日本ヒューレット・パッカード合同会社 執行役員 プリセールスエンジニアリング 統括本部長 及川 信一郎 

データファーストで変わりゆくITインフラを考えていく

日本ヒューレット・パッカード合同会社 執行役員 プリセールスエンジニアリング 統括本部長 及川 信一郎 (おいかわしんいちろう)

■プロフィール文

主にサーバー技術を中心に、通信業界を始めとした幅広い業種のお客さまを担当。2017年にHPEがセキュリティにフォーカスした、新世代のサーバー製品をリリースした事を端緒に、ハードウェアレイヤーの視点から見たゼロトラストセキュリティについて、開発・運用の現場の方から経営層まで、幅広くご紹介する活動を実施。現在はプリセールスの日本チームをリード。

私たちに身近なインターネットサービスから、私たちの知らない隠れたところまで、幅広いITインフラを支えている日本ヒューレット・パッカード合同会社(HPE)。入社してから26年となり、様々な業務を経験されてきた及川執行役員に、会社の魅力や一緒に働きたいと思う学生像などについて伺った。

私は大学生の時に国際政治と比較文化を学んでいたのですが、その中でも一番関心を惹かれたのがメディアでした。中でも、これから世界を変えていくメタ・メディア、その基盤としてのITに関わる仕事をしたいと思ったのです。幾つかのIT企業を受ける中で、ヒューレット・パッカードはAppleの創業者が働いていた会社であり、元祖シリコンバレーのベンチャーとして評価が非常に高く、「この会社で働けるといいな」と思っていました。当時、外資系ITはあまり文系の学生を採っておらず、内定がとれた時は驚きました。また、企業の選考プロセスや、内定のコミットが書類ではなく人事担当者との握手だったことにも感銘を受け、「他の会社とは違うすごい会社だな」と感じ、1997年、入社を決めました。

■勝負ができないと分かったら土俵を変える

入社して配属後も暫くは、研修期間のようなもので特に決まった仕事はなく、製品の梱包をよくしていていました。ところが、誰よりも多くの製品に手を触れていた事で、実際のパーツなどにとても詳しくなりました。すごい先輩がたくさんいる中で、既存の商用UNIXの世界では何十年やっても追いつけないと思い、当時、社内ではごく限られた人しかやっていなかったWindowsやLinuxなどのPCサーバーに自分の将来をベットして、x86(エックスはちろく)サーバー事業の立ち上げに関わりました。それから20年以上がたって、今振り返ると、PCサーバーは世界を席巻しています。このように「自分はこれでは勝負ができない」と思ったなら土俵を変えることも大切だと感じます。
その後、ナレッジマネジメントという「知識をどうデジタル化して活用するか」というプロジェクトに携わった後、2000年代初期にベンチャーブームに突入したことにより、ベンチャー支援の担当になりました。外から見るのとは違う、起業で成功することの難しさが、いくらかは分かったように思います。また、リスクをとって新しい領域を広げることの面白さも知った1年でした。その後、当時日本のブロードバンドや携帯電話市場が急成長していた背景からテレコム(電話会社)系のお客様担当になりました。ここで約10年間担当していましたが、お客様の要求を元にいろいろなシステムを入れていく面白さに触れたように思います。当時は、フルビジョンハイビジョンの動画配信を、光回線を通じて、どのようにご家庭に届けるか、というトライアルにエンジニアとして参加していました。家庭に動画配信と聞くと、今ではごく当たり前のものですが、当時は一般公衆回線をつかった配信は米国でも前例が無く非常に困難でした。多くの技術者が失敗を積み重ねながら技術を成熟させ、テクノロジーを標準化し、いまでは当たり前のようにご家庭で楽しめるようになっています。この経験を通して、コストやテクノロジー上の問題は、それが本当に必要なサービスであれば、時間と共にやがて解決することに気づきました。これは、未来を考えるときにとても大事な前提だと思います。その後、元々のPCサーバーの部署に移り、部長や本部長を経て執行役員に就任し、現在に至ります。

幅広いITインフラを提供する

HPEはITインフラを担う、ネットワーク、ストレージ、サーバーとそれに関連するサービスを扱っています。ネットショッピングやコンビニなどの店舗で利用するオンラインサービス、クレジットカードの決済、設計・シミュレーション、医療やAI(人工知能)などに利用されています。例えば、近年はコロナ禍もあり在宅勤務が当たり前になり、ネットワーク基盤の重要性が注目されていると思います。今では、データが生み出される場所はスマホや、監視カメラ、各種IoT機器など、爆発的に増えており、データファーストのモダナイゼーションと言って、「生み出されたデータをどこに置くか」「そのデータをどう利活用するか」ということからインフラを考えることを促進することに注力しています。

■成功体験におぼれず常に変化をキャッチ

私にとっての仕事のやりがいは、1つの会社にいても、およそ5年ごとにやることが全く変わることです。そのたびに、スタートラインに立って皆と勉強し、競争することになるので、大変でもあり楽しくもありますね。仕事内容は変わりますが、コンピューターの動く原理などの本質は変わらないので、やはり基本は大事だと思います。併せて、成功体験におぼれずに取り組むことが大事だと思っています。どうすればみんなで和気あいあい楽しく働けるか考えて、常に変化をキャッチすることがモチベーションとなっています。

■興味と学習を結びつける力

一緒に働きたいと思うのは、「この会社で長く働きたい」と言ってくれる人です。外資系と聞くと、キャリアを積んでどんどん場所を変えるというイメージがあるかもしれませんが、やはり会社のフィロソフィーに共感して、長期的に自分に投資できる人がいいかなと思います。また、ちゃんと勉強してきたことも大事な要素です。学校での勉強と業務は違うものの、社会人になっても継続した学習は必須ですし、ものごとをやり続ける力や、興味と学習を結びつける力などは、仕事でも同じように活かせるものだと思います。

■大学生へのメッセージ

「面接から入社までの期間に何をしたらいいですか」と学生からよく聞かれるのですが、学生でいられるのはその期間だけなので、「学生にしかできないことをやってください」と答えています。先に目を向けるのもいいのですが、今という時間を有効に使って、自分がやりたいことに繋がるものを見つけてもらいたいなと思います。社会人になると「やっぱり勉強って楽しいな」「もっと勉強しておけばよかった」と考える人も多いようです。それと同時に、年齢が上がると好奇心も下がっていくと思うので、学生であるうちに、自分の興味を深掘りしていってもらえるといいかなと思います。

学生新聞オンライン2023年8月9日取材 上智大学短期大学部 2年 大野詩織

上智大学2年    白坂日葵/ 上智大学短期大学部 2年 大野詩織 / 國學院大學1年 寺西詩音 / 専修大学4年    竹村結 / 立教大学4年    須藤覚斗 / 國學院大學3年 島田大輝 / 中央大学2年    前田蓮峰

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