株式会社日能研関東 代表取締役社長 小嶋 隆
空想、創造、妄想力を鍛えよう! 便利な時代の大切な能力
株式会社日能研関東 代表取締役社長
小嶋 隆(こじま たかし)
1968年横浜市生まれ。中学・高校・大学を成城学園に学ぶ。大学卒業後、富士銀行勤務を経て㈱日能研関東取締役副社長に就任。株式会社三和総合研究所に出向し、コンサルティング業務を担当。2006年6月㈱日能研関東代表取締役社長に就任、現在に至る。その後㈱ガウディア・私立学校奨学支援保険サービス㈱・㈱私学妙案研究所を設立し、いずれも代表を務める。
父親が創業した会社にあえて入らず、他社に就職。自分の好きではない分野に挑戦し、その間、培ったアイデアを持ち帰り、本業に活かすことを考える。教育においてはAI化による受験指導を憂い、生徒と教師のつながりを大切にする人間力による教育を説く、小嶋社長の夢と喜びとは――。
学生時代は、バイトと部活のゴルフに明け暮れていました。ちょうど世の中がバブルの時代だったので、羽振りがよかったですね。キャディーをやるだけで結構なアルバイト代がもらえて、そのまま練習もできて、更にゴルフ券までもらえたんです。いい時代を生きましたね。
「好きじゃない方」を選択し、発見を得る
日能研は父が創業した会社ですが、私はファーストキャリアには選びませんでした。もっとも、いつかは戻れると思っていたので、自分のキャラじゃない分野、好きじゃないものに挑戦してみようと思い、銀行に就職しました。8年ほど銀行・総研など金融機関にいて、いろんな業種の話を聞くことで、日能研という会社が、実にいい資産を持っていることに気がつきました。「やる・やらない」「できる・できない」はさておき、物事を考えることが好きで、日能研でこんなことができるのではないか? と日々アイデアを書き留めていました。それで、時期を見て、父に戻りたいと伝えて日能研に戻らせてもらったのです。
私は、最初から日能研へ就職していたら、新しい発見はなかったと思います。たとえば、サークルの飲み会でも、普段あまり接点がない人と話
すようにします。好きなものにはいつでもすぐに戻れるから、あえて好きじゃないものを選ぶという発想を大事にしています。
休日はゴルフや筋トレをしていることが多いのですが、その他にも、いわゆる「流行のもの」を体験することも多いです。食べ物、映画、本、
アプリ、ライブ、観光スポットなど。世の中で流行っているということは、そこに何かしらの理由があるわけです。そのヒットの秘訣を見つけ出
し、「自分が応用するならこうかな」なんて考えたりする。これって、ビジネス上、そして生きていく上でも大事なことだと思っています。
何より、楽しいですしね。私は、考えることが大好きなんですよ。こんな風に(ネタ帳を出しながら)、面白いと感じたことをメモしたり、写真を撮ったり、スクラップしたりして、その脇に「日能研でこうやって応用できる」ってメモを残しているんです。
日能研の特色は、「中学受験しかやっていない」という点です。中学・高校・大学受験の全てに進出する塾が多い中で、我々はこれまで中学受験
しかやってきませんでした。今後もやるつもりはありません。
他社は、万が一生徒が中学受験に失敗しても、高校受験・大学受験コースで教え続けることができるのですが、弊社にはそれができません。
中学受験一発勝負。そういう意味では、ビジネス的には大きなリスクをとっているのかもしれません。しかし、裏を返せば、それくらいの覚悟で
やっているということです。
ではなぜ、そのような決断をしているのか。それは、リソースを分散させたくないからです。いろいろ展開してしまうと、中途半端になる箇所が出てきてしまう。だからこそ、いつまでもシンプルでいたいと思います。
仕事でも何でも、「何をしないか」を決めることが大切だと思います。その方が楽になります。
中学受験塾のAI化は成功しない
子どもたちが喜んでくれた瞬間、それこそが私たちの生きがいです。大きいことだと「行きたかった中学校に合格した!」とか、小さいことだと「難しい問題が解けた!」とか。そういう喜びって、生徒と面と向かって授業をしていなければ生まれないと思うんですよ。特に小学生などは、面と向かって授業して、時には頭を撫でて、大げさにでもほめてやる──。
そうやって授業をしないとダメだと思うんです。そういう意味で言うと、他の年齢・分野の教育はどうか分かりませんが、中学受験塾はAIに取って代わられることはないんじゃないかな。だって、生徒と教師とのつながりが命の業界ですから。
* message *
空想、想像、妄想。この3つのことを特に意識してほしい。便利な時代だからこそ、こういう能力が大切になってくると思うんです。空想、想像、妄想をして考える習慣がある人は、きっと仕事もできるし、人気者になれ
ると思います。人間の考える力というのは凄いものなんですよ!
学生新聞2019年10月31日号より(慶應義塾大学4年 小川淑生)
この記事へのコメントはありません。