株式会社 資さん 代表取締役社長 佐藤崇史
大切なものを守りながら絶えず進化させていく
株式会社 資さん 代表取締役社長 佐藤崇史(さとう たかふみ)
■プロフィール
広島県出身。1997年慶應義塾大学環境情報学部卒業。ソニー株式会社、ボストン・コンサルティング・グループを経て、2006年株式会社ファーストリテイリングに入社。経営変革/人事/店舗運営/社長室等の責任者を歴任し、変革を推し進めた。2018年3月北九州のソウルフード「資さんうどん」を運営する株式会社資さんの代表取締役社長に就任。同社の第二創業をけん引する。
「資さんうどん」は1976年に北九州で誕生し、絶大な人気を誇るうどんチェーン店。現在は九州・山口・岡山で64店舗を展開しており、11月には関西1号店を大阪市内に出店する予定だ。経営理念である「幸せを一杯に。」という使命のもと、常に美味しさへの挑戦と進化を続けている。「北九州のソウルフード」とも呼ばれるまでに、多くの人に愛されている「資さんうどん」。運営会社である「株式会社資さん」の佐藤崇史社長に、これまでの経歴や「資さんうどん」の魅力についてお話を伺った。
幼少時代は広島で過ごし、中学は慶應義塾普通部に入学。高校はエスカレーターで慶應義塾高校に、大学は当時新設されたばかりの慶應義塾大学環境情報学部に進学しました。大学では、2年でケガをして早めの引退をするまでは高校からはじめたアメフトに、後半はゼミの活動に没頭することになるのですが、その中でも様々なアルバイトも経験しました。人材会社で営業の仕事をしたり、引越し、某放送局等、とにかくいろんなことに挑戦していましたね(笑)。様々な経験は、その後の仕事にも活きていると感じます。
当時の私は、アメフトの経験を通じて、チームで戦略を立てることや組織作りに興味を持つようになり、組織・人事論がテーマのゼミに所属していました。その中のプロジェクトでソニーの方と関わる機会があったのですが、お話を聞く中で、ソニーの方が目を輝かせながら言われた「ソニーでの仕事を通じて世界を変えていきたい」という熱い言葉に魅力を感じたことがきっかけで、大学卒業後はソニーに就職しました。ネットが普及し始めて変革する時代の中で、様々なことに挑戦できたことはとても楽しく、刺激的な毎日だったと記憶しています。しかし、働いている中で、自分は期待に十分に応えられているのかという葛藤と共に、仕事をしながら勉強できる環境で、さらに成長したいという思いが生まれてくるようになりました。ソニーで4年間働いた後、もっと世の中に貢献できる人材になりたいと決意し、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に転職しました。世界を舞台にトップ企業の優秀なお客さまや仲間たちと過ごした日々は、とてもやりがいを感じるものであり、自分の成長にも繋がった6年間だったと思います。BCGで働く中で、日本がかつてのように世界の経済をけん引するような勢いを取り戻すことが出来ないかと考えるようになりました。そして、これまで経験したことや学んだことを活かし、日本発の企業にコミットして、日本の成長に貢献したいという思いを持つようになりました。その気持ちを、ファーストリテイリングの柳井さんに直談判しに行き、熱意が認められてファーストリテイリングで働き始めます。以来、10年間、様々な仕事に取り組ませて貰いました。
ユニクロ時代に九州へ出張する機会があり、同僚から「美味しいうどんがある」と教えてもらって食べに行ったのが「資さんうどん」でした。これが「資さんうどん」との初めての出会いでしたね。「こんなに美味しいうどんがあるのか!」と感動したことを今でも覚えています。うどんだけではなく、他のメニューもとても美味しかったです。お店の中は活気と暖かさであふれており、今まで味わったことのない美味しさとその雰囲気がとても魅力的でしたね。その後、「資さんうどん」の経営者になってくれないかというお話を頂いたときには、とても嬉しかったです。このうどんの魅力は日本の財産であり、その宝をもっとたくさんの人に知っていただきたいという思いがあったからです。
■愛される「資さんうどん」をこれからも守り続ける
「資さんうどん」は北九州のソウルフードであり、多くのお客さまに本当に深く愛されています。資さんうどんを食べに行くことを「スケる」という造語も生まれているほどです(笑)。従業員さんも、お客さまも、深い愛情を持ってくれています。「資さんうどん」に関わってくれる方たちを笑顔にしたいという思いが、今、仕事を頑張れる原動力になっていますね。
より多くのお客さまに、より深く「資さんうどん」を好きになってもらうためには、お客さまの声を知ることが必要です。日々、お店や本社に寄せられるお客さまの声はもとより、SNS等で発信されているご意見ももちろんですが、実際に、新しくお店がオープンした際には店頭に立ち、直接感想を聞くことも心掛けています。また、今年の7月には、新たな取り組みとして、お客さまと直接コミュニケーションが出来る場を持とうと初の「ファンミーティング」を実施しました。お客さまから伺った生のお声を、商品開発や店舗運営に活かしていければと思っています。また、お客さまだけでなく、従業員さんの声を聞くことも大切にしています。働いている理由や、「資さんうどん」に感じる魅力、気になっていること等を定期的に聞いて、取り入れられることがないかを常に意識しています。みんなの考えていることを知ることが、愛される理由を突き詰めていけるコツかもしれません。
創業者がお客さまに喜んでもらえるようにと、味やメニューにこだわり続け、お客さまの期待に応えてきた結果として、今の味や雰囲気が作られています。今ではメニューも100種類以上に増えました。長い間愛されているうどんには沢山のこだわりが込められています。出汁は鯖節や昆布、椎茸等の素材の旨味を強く感じることができる味わいで、表面はなめらかで、中はモチモチとした食感の麺も、他にはない特徴だと思います。うどんだけではなくカツとじ丼やぼた餅も、資さんうどんの名物として知られています。
これから、九州以外の地域にも店舗展開を拡げていこうという動きの中、商品のへのこだわりや味がぶれない様に、そして創業からの思いが薄れていかないように、我々が大切にしていることが経営理念です。全員が同じ軸を持ち、経営理念の体現に取り組んでいくことで、出店エリアが広がっても、創業からの歴史や成り立ちを知らない従業員さんが増えたとしても、「資さんうどん」であり続けられると思いますし、これまで培った伝統をさらに進化させ続けることができると思います。大切なことは残しつつ、変わりゆく時代やニーズに応えられるように、進化し続けていきたいと思っています。
今後の目標は、「北九州の資さんうどん」から「九州の資さんうどん」、ひいては「日本の資さんうどん」にしていくことです。そのためにも少しずつですが、着実にエリアを拡大していきます。私たちの自慢の味を、ひとりでも多くのお客さまにお届けし、多くのお客さまに愛されるうどんチェーンを目指します。
■学生へのメッセージ
今しか出来ないことに沢山チャレンジしてください。無理して背伸びする必要はありません。今の環境の中で自分が出来ることに一生懸命に取り組むことは、必ず将来に繋がるし、一生懸命にやったことは誰かが見ています。毎日を全力で過ごすことで結果はついてきます。いざチャンスが来たときにそれをつかめる人になってください。そのチャンスをつかむことが、自分の大きな成長に繋がります。
学生新聞オンライン2023年8月17日取材 立教大学3年 緒方成菜
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