エクスコムグローバル株式会社 代表取締役社長 西村誠司
人の幸せを届ける挑戦を、誰よりも真剣に

エクスコムグローバル株式会社 代表取締役社長 西村誠司 (にしむら せいじ)
■プロフィール
1970年5月20日、愛知県生まれ。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)を経て、1995年インターコミュニケーションズ(現エクスコムグローバル)を設立。モバイル通信サービス「イモトのWiFi」、メディカル支援サービス「にしたんクリニック」「にしたんARTクリニック」などさまざまな事業を展開。
「イモトのWiFi」や「にしたんクリニック」など、数々の話題性ある事業を手がけてきた西村誠司社長。幼少期から働き続けた原体験、起業への想い、そして人の幸せを届ける事業づくりについて伺いました。
学生時代に一番力を入れたことを聞かれたら、迷わず「働いたこと」だと答えます。家が裕福だったわけではないので、生きていくために幼い頃から働く必要がありました。12、13歳の頃には新聞配達を始め、朝刊と夕刊を配りながら、自分でお金を稼いでいました。高校、大学に進んでからも、引っ越し屋、葬儀屋、百貨店の配送センターなど、さまざまな仕事を掛け持ちしていました。
その時に培った、お金を稼ぐ大変さ、1円を積み上げる重み、そして継続することで力がつく感覚は、今の経営にも強く活きています。若い頃は体力もあります。だからこそ、時間を使って本気で働けば、必ず自分の力になります。実際、私は20~21歳の頃には200万〜300万円ほど貯金できていました。環境を言い訳にせず、自分の行動量で未来を変えていく。その感覚は、学生時代に身についた大切な財産です。
■働くことで身につけた、人生を切り拓く力
アルバイトと同時に、大学時代に力を入れていたのが、英語と会計の勉強です。英語ができれば、得られる情報量も、出会える人の幅も大きく広がります。お金をかけられなかったので、NHKのラジオ講座や英語の本、TIME誌などを使い、とにかく量をこなしました。卒業する頃にはTOEICで900点台を取れるほどになっていました。
また、会社を経営するうえで数字を読めることは欠かせないと思い、簿記や財務諸表の勉強に取り組みました。会社を動かしていくには、感覚だけではなく、数字で状況を見る力が必要です。英語、会計、そしてこれからはコンピューターの時代になると考えたことが、後に外資系コンサルティング会社へ進むきっかけにもなりました。
起業を意識したのは、学生時代に出会ったアメリカ人の友人たちの影響が大きかったです。彼らの多くは、優秀な人ほど自分で事業を起こすという考え方を持っていました。また、ジェフリー・アーチャーの小説『ケインとアベル』にも強く影響を受けました。恵まれない環境から、自分の腕一本で道を切り拓いていく主人公の姿に、心からかっこよさを感じたのです。
就職活動の時点でも、私は「3年で辞めて起業する」と話していました。日本の大企業ではあまり良い反応をされませんでしたが、外資系企業ではその考え方を面白がってくれました。アクセンチュアでは、「起業して成功したら、うちのブランド価値も上がる」と言ってもらい、その懐の深さに惹かれました。結果的には、3年を待てずに25歳で起業することになります。当時はとにかく早く挑戦したくて仕方がありませんでした。
■世の中に求められるものを見極める
事業をつくるうえで、私が大切にしているのは「自分が好きかどうか」だけで判断しないことです。もちろん、自分が心から良いと思えるものを届けられるのが一番です。しかし、商売として考えるなら、世の中の人が何に不安を感じ、何を求めているのかを見極める必要があります。
「イモトのWiFi」を個人向けに展開したときもそうでした。それまでは法人向けのサービスが中心でしたが、スマートフォンの普及やSNSの広がりによって、海外でもインターネットを使いたいという個人のニーズが一気に高まっていました。そこで、BtoC向けにサービス名や見せ方を変え、より多くの人に知ってもらえるブランドづくりに力を入れました。
マーケティングとは、単に商品を売ることではありません。世の中の人に、どのようなイメージを持ってもらうかを設計することです。どれだけ良いサービスでも、伝わらなければ選ばれません。逆に、受け手が価値を感じてくれれば、そのサービスは強いブランドになります。だからこそ、相手の立場に立って考えることが何より大切だと思っています。
■命を支える仕事に、人生をかける
現在、特に力を入れているのが不妊治療の領域です。私自身、アメリカで不妊治療を経験し、そのおかげで娘と出会うことができました。その経験があったからこそ、日本でも高度な不妊治療をもっと身近に受けられる環境をつくりたいと思うようになりました。
命を生み出す仕事には、他の事業とは違う重みがあります。患者様に「このクリニックに通ってよかった」と思っていただくだけでなく、人の優しさや思いやり、そして真剣に向き合う姿勢まで届けられる場所にしたいと考えています。たとえ結果として妊娠に至らなかったとしても、「ここまで一緒に向き合ってくれたから悔いはない」と思っていただける存在でありたいです。
私が考える良い会社とは、単に成長できる場所ではありません。心がピュアで、人のために一生懸命になれる人たちと働ける場所です。「何をやるか」以上に、「どんな価値観を持った仲間と働くか」が大切です。だからこそ採用では、人としての根っこをとても重視しています。知識やスキルは後から身につけられますが、価値観や人間性は簡単には変わりません。人の幸せを本気で願える仲間となら、どんな事業でも価値を届けられると信じています。
■大学生へのメッセージ
大学生の皆さんに伝えたいのは、知識と経験はできる限り積み上げた方がいいということです。人生は意思決定の連続です。今の自分は、これまでの意思決定の積み重ねでできています。より良い意思決定をするためには、質の高い情報に触れ、良い本を読み、尊敬できる人に会い、行ったことのない場所へ足を運ぶことが大切です。
人は放っておくと、慣れた環境に留まってしまいます。だからこそ、自分から新しい経験を取りに行ってください。知らない街に行く、新しい人と話す、普段読まない本を読む。そうした小さな行動の積み重ねが、自分の視野を広げてくれます。若いうちの経験は、すぐに結果につながらなくても、必ず未来の自分を助けてくれます。自分の可能性を狭めないためにも、たくさん学び、たくさん動いてみてください。
学生新聞オンライン2026年5月8日取材 法政大学4年 島田大輝

日本大学1年 佐久間康登/法政大学4年 島田大輝


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