縁petit株式会社 代表取締役社長 丸尾聖

「仕事をするのではなく、楽しいことをする」

縁petit株式会社 代表取締役社長 丸尾聖(まるおきよし)

■プロフィール
辻学園調理技術専門学校卒業後、同校で勤務を経て独立。現場で培った店舗経営ノウハウが評価され、多くの飲食店を再生。その経験から「美味しい≠売れる」の重要性に気づき、2017年に縁petit株式会社を設立しマーケティング特化型の飲食店を運営。2020年には革新的なFCビジネスを展開する01ヌードルJAPANを設立し、12店舗を展開中。2022年には財務支援を行うToSee株式会社も設立し、事業拡大を図る。

 フランス料理とラーメンを組み合わせた「フレンチラーメン」を展開する縁petit(エンプティ)株式会社。学生時代にフレンチ料理を学んだ経験を生かしながら、女性が訪れやすい空間作りにも注力している。同社代表の丸尾聖社長は、カレーバーや餃子店も経営経験がありながら、なぜラーメンを選択したのか。イベントやフェスで売上No.1店舗になるまでの道のりを伺った。

◾️調理師を目指した学生時代

高校時代はアルバイトに明け暮れる日々を送っていました。キャディや新聞配達、神社、ピザ屋など、とにかくたくさん経験しましたね。飽き性なので、仕事を覚えるまでが楽しくて、ある程度覚えてしまったら次のアルバイトを探していました。高校卒業後は、大阪の辻学園調理技術専門学校へ入学。苦手な学業では追いつけないと考え、同時にスタートして一流になれる分野を探したところ、行き着いたのが調理師だったんです。専門学校でフレンチの世界を学んだこともあり、この時、洋食の道に進んで30歳で独立することを決意しました。調理師という世界の真新しさと、「こんな料理を作れたら最高だな」というワクワクで満たされた1年間でしたね。そのまま同じ学校に就職し、講師として教えていました。ただ、この頃はもっと料理漬けになって学びたかった。講師を辞めたタイミングで上京し、食べ歩きで見つけたフランス料理店に就職を希望しましたがタイミングが合わず、ショットバーで働くことにしました。

◾️何をするかよりも誰とするか

お酒を学ぶために勤めたショットバーは、キャッチでお客さんを捕まえ、自分で売上を稼ぐシステム。自分の名前の伝票の数が勝負なので、人一倍声をかけ、2ヶ月目にして店内で売上1位、3ヶ月目にはグループで1位を達成しました。その後、縁あって赤字店舗を任されることになったんです。毎月赤字店舗をもらい、7店舗黒字化しました。経営の勉強をしたことはなくて、とにかくやってみて答え合わせをするという感じ。ただ、10年先も同じように働ける未来が見えなかったので、株式会社Ambienteを設立しました。阪急電鉄が所有していた7坪のテナントでカレーバーを始めたんです。業績は好調でしたが、カレーバーでは100店舗展開するのは厳しいと知り、餃子店の設立に至ります。居酒屋は「人につく」業態です。つまり、商品や接客、空間があるとしたら、一般大衆に最も大事にされるのは接客なんですね。ただ、接客に依存してしまうと、店舗ごとに接客の差が生まれてしまう。そこで、私は「何をするか」よりも「誰とするか」の方が価値が高いと思ったんです。そのため、現在、縁petitの社員も全員自分でヘッドハンティングして働いてもらっている人ばかりです。

◾️女性を虜にしたフレンチラーメン

飲食店を経営するからには100店舗以上展開したいと思い、マーケットの大きいラーメンを選択しました。外国人観光客がおすすめする日本食の1位2位を争うのが、ラーメン。世界からみたら、ラーメンは日本食になるそうです。最も入れ替わりの激しい業界で、年間約40%が廃業してしまう世界ですが、当時女性の顧客は全体の2割しか取れていませんでした。「脱サラ」でラーメンを立ち上げる話はよく聞きますが、フレンチラーメンは参入障壁が低い。そこで、専門学校時代から仲が良く、フレンチレストランを経営している友人を呼び、フランス料理とラーメンを組み合わせた「フレンチラーメン」を開発しました。日本食といえば魚介だと思ったので、特に廃棄部分をスープやパウダーにできる鯛を選び、2017年にできたのが「鯛塩そば 縁」です。その後は、長期的にビジネスを続けられるように、実験的に店舗を出してはデータを集めてブラッシュアップしました。現在、客層の6割が女性です。もっと気軽にフレンチを楽しめるように、日本一安いフレンチを作りました。

◾️ラーメンビジネスを世界へ

これからは、先進国に縁petitが築いた仕組みを届けることが目標です。ラーメンを使ったビジネスで市場が潤ってほしい。そのためには、社員全員が優秀なメンバーでなければなりません。サラリーマンマインドではなく、経営者マインドである必要があります。先ほどもお伝えしましたが、縁petitの社員は、学生時代の同級生や元お客さん、元営業マンなど全員私のヘッドハンティングです。相手にとって利益になるように交渉して、引き連れてきました(笑)。みんな性格の良い人たちばかりで、「仕事ができる」というよりも人間味があって伸び代がある人たちです。そして、いつか労働が厳しくなって来た時に、労働対価ではなく知識や体験を生かした知識対価の働き方が求められていると思います。「仲間と自由に働きたい」という目標を達成するためには、この仕組みが必要です。1人1人が経営者として自分でビジネスをできるように育てたいと思っています。優秀なメンバーたちが縁petitで確立したラーメンのビジネスを世界に展開してほしいです。

◾️大学生へのメッセージ

「努力は必ず報われる」という言葉は半分間違いだと思っています。なぜなら、適切な目標と正しい努力が必要だからです。やみくもな努力は報われないこともあります。人間は1日のうちにも約5000回の決断をしていると言われていますから、夢や目標は何回変わっても問題はありません。ただ、その中でブレない芯を見つけられたら、それが本質です。人間は少なからず適材適所があるので、自分が楽しいと思うことを見つけられたら勝ちです。私が天才だと思う人はみな、とにかく好きなことを仕事にして楽しんでいます。特に何も頑張っていないんです。ただ、自分にとって楽しいことをしているだけ。その領域に達することができたのであれば、どんな天才にも勝てる、はっきり言って無敵です。

学生新聞オンライン2024年10月25日取材 上智大学3年 白坂日葵

上智大学3年 白坂日葵 / 東洋大学2年 越山凛乃

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