株式会社神明ホールディングス 代表取締役社長 藤尾益雄
新たなビジネスモデルで日本の農業と食生活に貢献する

株式会社神明ホールディングス 代表取締役社長 藤尾益雄(ふじおみつお)
■プロフィール
1989年大学卒業後、㈱神明(現㈱神明ホールディングス)に入社し、米卸の老舗企業4代目として2007年社長に就任。2009年に急性骨髄性白血病を発症したが、半年後に復帰。
米を中心に青果・水産・外食へと事業領域を拡張し、川上から川下までをつなぐアグリフードバリューチェーンを構築。現在は農業のプラットフォーマーを目指し、日本の農業と食の持続的発展に取り組む。
米卸を祖業として長い歴史を持ちながらも、青果事業や外食産業に参入するなど、積極的な事業拡大を行なっている神明ホールディングス。その創業家の4代目でもある藤尾益雄社長に、跡継ぎとして過ごした学生時代や日本の農業が抱えている問題点、ビジネスモデルの転換や今後の展望についてお伺いした。
私は米卸の創業家の4代目として生まれたので、3歳頃からずっと「お前は跡取りだ」と言われて育ってきました。祖父からは大学への進学を反対され、高校を出たらすぐに精米工場で働くように言われました。ですが、大学に行きたかったので、通いながらも精米工場で働くことを条件に、なんとか説得をして進学しました。精米工場で最初に経験をしたのは、産地からトラックで運ばれてきた米をタンクへと流していく「張り込み」という仕事でした。体力的にも1番しんどい作業なのですが、この経験によってしんどいことへの忍耐力が身につきましたね。そして何よりもお米を1番身近で見て品質のチェックなども自分自身でするので、お米のことがどんどん分かっていきました。その後も様々な部署で経験を積み、入口から出口までの全ての工程をこの期間に学びました。この経験は後々すごく活きて、営業でお得意様のバイヤーさんが来た時に精米工場のことも全て説明できたので、非常によい経験でしたね。
■米卸からアグリフードバリューチェーンへ
大学を卒業後はそのまま神明に入社して様々な経験を積み、父から交代する形で2007年に社長へ就任をしました。神明はもともと1902年に米屋として創業して、そこから米卸へと転換して歴史を築いてきました。その中でずっと日本一の米卸を目指し続けており、たしかに神明としては成長してきました。その一方で消費面では日本の食の多様化によりお米の消費は低下しており、生産面では生産者の減少など様々な要因が起因し、食料自給率の低下や日本の農業の弱体化をもたらしていました。そのような過渡期にある中で、ビジネスモデルのチェンジが必要でした。どうすればもっとお米を食べてもらえるかと考えた時に、朝食マーケットに目をつけました。朝食はどうしても時間がないためパンで済ませる人が多く、しかも当時のパックご飯は独特の匂いや酸味がありました。そこで家で炊いたご飯と同じようなものを提供できればもっと朝食でパックご飯を食べてもらえるのではないかと考え、新プロジェクトを開始しました。全国の水が綺麗なところを巡る中で富山県の入善町という場所に出会い、水質も米の炊飯に非常に適していたことから、入善町に工場の建設を決めました。2026年には第4工場が竣工して、年間1億5000万食を提供できる体制が整います。ご飯がおいしくなることでパックご飯の普及が拡大して、お米を食べてもらうきっかけを増やすことができました。また従来はスーパーや外食産業にお米を卸して、それを買ってもらい、食べてもらうのが中心でしたが、お客様の口元まで届けることにもチャレンジしようと、回転寿司の「魚べい」などで外食産業にも参入しました。このように私たちは生産からお客様の口元に届くまでを一貫して担う、アグリフードバリューチェーンを構築しています。
■日本の農業の今後とグローバルな食料危機
日本の農業は今危機に瀕しています。お米を作っている農家さんは2020年85万人いますが、それが2040年には半数以下の30万人になる見込みです。それに伴って生産量も減少し、年間700万トンから360万トンへと半減します。一方で消費は年間490万トンほどとなる予想であるので、年間130万トンが不足するということになります。つまり2040年にはお米の需要に対して供給が2〜3割も不足する可能性があり、これはあってはならないことです。私は人が生きていく上で絶対必要な資源は2つあると考えていて、1つはエネルギー、そしてもう1つは食料だと思っています。このままいけば日本はエネルギーだけではなく、食料の面でも大きな危機に瀕することになります。私はずっとグローバルな食料危機が来ると言い続けてきましたが、そうなれば食料自給率38%の日本は沈没してしまいます。その時に人々が飢えてしまわないよう、比較的自給率が高いお米と野菜は自給自足できるようにするのが課題であり、同時に我々の使命でもあります。
■農業のプラットフォーマーとして農家を支える
このような課題に対応するために、ドローンやGPSなどを活用したデジタル化の推進や、多収穫・良食味・早生である新品種「ふじゆたか」などの品種開発、さらに大規模農家を育成する事業も運営しています。また今後はアグリフードバリューチェーンを強化するために、農業のプラットフォーマーになることを大きな目標として取り組んでいます。具体的には昨年から川上戦略事業本部を作り、全国の先進的な取り組みをしている農家さんを支え、様々な課題を一緒に解決しています。最近では農家さんに向けた国の助成金の制度などが複雑なことから、AIの営農指導員を作って欲しいという声もありました。そのような要望をきちんと実現して、農家さんの後押しをすることで成長していってもらうことを目指しています。
■学生へのメッセージ
みなさんには大きな夢や目標を持って欲しいです。社会人になると学生時代と違って、様々な障害や試練に直面することがあると思います。そんな時にも諦めずに前向きに取り組んでいくことが、夢の実現につながっていきます。私も神明の企業理念を実現するために、常に大きな目標を掲げて実現してきました。勉強ができる・できないは関係なく、夢と目標だけは大きく持って、絶対に何があっても諦めないという気持ちで突き進んで欲しいです。そのような信念があれば、必ず夢は実現していきますよ。
学生新聞オンライン2026年4月20日 法政大学4年 島田尚和

法政大学4年 島田尚和/京都芸術大学1年 猪本玲奈


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