[将棋]第37期竜王就位式 藤井聡太竜王 俳優 坂口健太郎さんが祝辞
昨年10~11月に行われた将棋の最高位タイトル戦、第37期竜王戦七番勝負は、藤井聡太竜王が挑戦者の佐々木勇気八段を4勝2敗で下し、竜王位を4連覇、通算タイトル獲得数を26期とした。そして第37期の藤井竜王の戴冠を祝う「竜王就位式」が1月29日(水)、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルで開かれた。式では4400万円の優勝賞金や竜王杯、記念の羽織の贈呈が行われた。来賓として映画『盤上の向日葵』で天才棋士・上条桂介役を演じる俳優の坂口健太郎さんも登壇した。

■藤井聡太竜王

今期の竜王戦で4連覇を達成できたことを大変うれしく思います。今シリーズは佐々木勇気八段の事前研究が非常に手強く、第1局から未知の作戦を多く用意されました。その中には自分が想定していなかった形もあり、毎局盤上で新手を考える状況でした。自分の強みが出せた箇所と、逆に弱さが露呈した箇所がはっきり分かれ、勉強になりました。一方で、終盤では意表を突かれても粘り強く受けに回る場面が多く、自分の中で少し新しい一手を打開できた感覚もあります。防衛がかかった重圧の中で自分なりに冷静に指せた点は、今後に生かしていきたいと思います。
来期は竜王5連覇が懸かり、達成すれば渡辺明九段、羽生善治九段に次ぐ3人目の「永世竜王」の資格を得ることになりますが、決して楽な道のりではないと感じています。引き続き一局一局を丁寧に指し、また新たな課題を克服することで、より高いレベルを目指したいです。今後とも将棋界を盛り上げられるよう、より一層精進してまいります。
■来賓祝辞 俳優 坂口健太郎
藤井聡太竜王、このたびは4連覇おめでとうございます。私は映画『盤上の向日葵』で天才棋士役を演じるにあたり、藤井竜王をはじめ現役棋士の皆様の対局や所作を拝見し、その厳粛さと熱気に圧倒されました。実際に指してみると、将棋は想像以上に奥が深く、盤上の一手一手に込める気迫の大きさを感じます。
今回の竜王戦でも、まさしく集中力と探究心がぶつかり合う壮大な“物語”を見せていただき、ファンの1人として大いに胸を熱くいたしました。映画を通じて、さらに多くの方に将棋の魅力に触れていただければと思います。今後の将棋界の発展、そして棋士の方々のさらなるご活躍を楽しみにしております。
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タイトル:映画『盤上の向日葵』
公開:10月31日(金)全国公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松竹
コピーライト:©2025映画「盤上の向日葵」製作委員会
監督・脚本:熊澤尚人
原作:柚月裕子「盤上の向日葵」(中央公論新社)
出演:坂口健太郎 渡辺謙
■関係者の挨拶
・公共社団法人日本将棋連盟 会長 羽生善治

