるのです。また、外国人も一様に盛り上がっている姿を見るにつけ、忍者は大人から子どもまで、世界中の人が楽しめるエンターテイメントだと思ったのです。「家族みんなが忍者だったら?」「日本に残された最後の忍者だったら?」と話が膨らみ、忍者が日本を救うというストーリーができあがったのです。

■「今」という時間を後悔なくやり切る

学生は子どもと大人の境目でとても重要な時期だと思っています。人生について考えたり、悩んで落ち込んだりします。そんな時期を一生懸命もがいて苦しんで、いろいろなことを経験して後悔なくやり切ってほしいと思います。
僕は絶対運命はあると思っていて、どんなことにも必ず理由があるはずです。なぜなら、今まで生きてきて自分に起こった出来事の中で、何一つ無駄なことはなかったと感じているからです。たとえ失敗しても、あのとき失敗してよかったと思えるときがきっときます。自分を信じることで道は拓けていくものです。

中高生新聞2023年4月1日発刊号 日本大学3年 和田真帆

■INFORMATION

Netflixシリーズ
「忍びの家 House of Ninjas」
企画:賀来賢人
出演:賀来賢人、江口洋介、木村多江、高良健吾、蒔田彩珠、宮本信子
配信:2024年、Netflixにて世界独占配信開始

日本大学3年 和田真帆/東海大学4年 大塚美咲/中央学院大学4年 田根颯人

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