オムロン株式会社 代表取締役社長 CEO 辻永 順太
オートメーションを進化させ、事業を通じて"よりよい未来"をつくる

オムロン株式会社 代表取締役社長 CEO 辻永 順太(つじなが じゅんた)
1966年生まれ。1989年に立石電機(現オムロン)へ入社。工場の自動化を担う制御機器事業(インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー)の営業職や商品企画職を経て、2016年 商品事業本部長、2017年 執行役員、2019年 執行役員常務、2021年インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長を歴任。2023年より現職。
ヘルスケア機器だけでなく、工場の自動化(オートメーション)や社会システムの構築にも注力し、幅広い分野で技術革新を続けるオムロン。現在は「カーボンニュートラルの実現」や「健康寿命の延伸」といった社会的課題の解決にも積極的に取り組んでいる。辻永社長にこれまでのキャリアや会社の目指すべき方向についてお話を伺った。
大学での専攻は数学でしたが、並行してソフトウェア開発を学び、ゲーム制作やプログラミングの実践にも意欲的に取り組んでいました。就職活動を行う際、技術開発の仕事も選択肢に入れましたが、より人と接することができる仕事を選びたいという気持ちが大きくなって志望先を探すように。理系出身者を技術職種で採用する企業が多いなか、当時の立石電機(現在のオムロン)が理系の営業職を募集していると知り、応募しました。父が製造業で働いており、「オムロンは良い会社だ」と助言をくれたことも入社を決意した理由の一つです。
◾️営業とはお客様の課題解決である
入社後、最初に配属されたのは営業部門です。主に製造業に製品を販売する仕事でしたが、当時、私が担当していたのはまだ市場に浸透していない新しい技術を使った製品でした。
たとえば、「画像処理技術」を活用した製品も当時はまだ多くの企業にとって馴染みがなく、販売に苦戦しました。そこから学んだのは、「どんなに良い技術でも、相手に伝わらなければ採用されない」ということです。技術の良さだけを語るのではなく、相手が抱えている課題を理解し、それを解決する手段として製品を提案することの大切さに気付きました。
先進的な製品だけになかなか売れない時期もありましたが、それでも諦めずにお客様にとっての価値を伝え続けたことで少しずつ信頼を得ることができ、「あなたから買いたい」と言ってもらえたときは、本当に嬉しかったですね。印象に残っているのは、ある製造業のお客様が「最初は必要ないと思ったが、説明を聞いて導入を決めた。今では必要不可欠な存在だ」と言ってくれたことです。経営を担う立場になった今でも当時の経験が活きていると感じています。
◾️事業を通じて〝よりよい社会〟をつくる
オムロンは創業以来、事業を通じて社会課題を解決することで社会の発展に貢献し、成長してきました。その発展の原動力が、会社の憲法である社憲「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」です。社憲には、世に先駆けてイノベーションを創出し、よりよい社会を実現するという想いが込められています。オムロンは、これまでオートメーション(自動化)技術を軸に、世界初、日本初の製品を多数生み出してきました。
たとえば、皆さんが駅で使う自動改札機です。通勤ラッシュ時の混雑緩和を目的に、現在、普及している自動化システムをオムロンが世界で初めて開発しました。また、健康分野では1970年代の経済成長とともに「成人病」が社会問題になっていたため、予防ニーズを先読みし、自動化技術を搭載した血圧計を製品として開発するだけでなく、「家庭で血圧を測る文化」を作り、健康寿命を延ばすことに貢献してきました。
なお、オムロンというとヘルスケアのイメージが強いかもしれませんが、オムロンの主力事業は、工場のオートメーションに貢献する制御機器事業です。売り上げの半分を占めています。直近では、モノづくりだけでなく、モノにデータ活用や人材育成ソリューションなどサービスを組み合わせて、世の中の社会的課題の解決に取り組んでいます。
オムロンは、2030年までに「カーボンニュートラルの実現」「デジタル化社会の実現」「健康寿命の延伸」という3つの社会的課題を解決し、よりよい未来をつくることを宣言しています。これからもコア技術※を進化させ、事業を通じてよりよい社会をつくってまいります。
◾️現場の声を経営に活かす
私はこれまでの営業経験から、社長になってからも現場の声を大切にすることを心掛けています。単なる一方通行のメッセージ発信ではなく、社員の意見を反映する場をオンラインやリアルで設け、対話を重視しているのです。現場の社員が何を考え、どのような課題かを深く理解することが、経営判断において重要な鍵になると考えています。
また、イノベーションの創出を担う部門を設置し、意志のある人財が社内外から集まって、新規事業などに取り組むことができる仕組みを作っています。人事制度を活用し事業部門から参画した人財は、事業創造を経験して成長したあと元の部門へ戻って活躍することで、社内を活性化することができます。これからも会社の方向性と、社員たちの「これを実現したい!」という熱意やチャレンジを大事にして、オムロンはイノベーションを起こし続けます。
大学時代は多くの経験を積んでほしいと思います。勉強ももちろん大切ですが、さまざまなことに挑戦することで視野が広がります。社会に出ると、何が正解かわからない場面が多くなります。そんなときに大切なのは「チャレンジする気持ち」です。たとえ小さなことでも一歩踏み出して挑戦することが、成長につながります。いろいろなことに挑戦し、自分の可能性を広げていってください。
※オムロンが誇る全社共通のコア技術。"Sensing" 技術、"Control" 技術、そしてAIなど人の知恵や知見を機械に取り込む"+Think" の技術をコア技術に据えて、それぞれを連携させながら独自技術として進化させ、製品やサービスの形で社会実装してきました。
学生新聞2025年4月発刊号 日本大学4年 鈴木準希

日本大学4年 鈴木準希/青山学院大学 1年 桑山葵/上智大学 3 年 白坂日葵/城西国際大学 1年 渡部優理絵/上智大学 1年 張芸那/立教大学 4 年 須藤覚斗
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