歌舞伎俳優/俳優 尾上眞秀
将来は、お客様を楽しませるユーモアある歌舞伎役者に

歌舞伎俳優/俳優 尾上眞秀(おのえ まほろ)
■プロフィール
2012年9月11日、東京都出身。2017年に「魚屋宗五郎」の魚屋丁稚与吉で初お目見得。2023年の歌舞伎座「音菊眞秀若武者」で初代・尾上眞秀を名乗っての初舞台を踏んだ。また、2022年にドラマ「ユニコーンに乗って」(TBS)で俳優としてもデビュー。以降、「PICU小児集中治療室」(CX)大河ドラマ「どうする家康」(NHK)「風のふく島」(TX)などに出演。なお、『港のひかり』が映画初出演となった。
「物心ついた頃から、すでに歌舞伎の舞台に立っていた」と語るのは、俳優の尾上眞秀さん。4歳で歌舞伎の世界に入り、13歳となった現在は学業と仕事を両立しながら挑戦を続けている。初の映画出演となる『港のひかり』では、盲目の少年役を熱演。役作りの裏側や、歌舞伎の魅力、そしてこれからの夢について伺った。
気づいたときには、もう今のお仕事を始めていました。小さい頃から歌舞伎を見て育ち、初めて舞台に立ったのは4歳です。その頃のことはあまり覚えていませんが、「やるか?」と言われたのがきっかけでした。
小学校時代は、実験好きが高じて科学クラブに参加したり、サッカーをして汗を流したりと学校生活も楽しんでいました。サッカー選手を夢見たこともありましたが、歌舞伎と関わるうちに自然と歌舞伎役者としての道を歩むようになりました。
学校と仕事の両立は、スケジュールが重なると大変なこともあります。それでも、友達と関わる時間や学びを大切にしたいと思い、学業を優先していますね。
歌舞伎の魅力は、数えきれないほどあります。立ち回りがアクロバティックなところは見ていてとてもワクワクしますし、歴史の教科書などに登場する人物が舞台の上で現れるのも嬉しくなります。また、自分で化粧をして顔を描くのもおもしろいし、踏み込んだ時の下駄の音などを聞くのも気持ちが良いです。稽古は2週間に一度行われ、その中で三味線やお囃子、唄や太鼓などを学んでいます。特に太鼓を鳴らすのが好きなのですが、最初から難しい曲に挑戦させてもらって、とても緊張しました。
■映画『港のひかり』での挑戦
僕にとって初めての映画出演となる『港のひかり』では、孤独を抱える目の不自由な少年を演じました。オファーをいただいたとき、母がとても喜んでくれたことを覚えています。役作りのために盲学校を訪れ、白杖の持ち方や使い方を学び、徐々に慣れていきました。そこから1〜2ヶ月は「目が見えないとはどういうことか」を意識しながら過ごしました。
役を演じる際には、台本を読み込み、性格や背景を考えながら役柄にふさわしい人間像を探っていきます。今回も孤独や葛藤を抱えた少年がどんな気持ちで日々を過ごしているのかを、深く想像しながら役に向き合いました。
盲目の役を演じる上で、特に難しかったのは目線です。目線を動かすと見えているように映ってしまうため、目線を動かすときには頭を一緒に動かすなど、自然な様子に見える工夫が必要でした。監督やスタッフの方々とたくさんコミュニケーションを重ね、孤独や葛藤を抱える少年の心情を丁寧に表現することを心がけました。
撮影は能登で行われ、毎日地元の食材を味わいながらモチベーションを高めていました。小さい頃から大人に囲まれて育ったので、撮影現場ではほとんど不安はなく、むしろ多くの人と関わることができてとても楽しかったです。
完成した作品を見て「もっとこうできたのではないか」と感じる部分もありましたが、次の挑戦への大きな糧になったと思います。
■経験のないジャンルにも取り組みたい
これからは、ドラマにも挑戦してみたいです。与えていただいた役には全力で取り組むつもりですが、ホラーなどこれまでに経験のないジャンルにも挑戦してみたいです。
同時に、歌舞伎役者としてもユーモアがあってお客様を楽しませることのできる役者になりたいです。舞台を観に来てくれる友達もいるのですが、どこの席に座っているのかすぐに見つけられます。「良かったよ」と感想をもらえるととても嬉しいです。
プライベートでは、今夢中になっているバレーボールにも力を入れたいです。今はジャンプサーブが完璧に入るように取り組んでいますが、身長が伸びればレフトにも挑戦してみたいです。身長を伸ばしたいですが、歌舞伎は身長が伸びない方が良いと言われるので複雑な気持ちです。
■メッセージ
『港のひかり』は、すべてが見どころですが、特に見て欲しいのは僕が演じる幸太の行動力です。彼は、目が見えないことでいじめられ、独りぼっちだったところを元ヤクザのおじさんに助けられて、将来は警察官になります。その行動力は僕自身演じていて、とても心惹かれました。また、フィルムで撮影しているので、デジタルとは違う雰囲気が出ています。現代にはないようなストーリーで、少し懐かしい感じを体験できると思うので、ぜひ劇場でいろんな方に見ていただきたいです。
学生新聞オンライン2025年9月1日取材 武蔵野大学3年 吉松明優奈

監督・脚本:藤井道人
出演:舘ひろし 眞栄⽥郷敦 尾上眞秀 ほか
11月14日から全国公開
©2025「港のひかり」製作委員会
過去を捨てた元ヤクザの漁師と
目の見えない少年との十数年を描く、
年の差を超えた友情と再会のものがたり。

駒澤大学2年 前田康介/昭和女子大学2年 阿部瑠璃香/武蔵野大学3年 吉松明優奈
ヘアメイク:大森さち子 スタイリスト:河部菜津子(KiKi inc.)


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