調布市長 長友貴樹

アクセスの良さと豊かな緑で、落ち着いた暮らしを育むまちへ

調布市長 長友貴樹(ながともよしき)

■プロフィール
・昭和51年3月 慶應義塾大学法学部政治学科卒業
・昭和51年4月 日本貿易振興会(JETRO)就職
        通算9年間にわたりフランス及びベルギーに留学、勤務で滞在
・平成3年9月から平成6年3月 中央大学非常勤講師(国際関係論)
・平成14年4月 日本貿易振興会(JETRO)退職
・平成14年7月 調布市長就任
・平成29年5月 東京都市長会会長就任(任期は平成31年4月まで)
・令和元年5月 東京都市長会顧問就任
・令和4年7月  調布市長(6期目)

東京23区に隣接する高いアクセス性に加え、多摩川や深大寺に象徴される武蔵野の自然が今なお息づく東京都調布市。積極的な教育政策や、映画・スポーツ文化が根付くまちとしても知られている。
この調布市で市政を担い、まちの舵取り役を務めているのが、市長の長友貴樹さんだ。
市制施行70周年という節目を迎えた今、調布の歩みとこれからの展望について話を聞いた。

学生時代から政治に関心があり、弁論部で活動していましたが、どちらかといえば自分の時間を大切にする、ごく一般的な学生だったと思います。卒業後の進路を考える際も、最初から政治家を志していたわけではありません。まず就職したのが、政府系機関である日本貿易振興機構(ジェトロ)でした。
民間企業を選ばなかった理由は、世の中をどう動かしていくかを考える仕事に携わりたかったからです。一企業の利益を追求するよりも、公的な立場で社会全体に関わる仕事のほうが、自分の志向に合っていると感じました。ジェトロでは、貿易や投資を通じて、日本企業と海外企業の連携を促進する業務に携わってきました。
フランスへの2年間の留学をきっかけに欧州との関わりが深まり、その後も2度の駐在を経て、合計9年間を欧州で過ごしました。企業活動を支援する立場として働く一方で、ベルリンの壁崩壊など、世界が大きく動く瞬間にも立ち会いました。そうした経験を通じて、国際情勢の変化を肌で感じる感覚が養われ、日本の未来についても自然と考えるようになっていったのです。
ある時、ご縁があり衆議院選挙への立候補の話をいただきましたが、当時はまだ客観的な条件が整っていないと判断し、そのお話は辞退しました。
ところがその後、予期せぬ形で調布市長選挙への出馬要請がありました。決して簡単な挑戦ではありませんでしたが、「10年後に後悔だけはしたくない」と考え、覚悟を決めて立候補しました。結果として僅差で当選し、以来、調布市長として市政に携わっています。

■よりよい教育環境を目指して

東京都は一昔前まで、教育や子育ての面で厳しい状況に置かれていました。その象徴が保育園の待機児童問題です。調布市も例外ではなく、かつては300人を超える待機児童を抱えていた時代がありました。こうした状況では、教育サービスの質を語る以前に、まず子どもたちの居場所を確保しなければなりません。
そこで大きな予算を投じ、保育施設の拡充を進めました。その結果、現在では待機児童はほぼゼロにまで減少しています。今は、落ち着いた環境の中で、より質の高いサービスを提供する段階へと移行しています。
当初は公立中心で進めてきましたが、近年は私立の事業者も増え、それぞれの強みを生かしながら協力し合う体制が整いつつあります。
一方で、子どもたちが成長するにつれ、今度は学童クラブの需要が逼迫してきました。孤立する子どもを生まないためにも、定員を少しでも増やせるよう、民間団体や企業との連携を進めています。調布市では、23区に隣接した利便性をいかしながらも自然に恵まれた環境の中で、子どもたちを育めるまちであり続けたいと考えています。

■調布というまちの個性と発信

調布市の大きな魅力の一つは、先程も述べたとおり、23区に隣接しながら、豊かな自然が残されている点です。都心のターミナルから20分ほどでアクセスできる、いわば“都市の憩いの場”のような存在だと感じています。
また、「映画のまち」「水木漫画のまち」、味の素スタジアムを中心とした「スポーツのまち」など、エンターテインメントの歴史も積み重ねてきました。これらはあくまで運がよかったと言えますが、こうした個性を生かし、調布というまちを知ってもらうきっかけとして、市内外に向けて明るく発信することを意識しています。
2025年4月1日には市制施行70周年を迎え、さまざまな記念事業を実施しました。なかでも印象的だったのは、記念式典の約1週間前に、調布市が15分拡大版でテレビ番組に取り上げられたことです。さらに、調布市を特集した『地球の歩き方』も刊行されました。こうした機会は簡単に得られるものではありません。節目の年に、調布の魅力を広く発信できたことは、非常に幸運だったと感じています。

■これからの調布市へ

この70年間、多くの方々に支えられ、70年前には想像もできなかった発展を遂げてきました。長年取り組んできた調布駅前広場の整備も、20年以上の歳月を経て、いよいよ完成を迎えます。調布にとって、まさに「第2のスタート」と言える局面です。このまちづくりの意味を、行政としてもしっかりと認識し、市民の皆さんと共有していきたいと考えています。広場を整備して終わりではなく、人を惹きつけるイベントを重ね、活用していくことが重要です。
今後、日本全体で人口は不可逆的に減少していきます。人の数が増えない中で、調布市では「落ち着いて住み続けられる中身」をどう充実させるかが問われます。これまでハード面の整備を進めてきましたが、これからは福祉、教育・子育て、環境といったソフト面の充実がより重要になります。その準備はすでに進めており、来年度以降、段階的に市民の皆さんへお伝えしていく予定です。

■学生に向けたメッセージ

一言で言えば、「一生懸命でいてほしい」ということです。勉強でも、スポーツでも、何でも構いません。ただ、思うように力が出なかったり、虚しさを感じたりする時期もあるでしょう。そんな時は「一生懸命、虚しがれ」と伝えたい。誰もが社会に出るとき、良いスタートを切りたいと思いますが、常に目標を持ち続けるのは簡単ではありません。大学生活の4年間で「やりがいが見つからない」と感じたなら、全力で悩み、全力で虚しさと向き合ってください。そして、何か一つでいいので、専心できるものを見つけてほしい。それが一見、虚無的に思えることであっても構いません。自分のエネルギーを注ぎ込めば、必ず何かが見えてくるはずです。

学生新聞オンライン2026年1月9日取材 武蔵野美術大学1年 石井生成

京都芸術大学1年 猪本玲菜/情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥/武蔵野美術大学1年 石井生成

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