東北電力株式会社 常務執行役員最高デジタル責任者(CDO) 小山光雄

DXを推進し、快適・安心・安全なスマート社会の実現を目指す

東北電力株式会社 常務執行役員最高デジタル責任者(CDO) 小山光雄(おやまみつお)

■プロフィール
東北電力入社後、経理部門、情報通信系関係会社への出向を経て、2020年以降、スマート社会実現に向けた事業開発に取り組む。また、2023年よりグループのDXを推進している。

新たな時代を見据え、東北発のスマート社会の実現を目指して成長する東北電力。エネルギーを安定供給しつつ、生活の活性化を図ることが大きな仕事だという。DX戦略を基盤とした新たなビジネスの創出に挑戦し続ける小山常務執行役員に、同社の成長戦略についてお話を伺った。

大学時代は会計学、原価計算を専攻していました。当時は就職先として金融機関が人気だったのですが、私は会計学をやっていた関係で、モノを作って売るというプロセスの現場を見たいという強い想いがありました。メーカー面接を受けていく中で、電力会社の会計に興味が湧いて入社を決めました。

■会計学の知識を職場で活かす

入社後、約10年の間、経理の仕事に携わりました。予算管理やコスト管理をしていたのですが、それにより会社全体の仕事とお金の流れを把握することができました。お金が入るところから出るところまでのプロセスが見えるので、いかに電気料金を上げないでお金を確保するか、投資効率や原価管理、コスト削減など会社経営そのものを俯瞰してみることができたと思います。
電力会社と一般の人々との接点は、引っ越しのときや料金改定のときにあるくらいのもので、日常生活の中ではほとんど意識されません。しかし、電気はインフラです。何もトラブルがないことが当たり前なのですが、ひとたび災害などで電気が消えたりすると、多くの方に被害が及ぶことになります。私たちは人々の生活や産業を支える電気を安定して届けるために、目立たないけれど重要な仕事を担っているという自負とともに、誇りと強いやりがいを感じています。災害によるトラブルで電気が消え、その後、電気が点いたときに「ありがとう」と言われると嬉しいですね。

■失敗を糧に新規事業に挑戦

初めて新規事業に取り組んだのは、情報通信系関係会社へ出向した2000年前後です。ちょうど携帯やインターネットが爆発的に普及し始めたころです。その中で新たなビジネスチャンスを掴むべく多くの新規事業に取り組みましたが、ことごとくうまくいきませんでした。
コンセプトが甘かったのではないか、お客様ときちんと話をしていなかったのではないか、自分たちの独りよがりの企画だったのではないかなど、反省点はたくさんあります。
その後、2011年の東日本大震災により、大規模な地震被害が起きました。会社のダメージも相当大きかったのですが、「震災からの復興を見据え、高齢化・人口減社会の中で、快適・安心・安全なスマート社会を実現する事業」を行うという目標を立て、再び新規事業に取り組むことになりました。
最初の挑戦のときは、次々と新たな事業をつくることに熱心だったのですが、今回は前回の反省点も踏まえながら、お客さまのニーズをいかに掴むか、そのためには何をすべきか、を徹底して考えました。
たとえば、住宅に関連するものとして、環境および電気料金への関心があるお客様には住宅用太陽光発電設備や蓄電池のご提案、水回りなど生活への心配事をお持ちのお客様には水・電気・鍵などの駆け付けサービスをご提案します。また、エネルギー利用においては、地域の森林保全とその木材を利用したバイオマス発電を行うことで、地域レベルで環境保護と持続可能なエネルギー利用を推進する事業にも着手しています。

■DXの活用と未来への展望

昨今、DXは業務効率化などに大きく貢献すると言われており、当社でもDXに積極的に取り組んでいます。たとえば、当社グループは多くの電力事業設備を保有しているのですが、いかに効率的に保守・運用をすべきか、また、地域の多くのお客様と接点があるため、いかに丁寧にかつ正確なお客様対応につなげるかが課題となっています。そしてこの課題解決のために、良いデータをタイムリーに収集し、分析し、改善を繰り返し行うことが重要となります。
また、新規事業においてもデータの収集と活用が事業の成功に向けて重要なことは言うまでもありません。もはやDXなしでは事業開発も難しいと言えます。これらは比較的若手の社員を中心に取り組んでおり、さらに、グループだけではなくベンチャー企業や地域の企業と連携・協力を積極的に進めています。これまでにないオープンな環境の中で、新たな価値創出への挑戦を行っているところです。

■message

学生の皆さんに伝えたいのは、「挑戦することを恐れない」ことです。当社でも特に若手社員には失敗を恐れずに挑戦する姿勢を持ってほしいと伝えています。失敗から学ぶことはとても多いです。失敗を糧にすることで本人の大きな成長が望め、ひいてはグループの成長につながると信じています。
また、失敗したらすぐに撤退するのも大切なことです。失敗・撤退は苦痛を伴いますが、避けては通れません。そしてそこから学ぶことが重要です。その中でいかに挑戦を続けるか。私の経験からすると、楽しいことややりがいのあることを見つけて、失敗を恐れないことだと思います。

学生新聞2024年10月1日発刊号 慶應義塾大学3年 塚紗里依

中央大学3年 前田蓮峰/慶應義塾大学3年 塚紗里依/慶應義塾大学3年 山本彩央里

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