動物作家・昆虫研究家 篠原かをり

知識はシェアしてはじめて真価が分かるもの

動物作家・昆虫研究家 篠原かをり(しのはらかをり)

■プロフィール
幼少の頃より生き物をこよなく愛し、様々な生き物の飼育経験がある。
これまでに『恋する昆虫図鑑~ムシとヒトの恋愛戦略~』(文藝春秋)の出版をはじめ、『昆虫最強王図鑑』(Gakken)など図鑑監修も行っている。
TBS「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、NTV「嗚呼!!みんなの動物園」動物調査員など、タレントとしても活動中。

幼いころから昆虫を愛し、これまでにタランチュラをはじめとした様々な生き物の飼育経験がある篠原かをりさん。高校生クイズをきっかけにメディアへの露出も増え、今回『雑学×雑談 勝負クイズ100』を出版するに至った。そんな篠原さんの日々大切にしている想いや著書の魅力、見どころなどを伺った。

■とにかく色んなことを経験したかった学生時代

生物系の研究がしたかったのですが、数学が絶望的にできなかったのでAO入試で受験できて、かつ必修に数学がない大学はないかと探したところ、慶応義塾大学の環境情報学部を選びました。もともとは人の暮らしと繋がりの深い「かいこ」の勉強をするために入学しましたが、その研究で着目していた物質が使用できないことが判明したため、急遽昆虫食の研究にシフトしました。
当時は、自分に適性があることもないことも、とにかくなんでもやってみたいタイプだったので、研究以外にもバイトはたくさん掛け持ちしていました。世界を大きいキッザニアだと思いながら、色々な職種を少しずつ経験するのが好きでしたね。週に8個、多いときには1日に3つバイトをはしごすることもありました。その中でも特に塾講師は長く続いていて、現在も趣味として続けている仕事の1つです。

■高校生クイズをきっかけに広がった世界

テレビに出演したのは『高校生クイズ』が最初で、その後はクイズ番組中心に活動していました。大学2年生のときに出版甲子園という学生のコンペイベントでグランプリを取り、翌年書籍を出して以来、昆虫関係のお仕事もいただけるようになりました。自分で請求書を出すような手続きが本当に苦手で、請求書の送付忘れなど意図せずに誰かに迷惑をかけることが怖かったので、それらの仕事を全てやってくれる今の事務所に大学4年生のときに所属しました。スタジオ収録に参加したり、番組のロケで海外に行ったりしているうちに気が付いたらタレントの仕事が本業になっていました。
けれど、現在も日本大学の大学院で研究は続けていて、力を入れる比重は変えながらも、お仕事と学業を同時並行で進めています。

■目標は決めずに、目の前のことに集中する

両立する上で大切にしていることは「いつまでにこうなりたい」という目標を決めないことです。人は追いつめられることが一番しんどいと思います。人と歩むスピードを比べず、目標を定めることに固執せずに目の前にあることだけをこなしていくことが両立を続ける秘訣ではないでしょうか。
目標を決めないことはその他にも利点があると思っています。思い込みで道を1つに決めてしまうと自分が想像した自分の一番上までしか行けないと思います。「何になりたい」とは強く決めず、色々なことに挑戦することで、自然とできることに導かれ、想像以上の結果に繋がることもあります。
私自身、タレントに適性があるとは一瞬たりとも思ったことはなかったのですが、自分で可能性を狭めなかったために今の活動ができているのだと思います。とはいえ、二足のわらじを履いていると、研究の方がおろそかになってしまうことが多くて、それがずっと宿題を出していない感覚に思えてつらくなることもあります。
毎日少しずつ研究できるタイプではなくて、スイッチが入ると一気に研究するタイプなので、自分がどういう状況だったら一番集中できるのかを把握することは日々心がけています。

『雑学×雑談 勝負クイズ100』について

大学時代のクイズ研究会で出会った夫との共著という形で、昔からお世話になっている編集者の方から企画をいただいて出版することになりました。
内容としては会話の種になるような所謂「ゆるいクイズ」がテーマになっています。答え自体は一個でもそこから広がる話がたくさんあるので、色んな場所で色んな人と話してほしいと思って作りました。
100個のクイズは知識量としては少ないと思うのですが、知識を得るよりはこの本を通してどのように話が膨らんで、どんな感想をシェアできるかがの方が大切だと思っています。
私は人見知りで内向的な性格だったので、幼いころは昆虫の知識をいくら貯めても「自分の話なんて誰も興味ない」と思って伝えることを諦めていました。しかし、実際に話してみると、色々な人が興味を持ってくれたり、思ってもいなかった感想を得られたりと、知識はシェアして初めて真価が分かるものだと身をもって体験しました。そのためこの本では知識をシェアする魅力を伝えられたらいいなと思っています。

■みんなにもっと虫の魅力を伝えたい

都市化が進むと虫や動物に苦手意識をもちやすい環境になります。けれど、同じ地球に住む、同じかけがえのない存在であるし、好きになることで毎日はもっと楽しくなります。是非その楽しさを知ってほしい、そんな想いを持って、研究やタレント活動に取り組んでいます。
また、今までは誰かが研究したものを自分なりに解釈して本にすることが多かったのですが、今度は自分自身が研究した内容を本にしたいとも思っています。いずれは大学の非常勤講師としても働いてみたいですね。

■大学生へのメッセージ

ちょっとでも興味を思ったらなんでもやってみてほしいです。やり遂げられないことを恥ずかしいと思わずに、好き放題つまみ食いして楽しく過ごしてください。
また、学生のうちに興味のある分野を調べつくすこともおすすめします。大学生までは合わないと思ったら簡単に辞められますが、社会に出たら辞めるハードルは格段に上がります。
ちょっとでもかじって、その世界のことを知っておくと、その経験が社会に出てからの決断に役立つと思います。

学生新聞オンライン2023年6月9日取材 日本大学4年 石田耕司

雑学×雑談 勝負クイズ100

家族団らん、飲み会、デート……トークのお供に! 会話のきっかけ作りに!
知的雑談力がアップする、とっておきのクイズ100問!

著者はYouTubeチャンネルの登録者数が200万人を超える東大発の知識集団QuizKnockメンバーの河村拓哉さんと『日立 世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターや『嗚呼!! みんなの動物園』の動物調査員などテレビ、ラジオでも人気の動物作家・篠原かをりさん。

クイズ本としても、対談本としても楽しめて、会話のタネになるさまざまなジャンルの雑学や、答えを推理するコツが身につく一冊です。

日本大学4年 石田耕司 / 学習院女子大学3年 小川莉実 /立教大学4年 須藤覚斗 / 中央大学2年 前田蓮峰

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。