藤井聡太竜王による4連覇、本当におめでとうございます。今期の七番勝負は、佐々木勇気八段の挑戦が注目されておりました。佐々木八段は藤井竜王が29連勝を達成した直後に初黒星をつけた因縁ある相手で、両者が最高の舞台で顔を合わせるのは非常に意義深いものでした。現代最先端の将棋が連日繰り広げられ、特に第6局のスピード感あふれる進行には驚かされました。そんな中でも藤井竜王が終始盤面をリードしての4連覇達成は、データから見ても驚異的な強さといえるでしょう。各地の対局会場で地元の皆様のご協力を得て円滑に進行できたことは、棋士一同大変ありがたく思っております。来期は永世竜王獲得を懸け、さらに注目度の高いシリーズになるでしょう。将棋ファンの皆様とともに、今後も竜王戦を盛り上げていければと思います。
・読売新聞東京本社 代表取締役社長 村岡彰敏
このたびの第37期竜王戦に際し、多くの皆様にお集まりいただき、誠にありがとうございます。将棋界最高峰のタイトルを懸けた今シリーズは、挑戦者・佐々木勇気八段との七番勝負を見事に制した藤井聡太竜王が4連覇を達成されました。タイトル戦では「挑戦」よりも「防衛」の方が難しいと言われますが、最後まで白熱した勝負の末、4勝2敗で勝ち切られたことはさすがの一言に尽きます。佐々木八段は、藤井竜王のデビュー30連勝を阻んだ強敵として知られ、事前から研究を練りに練っての初タイトル挑戦でしたが、最高峰にふさわしい対局を見せてくださいました。また、藤井竜王はすでに八大タイトルのうち七冠を防衛し、今期も竜王を守り抜かれました。来期、この竜王戦を制すれば永世竜王の資格を獲得され、渡辺明九段、羽生善治九段に次ぐ史上3人目の称号となります。今後のさらなるご活躍を大いに期待いたします。
・野村ホールディングス株式会社 副会長 寺口智之
この度は、藤井聡太竜王をはじめ各組優勝者の皆様、本当におめでとうございます。今回の七番勝負は、藤井竜王と佐々木八段が互いに星を取り合う、熱戦づくしのシリーズでした。両対局者の研究と盤上でのひらめきが掛け合わさって、将棋の新たな魅力や奥深さが存分に示されたのではないでしょうか。弊社・野村グループも創立100周年を迎え、日本将棋連盟様の歩まれた歴史と未来へ向けての挑戦に共感し、特別協賛という形で竜王戦を応援できることを大変誇りに思っております。また、ファンの皆様から寄せられた熱い応援メッセージは、読売新聞朝刊のお祝い広告や会場内のメッセージボードにも掲出させていただきました。今後も棋士の皆様、そして将棋界全体がさらなる高みを目指される姿を、私たちも共に応援してまいります。
・渋谷区副区長 松澤香
第1局の開幕が渋谷で行われたことは、地元として大変意義深く感じております。対局会場となった渋谷の地から、新たな歴史に残る戦いが生まれたことは、私共にとっても大きな喜びです。藤井聡太竜王と佐々木勇気八段の激戦は連日大きな話題を呼び、改めて将棋の普及や発展に寄与できたのではないかと感じます。将棋会館が渋谷区にあることを活かし、昨年実施された「将棋の日 in 渋谷」など、今後も区としてさまざまなイベントや取り組みを実施していきたいと思います。来期の竜王戦でも藤井竜王が永世竜王の資格を懸けて挑まれる熱戦が期待されますし、佐々木八段をはじめ全ての棋士の皆様がさらなる飛躍を遂げられるよう、渋谷区としても後押ししてまいります。
■各組優勝者のコメント
・1組優勝:山崎隆之 八段
トップクラスが集う1組で優勝できたのは、まさに夢のような出来事でした。以前、竜王就位式で先輩方がメダルを受け取っている場面を見て、いつか自分もあの舞台に立ちたいと思っていたのですが、今回それが実現して本当に感慨深いです。これからも挑戦を続けながら、またもう一度夢を見られるように頑張りたいです。
・2組優勝:佐々木勇気 八段
挑戦者として臨んだ竜王戦七番勝負は、藤井竜王の強さを改めて実感するシリーズとなりました。ランキング戦から決勝トーナメント、そしてタイトル挑戦まで駆け上がった1年間は自分の将棋を「磨き」直す貴重な機会でもあり、今後に向けて大きな糧になったと思います。さらなる高みを目指し、磨き続ける姿勢を忘れずに頑張りたいです。
・3組優勝:池永天志 六段
竜王戦は私にとって相性の良い棋戦で、連続昇級で着実にステップアップを重ねることができました。実は2組に上がれば昇段という規定があるのですが、あまり意識しすぎず無心で戦ったのがよかったのかもしれません。今期の優勝を糧にして、次は2組でさらに上位を目指し、強豪に挑む気持ちで邁進してまいります。
・4組優勝:高野智史 六段
4年ぶり2回目のクラス優勝で、決勝トーナメントを戦った時期は本当に充実していました。旧関西将棋会館で指した対局もあり、今振り返るととても思い出深い内容だったと感じます。3組は人数もぐっと少なく、ひとつひとつが重みのある対局になりますが、今回得た経験を生かし、さらに上を目指して精一杯頑張りたいです。
・5組優勝:渡辺和史 七段
昇級を決めた瞬間に気が緩んでしまう経験が過去にあり、前回は決勝戦で悔しい思いをしました。そこで今回は、最後まで気を抜かずに臨んだことが優勝につながったのだと思います。表彰式の場でメダルをいただく喜びは格別で、今後もこれを励みに、さらに上位でも活躍できるよう精進してまいります。
・6組優勝:藤本渚 五段
今期のランキング戦では、最年少棋士として厳しい対局が続きました。決勝戦でも若手同士の熱い戦いとなりましたが、最後まで粘り強く指せたことが今回の優勝につながったと思います。まだまだ課題は多いですが、次のステージでも通用するように一層努力を続け、今後も勝ち続けられる棋士を目指したいです。
学生新聞オンライン2025年1月29日取材 東京大学4年 吉田昂史

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