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俳優 水谷豊 

映画で豊かになった人生 与えられる側から与える側に

俳優 水谷豊 (みずたにゆたか)

■プロフィール
1952年7月14日生まれ。北海道出身。68年に「バンパイア」(フジテレビ系)で初主演を務め、以降「熱中時代」シリーズ(日本テレビ系)や「無用庵隠居修行」シリーズ(BS朝日)、そして「相棒」シリーズ(テレビ朝日系)など、人気シリーズに多数出演。俳優業に加え、歌手、映画監督等でも幅広く才能を発揮している。

50年以上にわたり第一線の俳優として活躍し続ける水谷豊さん。長年愛されるドラマ『相棒』は、10月に新シーズンの放送がスタートする。そんな水谷さんに俳優業の魅力や長く続けられている理由、シリーズ誕生25周年となる『相棒』のはじまりや今シーズンの魅力、さらに大学生への温かいメッセージを伺った。

僕は子どもの頃から映画が好きで、色々な映画を見て育ちました。10代、20代は、映画からたくさん影響を受けましたし、今でも鮮明に覚えている映画は多いです。映画を見たことで、自分の人生がものすごく豊かになったと感じています。
映画のすごさのひとつは、どんなに大変な時であっても映画を観ると、その大変さを忘れて、作品に没頭できること。それだけ人生に影響を与えるエンターテイメントである映画の力は、本当にすごいなと思います。かつては映画からたくさんのことを与えてもらった人生ですが、気がついたら自分が与える側の立場になっている。本当不思議なことですよね。

■俳優の魅力は「悩みを忘れさせられる存在」であること

俳優という仕事の魅力は、誰かの悩みを忘れさせられる存在であることです。たとえば、病気そのものは治せないかもしれないけれど、病気を忘れさせることはできるのではないかと思っています。
また、俳優を長く続けられる方法については、本当によく聞かれます。でも、残念ながらありません(笑)。もしあったら、誰かに教えてあげたいのですが、本当に分からない。無心に取り組み続けていたら、結果的にずっと長く俳優を続けていたという感じです。
僕がこの仕事を始めたのは、子どもの頃です。しかし、大学に落ち、バイトをしてお金を稼がないといけない家庭環境になっていたこともあり、この世界からは一度離れていました。しかし、19歳の時、僕が俳優をやめたことを知らないプロデューサーから声がかかったのです。その時、「どうせバイトをするなら、経験のある世界だし、この世界を進むのもいいか」と思い、引き受けました。
最初は一つのアルバイトとしてやってみたわけですが、どうも評判がいい。少し評判が良いと、次の“バイト”の依頼が来るのです。そうやって、“バイト”が続き……気が付くともうどうでしょう。五十数年間もバイトを続けているという感覚なんです(笑)。
作品を作る時に、自分の役をどのようなキャラクターにしようかと考えた時、僕の場合は「降ってくる」感覚に近いものがあります。「どうすればいいんだろう」と思った時に、答えが降ってきてくれるのです。それは若い時からそうで、その「降ってくる」という感覚が続き、今に至ります。
また、何をするにもそうですが、何かをなすには自分の力だけでは実現できないと思っています。いいチームも大切になります。自分を理解してくれるいいチームが周りにいたからこそ、こうやって続けてこられたのだと思います。

■『相棒』のはじまりについて

『相棒』に出演したことによって、人生観が意識して変わったかというと、そういうことはないです。もちろん、自然に何かしら影響を受けた部分はあるかもしれませんが、自ら強く意識した変化はありません。
この作品は、元々は2時間ドラマでした。その時の脚本がすごく面白く、「こんなに面白い警察ものの物語は今までなかったんじゃないか」と驚きました。実際に面白い作品になったので、テレビ局から「3本やってシリーズにしてほしい」とお願いされました。
あまりにも面白かったから、僕は「シリーズになったら、5年間はやると思う」と、トークイベントで口にしてしまったことがあります。プロデューサーや脚本家の方たちも「えー!そんなに長くやるんですか」と、みんな驚いていました。そんなところから始まって、なんと25周年。誰もここまで長く続くとは思っていなかったですね。

■10月から放送の『相棒 season24』について

毎シーズンの『相棒』の第1話は、僕たち出演者自身が驚かされます。今回はその中でも、始まり方が前代未聞で、破格の始まり方だと思います。なんと、特命係の杉下右京が人間国宝に弟子入りしてしまうのです。こんなことは今までになかったです。右京が作務衣や着物姿をしています。
撮影は、僕自身は非常に楽しみながら取り組んでいました。作務衣で現場に来たら、スタッフの皆さんが「うわぁー!」と喜んでくれたり、驚いてくれました。ただ、3日目、4日目になると、作務衣がすっかり当たり前になっていましたね。作務衣以外にも、今までにないようなすごい格好がありますよ。ぜひ楽しみにしてください。
ゲストの片岡鶴太郎さんとは、35年ぶりの共演になります。久しぶりに楽しい時間を過ごしました。今回、鶴太郎さんは人間国宝の講談師という役どころだったのですが、さすが国宝ということで、役に入ると偉そうなんですよ(笑)。そういった二人のやり取りも魅力の一つです。講談の世界は、知ると本当に興味深い世界なので、見てくれる皆さんに楽しんでもらえると思います。

■学生へのメッセージ

自分が若い時のことを思い出すと、若い時は器用になれなかったなと思います。悩みがあると、思いっきり悩みに浸かるしかありません。中々そこから抜け出せないし、苦しい思いもするし、辛い思いもする。傷つくこともあるし、人を傷つけることもある。そんな苦しさがたくさん起きる時期だと思います。
僕自身も若い頃は悩むことが沢山ありました。自分の思い通りにいかないことだらけでした。「冗談じゃないよ」「何で俺のこと分かってくれないんだよ」「勝手なこと言って」と思ってしまうことも多々あって、深く悩んでいました。
今、その時期を過ぎて思うのは、「大体のことは悩むほどのことじゃなかったな」ということです。悩みすぎて辛い気持ちになる前に、できる限りそんな視点を思い出してくれたら嬉しいです。そうすると楽しい時間が増えます。時間はなるべく楽しいことに使った方が良いと思います。せっかくの大学時代なのですから、悩むことに時間使わず、楽しむことに時間を使ってもらえたらなと思います。

学生新聞オンライン2025年9月9日取材 昭和女子大学 2年 阿部瑠璃香

■取材の感想
小学生の頃から「相棒」を見続けてきた私にとって、水谷豊さんを取材できたことは大変光栄でした。俳優業の魅力を「観客に現実を忘れさせる力」と語られ、長く続ける秘訣を「周囲のおかげ」と振り返る姿に、謙虚さと深い信念を感じました。また、若い時こそ悩むよりも楽しいことに時間を使うべきだというメッセージは、進路を模索する今の私に深く響きました。温かな言葉と真摯な姿勢に触れ、改めて憧れの存在だと実感しました。
N高等学校3年 服部将昌

シリーズ誕生25周年
そして…黄金コンビ通算11シーズン目
杉下右京(水谷豊)×亀山薫(寺脇康文)
四半世紀の集大成にして…
《相棒ワールド》は新たな境地に突入する!
新シーズン衝撃の幕開け!!

「相棒 season24」
10月15日スタート
テレビ朝日系
水曜 午後9:00~9:54
※初回は午後9:00~10:09

法政大学1年 渡辺碧羽/昭和女子大学2年 阿部瑠璃香/N高等学校 3年 服部将昌/情報経営イノベーション専門職大学1年 白石侑生

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