映画『ナギダイアリー』公開記念舞台挨拶

第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にてワールドプレミアを経て、ついに9月25日(金)に日本公開を迎えた深田晃司監督最新作『ナギダイアリー』(新宿ピカデリー、ユーロスペース ほか全国公開中)。本作の公開を記念して、9月26日(土)に新宿ピカデリーにて公開記念舞台挨拶が開催されました。深田晃司監督、主演の松たか子さん、共演の石橋静河さん、松山ケンイチさん、川口和空さん、藤原聖さんら豪華キャスト一同が登壇しました。

◆本作は石橋さん演じる友梨が訪ねて来るところから始まりますが、以前共演経験がある松さんと石橋さんの関係性は、本作にも影響しているのでしょうか。

松たか子:出会いは舞台でご一緒したことでした。数か月間、お互いに分かち合って過ごした存在なので、良いときも悪いときも全部見られている人なんですよね。ただ、ここまで会話をする間の役柄は初めてで、今回ご一緒できることを楽しみにしていました。また、私が寄子という役をどうこうするというよりも、友梨から見て「素敵だな」とか、「こうなのかもしれない」という、人生のヒントになれれば良いと思っています。静河ちゃんの存在や目線というのは、私の役のヒントそのものになりましたし、出会ってからの安心感や信頼が、今回の関係にも生きたような気がしていて、楽しかったです。

◆寄子という人物は、日常的には大きく感情を表に出さないものの、作品を作る過程でため込んだものがパッと表出する瞬間がありますが、どのようなこと感じて演じられましたか。

松:個人的には、ちょっとヘラヘラしすぎたんじゃないかと思っています(笑)。寄子は「ずるい」と言われることもありますが、こういう人がナギという町にいてもいいのかなと思っていて。一つのコミュニティの中に、こんな人がそっと生きていてもいいのかな、ということを想像しながら演じていました。ナギの自然が全てを受け止めてくれるという中で、寄子という人が、たまたま彫刻する人で、木を触る人だった、粘土に触れる人だった、友梨という知り合いがいる──というように、「たまたまこういう人だった」という感覚で演じさせていただきました。

◆石橋さんは、松さんとの関係性をどのように感じられていましたか。

石橋静河:私は、松たか子さんが大好きすぎるんです(笑)。初めて舞台でご一緒したときは、私自身まだお芝居を始めたばかりで、目の前で松さんがお芝居されている姿に、ただ憧れていました。今回は義理の(元)姉妹ということで、怯んではいけないと思って撮影に臨みました。ただ、やっぱり松さんという大きな船に乗せてもらって、楽しい時間を過ごさせていただきました。

◆友梨に関してはいかがでしたか。

石橋:脚本を読み込むうちに、どんどん自分がリンクしていき、「自分自身も実はこういうふうに感じていたんだな」という発見がありました。私自身もちょうど、自分はこれからどうやって(役者として)生きていこうかと悩んでいた時期でもありました。そのタイミングで友梨というとても恵まれていて幸せなはずなのに、どこか足りていない、もどかしさを感じている女性に出会うことができ、自分の成長につながりました。そして友梨にとって、寄子という人は人生の先輩であり、姉妹でもある、とても大事な人です。私自身は松さんを間近で感じながら日々お芝居ができたことが、友梨と寄子の関係性とリンクしていた時間だったと思っています。

◆松山さんは東京と田舎の二拠点生活を送っていらっしゃいますが、ナギという土地で暮らしている好浩については、どのように感じましたか。

松山ケンイチ:好浩は役場勤めで、町の放送担当でもあります。僕も田舎でよく放送を聞く機会がありますが、聞き取りづらかったりするんですよね(笑)。なので、はっきり、ゆっくり、きれいな声を意識して演じました。また、撮影地である岡山県の奈義町で過ごす中で、人の考え方や生き方は、風景や建物に左右される部分があるのではないかと感じました。

◆川口さんと藤原さんは、ご自身の役柄について、どのようなことを感じられましたか。

川口和空:春樹を演じるにあたって、自分は春樹と圭太との区別をしたいと考えていました。その違いを考えたとき、圭太はナギに来てまだ五年なのに対し、春樹は以前からナギ町で暮らしている人間なんです。なので、ナギで育ってきた春樹だからこその雰囲気を出せたらと思い、実際に撮影地を散歩したりしながら情報収集をして、春樹と向き合っていました。

