株式会社エボラブルアジア 代表取締役社長 吉村 英毅

考えるよりも先に行動する その方が最適な答えをつかめる

株式会社エボラブルアジア 代表取締役社長
吉村 英毅(よしむら ひでき)

1982年生まれ。大阪府箕面市出身。東京大学経済学部経営学科卒業。経営管理と金融工学を専攻。大学在学中に株式会社Valcom(2009年10月株式会社エボラブルアジアに吸収合併)を創業。2007年、株式会社エボラブルアジアを共同創業し、当社代表取締役社長に就任。2016年東証マザーズ、2017年東証1部に上場。2018年株式会社エアトリ(旧称、株式会社DeNAトラベル)代表取締役社長に就任。

ビル・ゲイツに憧れて、学生時代に起業した吉村社長。考えることよりも動くことを選び、次々と挑戦し、旅行業にたどり着く。大手にない工夫によって、格安チケットの販売に参入し、自分を取り巻く環境を変えていった。苦労をいとわないその信念について聞いてみた。

私が中学生の頃に、すでにマイクロソフト創業者のビル・ゲイツは時の人になっていました。私は、ビル・ゲイツに対して強い憧れがあったので、ビル・ゲイツ同様、「大学在学中に起業する」と中学生のときに決めていました。
当時は、「このビジネスがやりたい」というより「とにかく起業がしたい」というモチベーションでしたね。大学1~2年生の頃は、友人の会社でビジネスを学び、大学3年生の20歳で起業しました。最初は、学生の人材派遣やセールスプロモーションをやっていました。後に旅行業を始め、それが現在の「エアトリ」につながります。

三つの基準でビジネスを選ぶ

 私はビジネスを選ぶ際に3つの基準を持っています。①今はニッチなビジネス。②今参入するとトップになれる。③外的な要因によって今後市場が拡大する可能性がある、この3つです。
 たとえばエアトリの場合、この旅行ビジネスを始めた2007年当初、国内線の選択肢はJALとANAの2社しかありませんでした。だから、国内線の料金を比較する必要性が全くなかったのです。これが①と②。ところが、そこにLCC等の格安航空会社が参入にしたことによって、国内線の選択肢が2社から十数社にまで増えてしまい、料金を比較する必要性が生じたわけです。これが③の部分です。
 企業買収をする際も、私は同じ基準で会社を見て買収するかどうか決めています。2ヵ月に1社は買収をしていて、買収した子会社は、1年で利益が3倍くらいまで伸びています。今、現在の子会社の数は、60社ぐらいです。
 学生時代に起業した会社で一番苦労したことは、会社の資金繰りでしたね。特に、旅行業を始めてからしばらくは、本当に大変で、業種上「3日間だけ、5000万円足りない」みたいなことがよく起こるんです。4日後に入金があるけど、3日以内に払わないといけない、みたいなことが日常茶飯事でしたね。
 この世界は、支払いの遅延が1回でもあると、信頼を失ってしまいます。なので、5500万円分の旅行を掛けで仕入れて、代理店に5000万円の現金払いで売る、みたいなことをよくやっていました。500万円の赤字になるんですけど、そこまでしてでも支払い事故は避けたかったんです。あとは、「朝4時まで、そのまま寝袋を使ってオフィスで寝て、朝8時から働く」という生活をしばらくしていました。これは体力的にはきつかったけれど、自分が好きでやっていたことなので、あまり辛いと思ったことはなかったですね。
 弊社の戦略の特徴の一つは、OEM(相手先ブランド製造)です。たとえば、アスクルで「アスクル出張サービス」を始めてもらい、その運営はこちらでやるようなビジネスです。飛行機の価格比較サイトは、サイトごとに差別化が図りにくいので結局のところSEO(検索エンジン施策)勝負になってしまいます。なので、大きい会社に莫大なお金を使ってSEO対策をされると、太刀打ちができなくなってしまいます。そこでOEMを取り入れることにしました。具体的には、Tポイントカードと連携した旅行販売です。これが見事に当たりまして、エアトリの知名度が上がりました。

新しい景色が見たい。だから状況を変える

 私は新しい景色が見たいのです。日本でいうと、孫正義さんがすごい景色を見ているんじゃないかな。私も孫さんと同じ景色を見てみたい。私にも過去には何回か景色が変わった瞬間がありまして、特に大きく変わったなぁと思ったときが3回あります。1回めは、資金繰りが楽になって金銭的余裕が出てきたとき。2回めは、2016年に上場して社会的に大きな信頼を得られたと実感したとき。3回めは、DeNAトラベルを買収したときです。その時々で、置かれている状況によって最優先事項が変わってくるんですが、そういう意味で、1回めの資金繰りから解放されたときは気持ちよかったです。2回めと3回めの上場、買収の後には、会える人が変わりましたね。それまで会いたくても会えなかった人が会ってくれるようになり、次第に取引先も広がっていきましたね。だから、今後、もっといい景色を見られるように頑張っていきます。

学生へのメッセージ

私は20歳から会社を経営していたため、就職する気はありませんでした。しかし、今の自分の価値を知りたくて、5社ほど就職試験を受けてみたんです。結果は、全社落ちました。そのとき分かったことは、不採用になってもそれは必ずしも能力や人間性を否定するものではないということです。なので、就活生の皆さんは結果が出なくてもめげずに頑張って欲しいですね。学生に一番伝えたいことは「早くやりたいことを見つけること」です。やりたいことを決めて、すぐに行動する。行動すれば成長します。結果的に回り道になってしまっても、それが最適解だと思います。だから、真っ先にやりたいことを見つけてください。

学生新聞2019年10月31日号より (慶應義塾大学4年 小川淑生)

東洋大学1年 萱沼祐希/慶應義塾大学4年 小川淑生/立教大学4年 壁井裕貴

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