日本ケミファ株式会社 代表取締役社長 代表執行役員社長 山口 一城

イノベーションを生む・生み続ける会社であり続けたい

日本ケミファ株式会社 代表取締役社長 代表執行役員社長 山口 一城 (やまぐちかずしろ)

■プロフィール
昭和33年7月23日生まれ
慶応義塾大学商学部卒業
昭和56年4月 株式会社第一勧業銀行 入行
昭和60年4月 日本ケミファ株式会社 入社
当社取締役等を歴任したのち、平成6年6月に代表取締役社長就任、現在に至る
その他の加盟団体等 日本経済団体連合会審議員、東京商工会議所評議員、経済同友会、東京ロータリークラブ、学校法人星薬科大学名誉理事など

全社員の魂がこもった社名「日本ケミファ」。新薬、ジェネリック、臨床検査薬の三本柱に加え、がん治療の未来を拓く「アルカリ化」の新領域へと進出しています。創業75年を超えるなかで、創業家として企業の継続性を第一に置く山口社長に、仕事に懸ける情熱を支えてきた確固たる経営の指針を伺いました。

私の名前「一城(かずしろ)」には、両親の「一国一城の主として、いつか会社を継いでほしい」という切なる願いが込められており、幼い頃から会社を継ぐことを意識して育ちました。その後、進学を決める際に、仲間を大切にする慶應の方針に魅力を感じていた両親から「慶應は社会に出たときに役に立つから」と言い聞かされ、中学から大学までを慶應義塾で過ごしました。父の助言のとおり、慶應時代のご縁がきっかけで会社経営に活かされたことも多くあり、「慶應で良かった」と実感できたこともありました。
実は、大学卒業後の進路を考える際、最初は父の会社に入社することはあまり考えていませんでした。大学院への進学や海外留学も検討しましたが、父の勧めで第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行し、外国為替や融資の業務に奔走しましたね。その後、私が20代半ばの時に、父の体調不良を機に日本ケミファに入社しました。

■三本の柱を支える「差別化」の戦略

日本ケミファという社名の由来は、化学を意味する「ケミカル」と薬品を意味する「ファーマシー」を組み合わせた造語から生まれたものです。社名変更にあたっては、全社員からの公募による候補の中から選定したので、全社員の魂が込められていると思っています。
弊社では、現在、三つの事業を柱としています。一つ目は、長年研究を続けている新薬事業。最近では国から画期的新薬として認定された抗うつ抗不安薬の開発なども行なっています。二つ目は、ジェネリック医薬品事業。医師や薬剤師の方々から「新薬メーカーとしての信頼感がある」と評価をいただいています。そして三つ目は、現在非常に好調な臨床検査薬事業です。特に、血液一滴で41項目のアレルギーを30分程で検査できる「ドロップスクリーン」は、画期的かつ手軽なものであるため開業医の方にも多く親しまれています。今後も競争優位性のある魅力ある製品を継続して生み出していきたいです。

■大切なのは「先憂後楽」と初期対応のスピード

弊社は昔から新薬の開発に注力しており、その開発には20~30年を要します。時間的にも金銭的にもコストがかかり、忍耐力が試されます。そのため私が経営において最も大切にしているのは「企業の継続性(ゴーイングコンサーン)」です。会社が存続し続けなければ、患者さんに薬を届けることもできません。だからこそ、目先の利益に惑わされず、明るい未来の発展のために今何をすべきかを考える「先憂後楽」の精神は大切なのです。
また、組織運営では「火事は最初の5分間」を信条としています。トラブルが起きた際の初期対応が、その後の成否を分けます。「悪い報告ほど早く上げる」ことを徹底させることで、傷口を最小限に抑える文化を築いています。
当社は部門間の壁が低く、部門横断的に協力し合える、非常にアットホームな職場だと思います。イノベーションを生む・生み続ける会社であり続けたいので、失敗を恐れずに挑戦することを奨励し、たとえ失敗してもそれを教訓として次に活かす。そんな家族的な温かさと、プロフェッショナルとしての厳しさが共存する組織でありたいと考えています。

■「アルカリ化」という新領域で世界のパイオニアへ

これからは国内市場のみならず、海外市場の開拓が不可欠です。すでにベトナム工場での生産・販売や、中国への輸出を積極的に進めています。
そして今、私が最も情熱を注いでいるのが「アルカリ化」という新たな事業テーマです。体の酸化を防ぎ、バランスを整える。特に、膵臓癌の化学療法剤とアルカリ化剤を併用することで、延命効果が期待できるという臨床試験を進めています。この領域において、日本ケミファはパイオニアであると自負しています。これを将来の大きな事業の柱に育て上げ、世界中の患者さんの希望になりたいと願っています。

■「聞き上手」で「謙虚」な人材

採用において私が重視するのは、専門知識以上にその人の「人格」です。挨拶ができるといった基本的な礼儀はもちろんですが、特に「聞き上手」であることを大切にしています。相手の言葉に耳を傾け、周囲と円滑な人間関係を築ける社会性こそが、組織を動かす原動力になるからです。
また、自分の力だけで生きていると思わず、周りの支えによって自分が生かされているという「他力」を理解し、感謝できる謙虚な姿勢を持つ方を求めています。

■大学生へのメッセージ

最後に、未来を担う皆さんに二つのことを伝えたいと思います。
一つ目は、「志を持つこと」です。「Boys, be ambitious」という言葉があるように、漫然と日々を過ごすのではなく、自分のやりたいこと、好きなことを見つけてください。小さな目標でもかまいません。志を持つことで、人生の景色は一変します。
二つ目は、「出会いを大切にすること」です。人生は、誰と出会うかで決まると言っても過言ではありません。袖すり合うような小さな縁の中にも、素晴らしいヒントが隠れています。その縁を活かせるかどうかは、あなた次第です。類は友を呼ぶという言葉にもあるように、自分自身を磨き、誠実に生きていれば、必ず素晴らしい仲間が集まってきます。皆さんの人生が、豊かな出会いに満ちたものになることを心から願っています。

学生新聞オンライン2026年3月28日取材 青山学院大学1年 松山絢美/京都芸術大学 1 年 猪本玲菜/東京薬科大学 3 年 庄司春菜

情報経営イノベーション専門職大学 2 年 山田千遥/青山学院大学 1 年 松山絢美/京都芸術大学 1 年 猪本玲菜/東京薬科大学 3 年 庄司春菜

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