藤原聖:圭太は人見知りだけども、周りの気持ちや考えていることを誰よりも早く感じる、繊細な人間だと思っています。僕自身も圭太と似ているところがあり、圭太の気持ちはすごく汲み取りやすかったです。ただ、自分と圭太が混ざらないよう区別をつけた上で、彼の不安や覚悟を表現することを意識しながら演技をしました。

◆深田監督は、お二人の演技をどのように感じましたか。

深田:オーディションの際に、春樹と圭太のいろいろな場面を見させてもらったのですが、本当に良くて。自分の書いたシーンで泣きそうになったのは初めてで、そのくらいお二人のお芝居は良かったんです。脚本を書いて「映画を撮るぞ」となっても、もちろん不安になったり、「本当にできるのかな」と思ったりすることもある中で、この映画の完成を見たいと思ったのがお二人のオーディションのシーンでした。

◆今回の作品は、孤独と孤立について言及されるシーンがありますが、松さん、石橋さんはどのように受け止めていらっしゃいますか。

松:孤独を感じる瞬間は人それぞれにあって、比べて安心できるものでもないと思います。ただ、孤独にならなければいけない瞬間はある、という意味も感じました。孤立に関しては、立ち向かえる生き方があるのかもしれないとイメージしながら演じました。それをどう伝えるのかというと、ただ言葉を放っただけで、私自身はセリフ自体に何も感情を乗せていないんですよね。その何気ない言葉が相手に影響を与えたりといった瞬間が、本作にはたくさんあると感じています。私が思った以上に、友梨である静河ちゃんが受け取ってくれたことで、その言葉の意味が広がる方が面白いなと思ってセリフを言った記憶があります。

石橋:友梨は都会からナギに来た人で、個人的に、都会は便利なシステムがあるからこそ、孤立しやすい環境なのかなと思っています。ただ、ナギのような自然の力が強い場所では、誰かの支えがないと一人では生きていけなくて。寄子が孤独や孤立について言及しているのは、とてもリアリティのある言葉だと思います。だからこそ、友梨に刺さったのではないでしょうか。

◆深田監督の作品は、劇的な展開というよりも、内側からでてくる何かを表現されていると感じますが、今回の脚本を書かれる上で、どんなことを意識されていましたか。

深田晃司:映画をつくるとつい、「物語には大きな事件や劇的な感情が必要だ」と思い込んでしまうことがあります。そうしないと映画は成り立たないと思う一方で、別にそんなことがなくても生きてるだけで大問題だと思うんです。自分は映画を作る時にはテーマやメッセージっていうのはなるべく考えないようにしていて、とにかくモチーフとそれにどう向き合うかが重要だと思っています。結局、人間は孤独というものから逃れられなくて、生きているだけでのしかかってくる問題なんです。『ナギダイアリー』は小さい出来事は起きるけども、始まりも終わりもないというか、生きている「途中」を描くことを意識しました。

◆最後に一言お願いします。

松:皆さん、監督の熱い思いを感じていただけたと思います。何かが起きたような、何も起きなかったような日々の映画ではありますが、また気になったら観ていただけたら嬉しいです。 今日は本当にありがとうございました。

深田:この作品はカンヌ後にフランス北部のカブール映画祭で上映され、ディレクターから「ロマンチックな映画」と評価していただきました。自分自身、その解釈がしっくりきていて、出演者全員ロマンチストかもしれないと思っています。そういった解釈もしていただけたら嬉しいです。

学生新聞オンライン2026年9月26日取材 成城大学2年 小澤実桜

映画『ナギダイアリー』
新宿ピカデリー、ユーロスペース ほか全国公開中
出演:松たか子 石橋静河/松山ケンイチ
監督・脚本:深田晃司
配給:スターサンズ
© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.
https://starsands.com/nagidiary

國學院大學1年 小川観輝/成城大学2年 小澤実桜/日本大学2年 原田達司

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