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秩父市長 清野和彦

個性ある地域の力を活かして、「わかちあい」の秩父を創る

秩父市長 清野和彦(きよのかずひこ)

■プロフィール
秩父市の第四代市長。二児の父で、料理と音楽鑑賞、神社仏閣巡りを趣味とする。高校時代はラグビー部に所属、早稲田大学政治経済学部を卒業。政治理念は「地域の個性を活かして、わかちあいの秩父をつくる」。人口減少を背景に、住民の力を引き出し対話を通じて課題解決を図る。地域の医療・教育・産業の活性化を念頭に、透明性の高い行政運営を目指す。

都心から特急で約80分の好立地でありながら、豊かな自然と文化に恵まれたまち・秩父市。そんな秩父市では今年の4月に市長選が行われたが、市制施行以来最年少の41歳で当選したのが、清野和彦市長だ。今回は、そんな清野市長に秩父市の魅力や人口減少対策への取り組み、さらに今後の展望などについて伺った。

実は元々は政治や公務員への関心はあまりなかったんです。学生時代は、早稲田大学の政治経済学部で行政学のゼミに所属していましたが、私が特に関心を持っていたのが、森林政策です。学生時代には、ケニアに半年間インターンシップに行き、貧困問題と環境保全の両立をテーマに研究していました。そこで気が付いたのが、アフリカの貧困の構造と日本の都市と地方の関係には似たものがあるということです。アフリカではヨーロッパに人材がどんどん流出していて、それによって自分たちの生活を良くする自己決定力が減っているという現状があります。これは日本も同じです。全体的には改善傾向にはあるものの、都市集中型の社会なので、秩父のような地方から若者が都市部に流出することで、地域の活力が減っています。そんな風にアフリカで気づいたことが、私の今の色々な活動の原点になっています。

■市議、そして市長に

大学卒業後は、森林保全のための自然保護団体で調査研究員として働きました。水源地をみんなでお金を出し合って買い取る「トラスト」や、森林保全や林業を活性化するための法整備に関わるためのロビー活動も行いました。そして、それが政治との最初の関わりにもなりました。そうした活動を続けていたのですが、東日本大震災が起きて日本の森林を巡る状況は大きく変わりました。同時に自分の中でも色々と変化が起き、仕事を辞めて東日本大震災の復興支援団体で専従職員として働くことを決めました。復興の現場を見ていく中で、まちづくりの必要性や地域の政策の重要性を感じ、一念発起して秩父に戻り、市議会議員選挙に出馬しました。30歳で市議会議員になって、3期11年間市議会議員を務めました。市議会議員として活動していく中で、改めて地域の魅力を感じ、「この魅力を活かすことが出来ればもっと秩父は良くなる」と思い、市長選に挑戦することを決めたのです。

■「わかちあい」によって生まれた街

今の秩父市は平成17年に1市1町2村が合併して生まれた自治体なので、それぞれの地域が実は異なる成り立ちを持っています。さらに時代を遡ると昭和の大合併というものがあって、その頃には今の秩父市がある地域だけで、10を超える町や村がありました。ですから、よく見てみると、地域ごとにお祭りも産業も成り立ちも異なります。ただその中で総じて言えるのは、この地域は強い権力者が作ったまちではなくて、人々が自分たちの持っているものを出し合って作ってきたまちということです。私はこれを「わかちあい」という言葉で表現しています。その証として秩父には地域全体で年間300ものお祭りが残っていますが、これは支え合いのコミュニティが生きている証拠です。私もまちづくりにおいて「個性ある地域の力を活かして、わかちあいの秩父を創る」という理念を掲げています。今後も、秩父地域の持っている特色を活かしつつ、より細かいエリアの方々が持っている力を活かしていきたいと考えています。

■地域の中で特色ある教育を

地方の人口減少が日本全体で大きな問題になっていますが、秩父市でも様々な取り組みを行っています。学校給食費の無償化などの取り組みに加え、より細かくみなさんのニーズに応えるために、市役所内に若手職員を中心とした「まちづくり研究チーム」を設立して、子どもの遊び場と育児休業の取りやすい環境づくりという2つのテーマで若手職員と一緒に喧々諤々と議論しています。また、教育にも大きな課題があると考えています。秩父地域では小学校に通う児童の数が減っているという問題もあるのですが、併せて地域の高校に進学をする人が少なくなってきています。もちろん外に出ていくのは自由なのですが、地域の方々が通いたくなるような、もっと特色のある教育を作っていく必要があると感じました。高校は都道府県が設置しているので今まで秩父市はあまり関与をしていなかったのですが、高校を魅力化するため、地域おこし協力隊を配置し、教育コーディネートのようなことを始めています。さらに若者支援という観点から、私が市長に就任してから「若者活躍担当」という部署を新設し、若い方々が意見を言いやすいような状況を作り、それを政策に反映させられるような組織編成も行っています。

■広域行政の推進と荒川流域圏構想

今後の展望として、私は広域行政の推進と荒川流域圏構想の2つを大きなビジョンとして掲げています。秩父地域のような人口が減少しているところでは、1つの市や町で行うと非効率な事業があります。秩父地域の1市4町で連携をすることで、効率的な事業運営や公共施設の再編を目指しています。また、荒川流域圏構想では、秩父地域が荒川の水源地となっていることから、その流域の自治体と経済政策・人口政策・安全保障政策を連携して進めていこうと考えています。さらに、国からドローン航路の起点に選ばれているので、ドローン物流の発展にも乗り遅れないようにしたいと考えています。観光については現在の年間観光客数が500万人台ですが、インバウンド需要も取り込んでそれを10年以内に2倍にすることを目標にしています。

■大学生へのメッセージ

大学生には時間があって、やりたいことができる環境があります。ですから色々なことにチャレンジして欲しいですし、それはきっと将来何かの役に立つと思います。特に留学はいいですよね。どんな国にどんな課題で行ったとしても、必ずいい経験になるのではないでしょうか。

学生新聞オンライ2025年9月19日取材 法政大学3年 島田尚和

法政大学3年 島田尚和/情報経営イノベーション専門職大学2年  山田千遥/城西国際大学2年 渡部優理絵

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