デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 代表取締役社長 斎藤 祐馬

グローバルなプロジェクトを通して新たな会社を生み出す

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 代表取締役社長 斎藤 祐馬 (さいとう ゆうま)

■プロフィール
慶応義塾大学卒業。2006年、公認会計士試験に合格し、監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)入社。
2010年よりトーマツ ベンチャーサポート株式会社(現 デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社)の事業立ち上げに参画。
2019年デロイト トーマツ ベンチャーサポート 代表取締役社長に就任。公認会計士。

国内最大級の規模でベンチャー企業への支援を行っているデロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社。会計士としての知識と数多くの経営者との会話やグローバルな視点で、ベンチャー企業の成長支援と日本経済の発展に取り組んでいる。早い段階で進路決定を行い、事業の立ち上げも行った斎藤祐馬社長に、新たな取り組みや今後の展望などを伺った。

中学生の時に父が脱サラして事業を始めたことや、高校1年生の時に公認会計士について書かれた本を読んだことなどがきっかけで、将来は経営者の支援をしようと決めていました。そこで、まずは公認会計士を目指すため、当時会計士の輩出が多かった慶応義塾大学経済学部に入学しました。将来の進路を決めたのは早かったかなと思います。
大学在学中は公認会計士試験合格に向けて勉強に専念し、在学中に試験にチャレンジしましたが合格できませんでした。卒業後に3回目の試験を受けたものの受からず、3回分の奨学金を使い果たす一方で、コンサルティングファームで内定をもらったため、一度はこの会社に入社しようと思っていました。すると、母親が「もう一年頑張りなさい」と貯めたお金を差し出してくれました。それをきっかけに、コンサルティングファームの入社はとりやめ、アルバイトをしつつ平日1日15~16時間猛勉強をして、やっと公認会計士試験に合格することができました。試験には全く自信がなく合格発表も見に行かなかったほどでしたが、合格者にだけかかってくる監査法人からオファーの電話を夕方に受け、その場で泣き崩れたことを今でもよく覚えています。この2年間は大変でしたが、自分にとってよりやりたいことがクリアになりましたね。
監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)に入社後は、仕事が終わった夜や土日に業務外で多くの経営者と会いニーズを聞いてはできることをするという形でベンチャー支援を始めました。その後、4年の準備期間を経て、社内新規事業として社内で休眠していたトーマツ ベンチャー サポート株式会社(現・デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社、以下DTVS)の再立ち上げに参画し、自分がやりたかったことを社内の新規事業として形にしていきました。2006年当時はベンチャー企業が一番苦しい時期だった一方、経営者のビジョンを聞き、支援を行うことが面白かったです。この時期に生まれた会社は今も活躍している会社が多いですね。

■新しい会社を生み出していく

日本では時価総額トップ10、トップ100の企業の顔ぶれは30年以上変わっていないのですが、アメリカや中国を見てみると、30年前にはなかった会社が現在上位を占めています。今までにない会社が誕生し成長していくことが原動力となり、社会全体が成長しています。そのため、2030年までに日本の時価相場トップ10,トップ100の会社を塗り替えていくような、新しい会社を生み出す手伝いがしたいと思っています。当社は、現在、ベンチャー支援の会社の中では日本一の規模を誇っていますが、2030年までに1000人規模の会社となりアジアNo.1のイノベーションファームになることを目指しています。
会社の業務としては、ベンチャーの成長支援、大企業の新規事業コンサルティング、政府のイノベーション政策実行を3つの柱としています。スタートアップ支援に関しては、資金調達支援や大企業との提携、PR、採用、システム開発など、様々な支援を行っています。大企業に向けたコンサルでは、大企業のベンチャー投資を行うCVCの立ち上げ支援などを通じて、ベンチャー投資や大企業の資本力やアセットとベンチャー企業の新技術や斬新なアイデアでオープンイノベーションを行うなど新規事業開発支援に取り組んでいます。以前は、大企業にベンチャーと関わる役割の部署がなく、ベンチャーへの投資や協業に関する相談をもちかけても相手にしてもらえない状況でした。そうした現状を変えるために、毎週木曜日の朝7時、大企業に向けてベンチャー企業がピッチを行うイベントを10年ほど続けています。オーディエンスがたった10名からスタートしたイベントも今では400名にまで成長しました。行政に関しては、ベンチャー支援の政策提言を行ったり、政策実行の受託を行ったりすることによって、挑戦できる環境作りを行っています。今年の2月に東京都が主催したアジア最大級の国内スタートアップが出展するイノベーションカンファレンスの実行サポートもさせてもらい、世界中から2万6千人ものの企業家や投資家に参加いただくなど成果を上げています。

