株式会社ミラティブ 代表取締役CEO 赤川隼一
「好き」でつながる世界を広げたい
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株式会社ミラティブ 代表取締役CEO 赤川隼一(あかがわ じゅんいち)
■プロフィール
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、DeNAに入社。2012年4月より最年少執行役員として海外事業、ブラウザゲーム事業等を管轄。2018年2月に、Mirrativ事業をDeNAからMBOする形でミラティブを創業。
スマホひとつで誰でもカンタンにゲーム実況ができるサービスを展開している株式会社ミラティブ。好きなことを通じて人がつながることをテーマに、ゲームを通じて自分だけの物語が生まれる居場所を創る、コミュニティプラットフォームを生み出してきた。代表取締役CEOである赤川さんに、ミラティブの強みやライブゲームの可能性について、お話を伺った。
■音楽とインターネットに夢中だった学生時代
高校時代から、とにかく音楽漬けでした。音楽オタクで、バンドもやっていたし、食費を削ってバイト代を全部CDに突っ込んだりしていましたね。
当時はインターネットが今みたいに自由に使えなくて、電話代がかかる時代でした。でも、夜11時からは無料になるんです。だから、11時になったらすぐにチャットにつないで、日本中の音楽好きと語り合っていました。そこで知り合った人たちとは、今でもつながっているくらい、自分にとってはとても大切な経験でした。
将来も、本気で音楽に関わる仕事をしたくて、就活のときはロッキング・オン社に履歴書を埋め尽くして送ったのですが、まさかの書類落ち。今ならわかりますけど、熱量が高すぎてきっと面倒くさい学生という印象だったのではないかと思います(笑)。そこで初めて「仕事って難しいんだな」と実感しました。その後、偶然参加した会社説明会で出会ったのがDeNA社でした。会長の南場さんがすごいエネルギーで話していて、「面白そうな会社だな」と思い、入社を決めたんです。 入社して最初の1年半は営業、その後の1年半はマーケティングを担当しました。マーケティング部門への異動で、初日に上司に「お前、将来何したいの?」って聞かれて、正直に「3年で辞めてバンドやります」って答えたら、めっちゃ怒られましたね。「そんなにやりたいなら今すぐ辞めてバンドやれ!」と。 一晩泣きながら考えて、「もう少し仕事頑張ります」って決めたのがターニングポイントでした。そこからは、仕事に全力で向き合うようになりました。1年目から意識していたのはちゃんと自分の頭で考えて、常識を疑うこと。例えば、当時は「ガラケーのゲームは広告出稿をしない」と言われていましたが、DeNA社で「モバゲー」が流行り始めた年で「いや、ゲームのサービスにゲームの広告を出すのって普通じゃない?」と思って営業したら、意外と成果につながりました。常識にとらわれずに動くことの大切さを学びました。
■誰でも気軽にゲーム実況を
ミラティブを設立したきっかけは、やっぱり自分自身の原体験が大きいですね。学生時代に音楽好き同士でつながれたことが人生を広げてくれたし、次に挑戦するなら「趣味で人とつながる領域」だと思っていました。そこで考えたのがゲーム実況でした。好きなゲームを通じて友だちとつながる、あの「友だちの家でゲームやってる感じ」をオンラインで実現したかったんです。それに、ゲーム実況は世界的にも伸びている市場だったので、世界でも戦えるはずだと。そこに加えて、スマホだけでゲーム実況ができる技術を見つけて、「これならいける!」と確信。そうして生まれたのがミラティブです。
ミラティブの強みは、常に「配信する人」の目線でサービスを作ってきたこと。例えば、YouTubeでは「視聴者が楽しめるように」おすすめ動画が表示されるけど、ミラティブでは「配信者が楽しめるように」設計されています。配信していて一番辛いのって、誰も見てくれないことなんですよね。だから、同じゲーム好きが自然と集まるようなアルゴリズムを作って、配信を始めた瞬間に誰かが見てくれる環境を整えています。 また、ライブ配信ならではのリアルタイム性も大切にしています。「このゲーム好き!」って言ったら、すぐに「私も!」って反応があると熱量が上がるし、居場所としての価値も高まります。そうすると、「じゃあ、ちょっと応援しようかな」って気持ちになることもありますよね。実際、ミラティブでは「お土産のやり取り」みたいな文化ができていて、「この前ありがとう、じゃあこれ贈るね」というようなギフトを贈りあったりと、自然なコミュニケーションが生まれています。
■今後の展望
ゲームとライブ配信が融合した「ライブゲーム」が次の大きなトレンドになると思っています。今のゲーム実況って、基本的に見るだけで、せいぜいコメントを打つくらいですよね。でも、ライブゲームなら、視聴者が配信者にリアルタイムで回復アイテムを贈ったり、その場ですぐに一緒に配信者とプレイしたりできます。昔、Facebookが生まれたことでソーシャルゲームというジャンルができたように、ライブ配信が当たり前になった今、「ライブゲーム」という新しい体験が自然に生まれてくるはずです。10年後、ライブゲームが当たり前になっている未来を前提に、これからも挑戦を続けていきます。
■大学生へのメッセージ
今の大学生って本当にすごいと思います。昔と違って、知りたいことや好きなことにアクセスして深めるハードルが圧倒的に下がり、その分、特化度合いも格段に上がっている。だからこそ、自分の「好き」に対する知識や熱量は、既に社会人にも負けないレベルになっているはずです。 自信を持って、自分の好きなものを突き詰めてほしいです。社会人になる=つまらないわけじゃない。本当に好きなことを極めて、かっこよく生きている大人もたくさんいます。だから、まずは最高の大学生活を送り、その「好き」に自信をもって自分なりのキャリアや良い人生を見つけてほしいです。
学生新聞オンライン2024年11月21日取材 立教大学4年 緒方成菜
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立教大学 4年 緒方成菜
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