日本ロレアル株式会社 代表取締役社長 ジャン- ピエール・シャリトン

豊富なデータを駆使し、輝ける日本を創る

日本ロレアル株式会社 代表取締役社長 ジャン- ピエール・シャリトン

■プロフィール
1966年、フランス・パリ出身。1989年、フランスEMリヨン経営大学院卒業。1991年、仏・ロレアル本社に入社。その後、各国ロレアルリュクス事業本部長を経て、2008年、ロレアルリュクス事業本部「ジョルジオアルマーニ ビューティ」のグローバルプレジデントに就任。
2013年、ロレアルアジア太平洋地域(APAC)のロレアルリュクス事業本部ゼネラルマネージャーに就任。2021年11月より現職。

18のブランドを通じて化粧品を提供する日本ロレアル。革新的なマーケティングと豊富なデータを駆使し、日本市場に影響を与え続けている。美の追求とともに、サステナビリティや多様性への取り組み、今後の展開などジャン‐ピエール・シャリントン社長にお話を伺った。

学生のころはフランスでビジネススクールに通い、理論に基づく実践的な仕事の仕方を身に付けました。またフランスではジュニア・エンタープライズという制度の下で、小規模事業者にコンサルティングをして、学校で学んだ理論を実践で試すことができるのです。同時にお金も得ることができ、その資金を旅行に注ぎ込んでいました。アメリカやヨーロッパでのロードトリップや、世界各地を巡る旅を通して異文化や多様性に触れることで、人生観を深めることができました。

■ロレアルに魅力を感じて就職

ロレアルに就職した理由は3つあります。1つ目は、ロレアルはマーケティングが強い会社として有名だったからです。もともと学校でマーケティングを学んでいた私は、データを使ったマーケティングや広告戦略を考えたいと思っていたからです。2つ目は、ロレアルのようなグローバルな会社に就職して、国際的にキャリアを積みたいと思っていました。3つ目は、ロレアルは起業家精神が強く、若い人にも権限移譲をして責任を持たせてくれる会社だからです。実際に私は27歳でこの会社に入りましたが、入社まもなくインドネシアで200人の従業員の管理・指導と損益の管理を任されました。
これまでに日本を含めて8カ国、アジアではもう20年ほど働いていますが、周りの国から見て日本で仕事をするのはまさに夢のような出来事です。日本は清潔で秩序が守られ、非常に洗練された国です。
実際に日本に来て感じたのは、想像以上に素晴らしい国だということでした。イノベーション、美への追求、そして流通の良さ、日本人特有の謙虚さも強みとしてもっと活かしていくべきだと思っています。これは日本ロレアルで「Make Japan Shine」というモットーを掲げている理由にもつながりますが、個人的に私が叶えたい願望でもあります。

■日本はアジアの重要拠点

日本はロレアルにとって非常に特別な国です。日本には工場や200人を抱える研究開発センター、そしてシュウウエムラとタカミという世界的に有名なブランドもあります。実は、ビジネスとブランド本部、工場、そして研究所と全てを兼ね備えた国は世界でアメリカ、フランス、中国、日本しかないのです。日本はイノベーティブな国なので、美的感覚にも優れています。また強固なエコシステムがあり、何より意識の高い消費者が非常に多いと考えられます。
実際、日本の市場規模は世界第3位であり、一人当たりの売上は第1位と、とても大きなマーケットです。さらに日本での売上の50パーセントがスキンケア商品であり、ヨーロッパと違ってスキンケアが進んでいることも特徴です。アジアではスキンケアは特に重要視され、また艶のある髪としてヘアケアにも注力しています。肌を上質に保ち、たるみやシワに適切な対応をし、どの国よりもスキンケアへの意識が高いように見えます。
2021年にスキンケアブランドのタカミを買収しましたが、現在は当時の4倍ほどに事業規模が拡大しています。
売上が上がった理由は、豊富な資金力によりメディアへの投資がしやすくなったことです。タカミの商品はポテンシャルが高く、投資をする価値があると確信していました。
そしてロレアルからタカミへ多くの優秀な人材を送ることで、より良い事業運営ができるようになったのです。さらにタカミの商品を中国やシンガポールなどのアジア各地でも販売できるようにしたことも大きな要因ですね。タカミを傘下に入れたことで、日本のブランドはまだまだ成長できる、海外でも成功できるということを実感しました。またタカミの売上の90パーセント強がオンラインでの販売であり、これまでとは違ったやり方を学べたと思います。

■データを活用して美を創造する

ロレアルにはさまざまなブランドがありますが、それぞれのブランドイメージを作り上げることが重要です。各ブランドのマーケティング部署が適切なインフルエンサーや販路を確保して、ブランドをどう見せていくのかを考えています。たとえば、タカミは日本発のブランドですから、似ている肌質を持った日本人のモデルがふさわしいですよね。そのような消費者のニーズに応えられるだけのデータを持っているのが、ロレアルの強みでもあります。多くのデータを活用することで、それぞれの地域の方のニーズに応えられる商品を開発することができます。
日本ロレアルは、「世界をつき動かす美を創造する」というグループ目標に共感した社員で溢れています。自分たちが熱意を持って仕事をすることで、美の追求だけでなく、サステナビリティやダイバーシティなど世界に影響を与える企業の一員としての意識にもつながると考えています。だからこそ野心的で成長意欲が高く、ワールドワイドに活躍できる人たちと仕事をしたいと思っています。

■message

妥協せずに情熱を持てるものに突き進むこと。これができれば成長につながり、幸せに満ちた成功した人生を送れるでしょう。

学生新聞2024年10月号 国際基督教大学2年 若生真衣

国際基督教大学2 年 渡邊和花/津田塾大学2 年 石松果林/東洋大学2 年 越山凛乃/上智大学3年 網江ひなた/国際基督教大学2年 若生真衣/明治大学大学院2年 酒井躍/立教大学4年 須藤覚斗/武蔵野大学4年 西山流生/東洋大学3年/橋本千咲

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