■起業家を輩出する企業に

当社の仕事を通して起業家の方と会う中で、自分で事業を立ち上げ成長させていくためのネットワークやグローバルで仕事をできる力、コンサルティング力を身に付けることができます。そして、3~5年経つと自分で起業しようというマインドになる人も多く、実際に当社の卒業生の中には起業家やベンチャー企業のCXOクラスで活躍する人も多いです。こうやって、ベンチャー業界で活躍する元DTVSメンバーがいると、様々な面で補完しあいながら仕事がすすみますし、実は採用力も上がっています。「起業家を輩出する企業」として、循環させていく方が上手くいくと、この何年かで感じています。
新卒はポテンシャル採用のため、自分でこんなことがやりたい、という強い想いを持っている人を採用しています。また、行政などと一緒に仕事をすることも多いため、社会を良くしたいなどと、社会に気持ちが向いている人の方がフィットしているかなと思います。そして逆算して自分で考える行動力があることも大切ですね。

■若手の社長を輩出する

ベンチャー企業などの伸びている会社は大変なこともありますが、明るい雰囲気があります。そのため、スタートアップ企業を伸ばすために規制改革などいろいろな意味の支援をしていきたいですし、起業家教育の推進を行って起業家を目指す人を増やしていきたいです。短期では、大企業のやる気のある30代中心の若手の方々に対して社内ベンチャーを行う支援を行い、大企業の子会社の30代社長を300人輩出することに取り組んでいます。その結果生まれた30代社長は100人にのぼります。大企業の中に意思決定のできる若い人がいると、事業の展開のスピードが速いので、さらに成長も早くなります。

■メッセージ

こんなことがやりたい、などのビジョンや自身の存在意義が早く決まれば決まるほど、それが羅針盤となって、実現の可能性が高まると思います。また、自分だけでは解決できないことがあっても励まし合える仲間がいると心が折れずに取り組めるので、会うとポジティブになれる仲間も大切です。この2つを学生のうちに身に付けておくといいですね。

学生新聞オンライン2023年9月6日取材 上智大学短期大学部2年 大野詩織

Information ~ UPDATE EARTH コンペティションについて ~ 

UPDATE EARTH コンペティション
対象者は全国民!破天荒解なビジネスアイデアや事業計画を募集。

デロイト トーマツ グループは、日本国内の起業家予備群や起業家、スタートアップなどを対象に、ビジネスアイデアや事業計画を表彰する「UPDATE EARTHコンペティション」を開催します。
応募受付は、2023年10月16日(月)から12月15日(金)までとし、2024年3月2日(土)に表彰式の開催を予定しています。

詳細はWEBサイトをご覧ください。
https://update-earth.com/

UPDATE EARTH とは?
本プロジェクトは、日本全国の児童・学生(小・中・高・高専・大)から社会人までを対象に起業家育成講座を行い、起業に向けた裾野を広げるとともに、さまざまなイノベーションアワードやビジネスコンテストなどと連携し、ビジネスアイデアを全国から多数集め、支援対象となる起業家の発掘を行います。発掘活動から選抜されたスタートアップや起業家(予備軍も含む、以下「起業家」)のビジネスプランの事業化、海外展開を視野に入れた事業拡大を支援します。
これまで、起業家の育成、発掘、成長支援はさまざまな機関や組織が個別に行っていました。本プロジェクトはこれらを全国規模、一気通貫で行うことを目的にした挑戦的な取り組みです。日本から世界を席巻する企業を生み出し、より良い社会に変革していくことを目指し、プロジェクトを「UPDATE EARTH」と命名しています。

慶應義塾大学2年 山本彩央里 / 上智大学短期大学部2年 大野詩織

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