山田孝之 常に刺激を求めた自分の人生、道は無限に広がる

山田孝之(やまだたかゆき)

1983年生まれ。99年に俳優デビュー。『世界の中心で、愛をさけぶ』『電車男』『闇金ウシジマくん』シリーズ、『勇者ヨシヒコ』シリーズ、『全裸監督』など、多くの作品で主演を務める。また、クリエイターの発掘・育成を目的とする映画プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS』のプロデューサーや監督など、活動は多岐にわたる。

シリアス、ハードボイルド、コメディなどさまざま役柄を演じ、日本のドラマや映画界になくてはならない存在である山田孝之さん。デビューしてから23年、今では俳優だけでなくプロデュース業や監督も務める。そんな山田さんの原点にはどんな思いがあるのか、役に対してのこだわりや、ここまでの歩みを伺った。

■新しいものを得ることへの楽しさ

昔から好奇心旺盛な子どもでした。学校からの帰り道は、新しい道を知りたいという気

持ちで、同じ道ではなくわざと遠回りをして帰りました。いつもとは違う知らない道があり、思わぬところに出るという、新しいことを体験するのを楽しんでいました。何があるのかを自分の目で見たい、知りたいという好奇心があったんですよね。それは今も同じで知らない居酒屋に入ったり、入った先で知らない人と喋ったりすることを楽しんでいます。誰かといる時間は好きですが、一人で出かける時間も大切にしているんです。昔からの友人とのいつもの会話も楽しいけれど、刺激がないですよね。一人で新しい環境に飛び込んでいくと、年齢や性別、職業も違う人と話すことになり、全く自分が考えないようなことが出てくるときがあります。また、それが役へのヒントになることもあり、相手に気まずい気持ちが生まれる間の使い方、上から目線に感じる表情の作り方など、演じるときに相手の気持ちを動かす一つのアイデアになることもあるんです。そんな刺激を常に求め、楽しんでいます。

■〝演じる〟ことは人の人生を〝生きる〟こと

芸能への道は姉の影響が大きいです。姉が雑誌の表紙を飾るのを見ていて、田舎では反響も大きく、なりたい夢や職業もなかったので自分も東京に行って「芸能人」になろうかなと思ったんです。しかし、俳優という仕事について真剣に考えたことはありませんでした。とりあえずで受けた演技レッスンでは、「カメラの前に立っているときは君は君でいてはいけない」というざっくりとした言葉をもらい、混乱しました(笑)。本当によくわからないまま俳優になったのですが、お芝居を始めて2年目で朝ドラに参加させていただきました。毎日芝居をして、へとへとになりながら帰るその道でふと「芝居って楽しいかも」と思ったんです。その楽しさから、俳優を続けてみようと思いました。自分にとってのお芝居は「お芝居をする」という感覚ではなく、役として「その人の人生を生きる」という感覚です。

撮影期間で役に入っているときに、ただ集中して気持ちを作っているわけではなく、どの状態のときでも“山田孝之”として生きてきた38年間はなかったものにしているのです。山田孝之としての経験や記憶をどこかに置いてくる。もちろん、それらすべてが消せるわけではないですが、その人の気持ちになってその人として物事を考え、役として生きています。

そのため、自分はどんなにひどい役でもその役のことを嫌いになりません。演じているときは、その人が生きてきた人生に歩み寄ってその人になっているのです。だからこそ、どれだけひどいことをしていても、そこには必ずなぜそうなったのかという理由があります。あるとき、撮影が終わってすぐに別の撮影に入ったことがありました。性格も全く違う役だったのですが、台本を開いてセリフを覚える、という同じ作業をしているうちに、ブワッと前の役柄が蘇ってきたことがあったんです。そこの切り替えは大変でしたが、前の撮影で終わったはずのその役は自分の中ではまだ生きていて、そこまで役と一体になれたのだという喜びを感じました。20代の頃、俳優という仕事は自分の中で全て喜びであり、全てストレスでした。オファーがきて、それに喜んで役に入るためにストレスをかけて、そして皆で作ることに喜びを感じながら、思ったのとは違う対応にさらに考えて動いて、お客さんに見てもらっていろいろな反応をもらう。全ての過程で嬉しさとストレスが表裏一体となり、それに左右されてきました。しかし、今は、生まれたストレスはその現場でしか解消できないとわかっていますし、100点満点を目指さなくていいとも思えるようになりました。だからこそ、この仕事をやめられないなとも感じています。ただ、飽きっぽい自分がもう23年も俳優という同じ仕事を続けている。演じるという同じことをやっているけれど、スタッフや脚本、共演者など、全く同じときがないからこそワクワクできる、そんな面白さも実感しています。

■一つのことを続けることで見える人生がある

学生の皆さんには、とにかく一つのことを続けてみてほしいと思います。今は辞めるために理由にできることが増えましたよね。しかし、本当の良さを見出す前に辞めることはもったいないと思います。始めたということ自体も経験にはなりますが、どうせなら良いことを見出してから辞めた方がその後につながると思います。嫌いなことはたくさんあると思いますが、どんなことでも最低でも2年は続けてみるといいのではないかと思います。

また、今やっていることがベストと思わなくても良いと思います。自分はなんとなく俳優になって芝居が好きで続けてくることができました。俳優をやり続けると決めて、そのために我慢しなきゃと思うのではなく、もっとやりたいことが見つかるまで俳優をやっていようと架空の逃げ道を作ってきたことで、自分のペースで楽しむことができたのだと思います。そうやって自分なりの逃げ道を作って、ある意味で無責任になり、背負いすぎずにやってほしいです。自分のペースで、できるだけ続けてみると人生はなんとかなります。そういった気持ちでこれからのことに挑んでほしいと思います。

(津田塾大学4年 川浪亜紀)

国立音楽大学1年 岡部満里阿/津田塾大学4年 川浪亜紀/明治学院大学4年 小嶋櫻子/日本体育大学2年 大内貴稀
写真 広田成太

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