井上想良 前しか見ない。それが自分の強さ。

俳優 井上想良 (いのうえ そら)

■プロフィール

1998年8月12日、大分県出身。2020年に俳優デビュー。NHK『ファーストラヴ』やFOD『シンデレラはオンライン中!』など数々のドラマに出演。ABEMAの大人気恋愛リアリティーショー『恋とオオカミには騙されない』に出演し注目を集める今後期待の俳優。

「かっこいい俳優になりたい」。そう語る井上想良さん。3歳からテニスを始めて、テニス以外の道は考えられなかった幼少期。しかし、大学時代に出会った芸能の仕事に夢中になり、両親からの猛反対を受けつつも、自分の道を突き進んだ。様々な苦労を乗り越えて、今の仕事に懸ける思いや俳優という仕事への思い、今後の目標について迫る。

■全く考えていなかった芸能のお仕事への挑戦

大学はスポーツ推薦で入りました。3歳から続けていたテニスを、一部リーグの強い大学でやりたいと思い、上京したんです。大学では本当にテニスしかやるつもりなくて、実際にバイトもせず、部活ばっかりの生活をしていました。そんな中で、あるメーカーさんのカタログのモデルをやることになりました。もともと芸能界というかっこいい世界に憧れていたのもあり、やってみると実際に楽しくて。そして、部活の監督がワタナベの養成所の事務員さんと知り合いということもあり、ワタナベの養成所のオーディションを受けようと決めました。
この仕事を始めるときは、両親にだいぶ反対されました。上京したときは「テニスをやる」と決めていた上に、父親は昔から僕に会社を継いでほしいと思っていました。東京で仕送りをもらって生活していたのですが、「芸能界に進むなら、そのお金を止める」とまで言われました。仕事をするのだから、お金を稼いでこいと。そこから僕はバイトをして、養成所にも通って、多忙過ぎて眠れない日々を過ごしました。すると、父親も「ここまでやるのか、それならしかたない」と認めてくれて。今は、母親も僕が出演した『恋とオオカミくんには騙されない』を観て、感想を送ってくれるようにもなりました。
今思えば、この仕事が、何かを「自分からやりたい」と言いだした初めてのことだったと思います。今まで本当にテニスしかしてこなかったし、テニスにしても、なんとなくこれ以外に選択肢がないような状態で始めたものでした。しかし、今になってようやく自分で考えて決めた本当にやりたいことをできているなと思います。いまは自分の中で、「ほしいと思ったことは遠慮しない」と決めています。絶対後悔するから。後悔するようなことだけはしないようにしています。

■お芝居を通じて「こんなにできないものがあるのか」と知った

今まで色々なスポーツをしてきて、割と何でもできてきました。しかし、お芝居をすると全くできないんですよね。「自分でもこんなにできないものがあるのか」という気持ちになって、初めて真剣にお芝居をやりたいと思いました。
この仕事で楽しいのは、毎回違うこと、新しいことをやれること。勉強しても終わりがない一方で、勉強すればするほど結果に繋がる仕事だとも思います。今はもっぱら、いろんな作品を見て勉強しています。最近観た作品で非常に印象に残ったのは映画の『あゝ、荒野』です。ボクシングのトレーニングに励む二人の男性を描いた作品なのですが、本当にスポーツをしているよりもスポーツをしているように見えるんです。作品を通じてその迫力が伝わって、改めて俳優さんのかっこよさを感じました。

■オーディションに10回落ちても、アカデミー賞をとるまで辞めない

ただ、このお仕事をしてひとつ困っているのが、ドラマや映画がシンプルに観られなくなったことです。作品を観るたびに、色々考えてしまうんですよね(笑)。でも時々、そんなの全部取っ払って、作品に熱中できるときがあるんです。そういうときに「やっぱり俳優さんってすごい!」と思うし、いつか自分もそういう俳優になりたいなと思います。
今、辛いことはオーディションに受からないことです。10回連続で落ちたときは流石に凹みました。役にはまらなかったり、知名度が足りなかったり、演技力が足りなかったり、要因はたくさんあります。でも、自分は「アカデミー賞をとるまではやめない」と決めているんです。だからこそ、凹む期限はその1日だけと決めています。その日は自分を思い切り甘やかして、次の日から頑張る、そうしてアカデミー賞を取る日まで頑張りたいと思っています。

■自分の強みはとにかく「ポジティブ」

テニスの世界から芸能という全く違うものを始めて、今は常に不安しかありません。自分は今年大学を卒業する年代です。周りが卒業や就職を進めていて、一般的によく言われる「安定した道」を手に入れている。自分はそれこそ将来どうなるのか、この仕事で食べていけるのかと、不安なことばかりです。でも、そんな不安しか無い中でも、前しか見ないようにしています。「この仕事がなくなったらどうしよう」という後ろは見ません。もしそういう厳しい状況になったら、その時はその時に考えようと思っています。
へこんでいてもしかたがない。その精神も、テニスから得られたものは大きいと思っています。
ときには、自分が思ったように受け取ってもらえず、「自分はそう見えるのか!」と戸惑うときもありますが、そのときも自分が見えていないものを客観的に教えてくれてありがたい、と考えるようにしています。この自分の個性である「ポジティブさ」と「不撓不屈」の精神は今後大切にしていきたいですね。そこからさらに、役に自分のキャラをのせられるようにしていきたいなと思っています。

■「恋とオオカミには騙されない」は刺激的なお仕事

今回の作品はオーディションでも自分のことを話しただけで、お芝居もしていないので、難しいと思うことは特にありませんでした(笑)。でも、ただの恋愛模様じゃなくて、みんなが行動するんですよね。そうじゃないと出ている意味がないから。そういうみんなが動いている姿を見て、「こういう風に動くんだ」と勉強になりますね。
今回のメンバーは10人が10人、本当に仲が良いんですよ。みんな苦労を乗り越えてきているので、年齢の差や性別も関係なく、壁がないんですよね。自分も年下とか関係なく、同等の立場で接するようにしています。みんなとはお芝居とか仕事の話もたくさんしています。また、この作品でもらえるメッセージの量が増えました。メッセージをもらうことは純粋に嬉しいです。

■大学時代は、社会に出るための準備期間

大学生のうちは、高校生と違って自由な時間も増えるし、やれることはたくさんあります。でも大学を出たあとにあるのは社会で、大学はその社会にでるための準備期間だと思うので、自分のやりたいことをやってほしいと思います。自分も今までしてきたテニスという道をやめてこの道に進みました。全く想像していなかった道ですが、すごく楽しいです。みなさんも後悔なくやりたいことをやってほしいです。僕も一緒に頑張ります!

学生新聞オンライン2021年3月18日取材 津田塾大学 3年 川浪亜紀

埼玉大学 1年 成田裕樹 / 慶應義塾大学 1年 伊東美優 / 日本大学 3年 辻内海成 / 横浜市立大学 3年 小熊結菜 / 津田塾大学 3年 川浪亜紀 / 津田塾大学 2年 宮田紋子 / 明治学院大学 3年 小嶋櫻子

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