株式会社Photosynth(フォトシンス) 代表取締役社長 河瀬航大 

自分が思い描く理想の未来を、自分の手でつくる

株式会社Photosynth(フォトシンス) 代表取締役社長 河瀬航大(かわせこうだい)

■プロフィール

1988年鹿児島県生まれ。2011年筑波大学理工学群卒業後、株式会社ガイアックスを経て、2014年に株式会社Photosynthを創業。スマートロックAkerunを主軸としたIoT・SaaS事業を通じて、累計70億円を調達、2021年に東京証券取引所マザーズ市場に上場。
筑波大学非常勤講師。

マザーズ市場に上場されたばかりの「Akerun入退室管理システム」の開発・提供を行う株式会社Photosynth(フォトシンス)。趣味レベルでAkerunの開発を行っていたところ、新聞に取り上げられて話題になったことから、量産することになり、起業。その起業仲間は大学時代のサークル仲間や当時の同僚だった。そんな自身が歩んできたドラマのような起業ストーリーを、河瀬社長に語っていただきました。

■大学のサークル仲間が起業仲間に

 筑波大学の理工学群に所属していたのですが、実際はあまり大学の授業には出た記憶はなく、サークル活動の方が熱心でしたね。サークルは真面目なものと不真面目なものの両方に所属していました。不真面目な方は、筑波大学一の飲みサークルです。アウトドア系サークルだったのですが、毎日ひたすら飲んでいました。そんなサークルの1個上の先輩に、株式会社ユーザーローカルのCTO三上さんや、さらに2個上の先輩に、株式会社アカツキ代表取締役CEOの香田さんがおり、社会に価値を生んでいる企業の経営者になられています。なんでもやりきることが大事なんだと思いました。
 もう一つのまじめな方のサークルは、「em factory」という自然環境問題をビジネスの切り口で解決する早稲田大学のビジネス系のサークルです。当初はインカレサークルでもなく、東京にゆかりもないのに早稲田大学に飛び込むのはどうかなと思っていたところ、中学・高校の同級生が早稲田大学に入学することになり、その同級生を誘って一緒にem factoryに入りました。それからは、サークルの活動に参加するために筑波からの50キロの距離を週3で行き来して活動に参加し、3年生には早稲田生ではないのに代表を務めることに。副代表も早稲田生ではなく埼玉大学の者がやっていました。実はそのサークルの副代表の渡邉と、広報をやっていた中学・高校からの友人でもある熊谷の3人で、現在のフォトシンスを起業しています。そのため大学のサークルは自分にとって、とても貴重な人々との出会いになったと思っています。

■20代前半は腕試しの期間

 大学4年間のサークル活動を通して、「ビジネスでのアプローチは面白い」ということを学びました。そこで、就職するなら、新規事業を作れる会社に行こうと決めていました。そこで、「ぶっ飛んでいる人と働いてみたい」と思い、ガイアックスに入社しました。もともといろんなことが好きで挑戦したいタイプだったので、ガイアックスに入社してからは、プロジェクトを同時に10個くらいやっていました。
 そのとき手掛けたプロジェクトの一例としては、NPOの立ち上げやキュレーションアプリ、弁護士保険のweb EC申し込み比較サイトなど。何かに焦っているわけでも、何か目標があるわけでもなかったのですが、「自分でNPOを立ち上げられるんだ」「M&Aの話なんて来るものなんだ」などと、経験を積むたびに、成長に対する喜びを感じていました。だから、入社してから3年間は、日が昇るタイミングまで仕事をして、シャワーだけ浴びに家に帰り、9時には出社するというような日々を送っていました。

■面白いことをやってみようというノリで生まれたAkerun

 10個あるプロジェクトと同じように、「なにか面白いことやってみたい」という気持ちから生まれたのがAkerunです。男4人で飲んでいたときに、カギをなくした話や友達や恋人にカギを渡すのが面倒だという話になりました。「今の時代は様々なものがデジタル化していくのが普通だから、鍵もデジタル化したらいいのでは?」という実体験から着想を得て、開発が始まりました。

 熊谷はパナソニックでエンジニアとして働いたのでモノづくりができて、渡邉はソフトバンクで働いていたため通信を理解していて、私もガイアックスで新規事業立ち上げをやっていたので、3人の専門がかみ合わさり、製品開発に着手していきました。

■ガイアックス社長からの後押し

 その際、日経新聞のコラムにプロダクトを取り上げてもらいました。その翌日にガイアックスの上田社長に呼ばれて、「これは河瀬か?」と質問されました。当時、副業が当たり前の時代ではなかったので、「はい、すみません、やりました。でも副業とかではないので」と伝えると、社長からは「そういう話ではない。こういうチャンスがあるのであれば起業したら? もし起業するなら投資するよ」と背中を押してもらいました。

 最初は6名でお金を出し合って資本金10万円ではじめて、ガイアックスからの出資金や助成金で最初の半年間を切り抜け、その後はプロトタイプをつくってベンチャーキャピタルを回って、半年後に4.5億の資金調達を達成。そこから歯車が回り始めました。

■自分が描く未来を作れるのが魅力

 起業がおもしろい理由は、「こんな世界があったらいいよね」と思う、自分の描く作りたい未来を、自分の手によってつくることができる点です。僕がフォトシンスで起業していなければ、世の中にスマートロックというものがなかったかもしれないし、鍵が100年後も残っていたかもしれない。発明家のような気分ですね。

■フォトシンスが目指す世界とは

 今後、目指すところは、一つのAkerun IDですべての扉を開け閉めできる社会をつくっていくこと。僕たちはオフィスのカギやビルのセキュリティカード、家の鍵、車の鍵などたくさんのカギを持ち歩かないといけません。さらに、保険証や社員証、マイナンバーカード、クレジットカードなど、財布には入っている現金以外のものは基本的には個人を証明するためのものでしかありません。でも、最強の「河瀬」というカードが1枚あれば、それが名刺の代わりにもなるし、ポイントカードにも、決済機能にも、ドアを開ける鍵にもなります。一個のIDで完結できる社会、それを自分たちはその社会をつくっていきたいです。

■学生へのメッセージ

 すべては行動で、基本行動してこそだと思っています。いきなり頭で考えて、「自分って何したいんだっけ?」や、「何のために生まれてきたんだっけ?」と自問自答しても始まりません。僕みたいに手あたり次第、興味なくてもやってみて、その中でこれ面白いかもしれないと思うことを深堀して、やりたいことを見つけていけばいいと思います。どこで一緒に活動をしていくような仲間が生まれるかはわからないので、仲間を大切にしてほしいです!

学生新聞オンライン 創価大学4年山内翠

津田塾大学4年 川浪亜紀 / 創価大学4年 山内翠

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