野村ホールディングス株式会社 グループ人事部長 上嶋基寛

信用を築き、人間性を磨く。お客様と経済のために。

野村ホールディングス株式会社 グループ人事部長 上嶋基寛(かみじま もとひろ)

■プロフィール

2001年入社。リテール(豊田支店)で4年間の個人営業を経て、投資銀行の部門(上場企業カバレッジ)へと異動。その後、投資銀行TMTセクター部署で16年間勤務。2022年4月から現職。

金融業界を牽引する野村ホールディングス。「お客様とのお付き合いを通して、人として鍛えてもらった」、同社人事部長の上嶋基寛さんは語る。証券会社に立ちはだかる壁を乗り越え、会社の利益を捨ててでも、お客様の安心できる未来を優先させる姿勢は、グループがValues として掲げる「挑戦」「協働」「誠実」を体現している。

■上嶋さんの経歴を教えてください

2001年に入社してから、リテールで4年間の個人営業を経て、上場企業カバレッジへと異動になりました。その後、投資銀行TMTセクター部署に16年間勤めました。そして、この4月から人事部へと配属になりました。

元々、私自身は大学で教育学部に所属していて、経済に詳しくはありませんでした。そして、実は大学は4年間では卒業することはできず、人としてしっかりしていたとは言えなかったです。(笑)そんな私が、証券会社を目指したのは、買った後が大切な変動商品を扱う営業職に惹かれたからです。また、常に知識をアップデートすることが求められる刺激的な職場だという部分も魅力でしたね。

■業界の特徴は何ですか?

よく「金融はとっつきにくいイメージがある」と言われます。でも、私からすれば「みんな、なんで金融に興味がないのかな?」と思います(笑)。金融は、経済に密接にかかわるので、経済全般の興味とイコールだと思いますね。 

たとえば、証券会社の仕事には、リスクマネーを必要とする人と投資家をマッチングさせ、結びつける仕事もあります。どの会社も、事業を拡大する時には資金が必要になるので、企業と投資家の間に入るサービスがなければ、企業は成長できません。我々が直接企業の価値向上の活動に協力しつつ、その証券が投資家の運用商品にもなるところも醍醐味です。

 私は過去、日系企業が米国の企業を買収する大型案件に関わった事があります。そのM&Aをする際、企業の買収金額があまりに巨額のため銀行からの融資だけでは資金調達が困難な状況が発生しました。なぜかと言いますと、銀行の場合は、一社に対していくら貸せるのかというエクスポージャーが限られているからです。そこで、必要な資金について、私たちは直接個人投資家を募ることを模索しました。リテール債として3000億円です。10年国債でも0.6%ほどしか金利がつかない世の中で、4年債で1%超えという高いクーポンだったので、個人投資家からも大変喜ばれました。

しかし、個人投資家の場合には機関投資家と比べて一人当たりの投資金額が小さいので必要金額を達成するためには、何万という投資家数を集めなければなりませんでした。難しい挑戦でしたが、何とか道が開け、必要金額を調達することができました。

 これから、大きく動くポテンシャルがあると考えられるのは個人金融資産です。個人が有する金融資産は、現金で約1000兆円は眠っていると言われています。また、個人投資家に届ける運用商品も変わっていく必要があります。今後は、「ユニコーン」と呼ばれる企業価値が10億ドル(日本円にして約1250億円)以上の非上場会社に対する資金調達サポートも充実させていきたいです。

■野村グループの特徴は何ですか?

経済の担い手として、どんな人とでもお付き合いができるところが魅力です。

人生100年時代と言われています。賃金は上がらず老後が心配されます。そこで、今あるお金をどう適切に運用すべきか、という金融教育が求められます。

運用は悪いものと思われやすいですが、やり方さえ学べば正しく扱えます。また、金融の本質は「信用創造」にあると考えており、サービスを提供する人間が信頼に足る人間なのかが重視されます。そのためには、コミュニケーション力やソリューション力も必要です。

ところが、私自身振り返ってみると、最初からお客様の約束を全て守れていたのかというと、そうではありません。私は、より自分を知ってもらうためにお客様のもとに何度も通い対話し、その中でお客様に鍛えてもらうことで、人間性が磨かれていったと思います。人とお付き合いをする中で自分の人間性についても学ぶことが出来ること。これが証券会社の良さだと思います。

 弊社では、私たちのvaluesとして「挑戦」「協働」「誠実」を掲げています。例えば、M&Aのアドバイザーになった際、「誠実」について考えさせられたことがあります。そのM&A案件では、契約成立間近になったものの、このまま続けてはお客様に不利益になってしまう可能性が生じました。成功すれば私たちに大きな成功報酬が入ります。一方で仮に途中でやめてしまえばその報酬は入りません。私自身迷いましたが、誠実にお客様と向き合い、全てをお話しすることにしました。お客様も中止の決断を迷われましたが、お客様の利益にならないのであればやめるべきだと私は進言し、そしてお客様のご理解を頂くことが出来ました。この決断の前に社内に相談したところ、メンバーの誰一人案件の中止に対して反対しませんでした。この時は、改めて自分のいる会社は誠実な会社だなと嬉しくなりましたね。

加えて、私たちは「スキル」「スピード」「スピリッツ」を体現することを掲げています。専門性を高め続けること、ニーズが絶え間なく変化する市場に迅速に対応し、新しい事を成し遂げることが求められます。どれか一つでも欠けてはいけません。

野村は、加点主義の会社です。失敗を恐れずに挑戦したことが称賛される文化があります。頑張っている人には一つ上のランクの仕事を任せます。文系・理系は問わないですし、体育会のイメージと中身は大きく異なります。現在では、新卒・キャリア採用と比率は半々で、転職されてきた方々の元の業界も多種多様です。多様性が認められた会社です。また、社長や役員とも壁がなく、風通しが良い会社だと感じています。

■これからどのような人材が求められるのでしょうか?

近年は、成長志向の矢印が自分にだけ向いている人が多いと感じます。もちろん、成長への意識が高いことは素晴らしい事です。しかし、あくまでも社会の成長を後押しすることに、私たちの存在意義があります。野村の仕事はチームで戦う仕事なので、自分中心になってしまうと、会社やお客様をなおざりにしてしまう恐れがあります。これは、実際働いている私たちでもわからなくなってしまうこともあると思います。自戒の念も込めて言いますが、「お客様」「経済」のために、というところを大切にしていく事が我々の存在価値そのものなのです。

会社も、社会に合わせて変わっていかなければなりません。私たちも努力していますが、今いる人だけでその期待に応えていくのは難しいです。だからこそ、若く新しい力に期待しています。野村グループは、今年で97周年を迎えました。次の100年を一緒に引っ張っていける人を、心から期待しています。

■大学生へのメッセージ

自分らしいの価値観を見つけてください。就活をしていると、どうしても会社の名前やブランドに惹かれてしまうと思います。難しいですが、経験を通して、自分が大切にしたいものを見つけて下さい。実際にやってみないと、わからないことがあります。まずは触れてみて、そこから分かることを探してみてください。その上で、自分らしい価値観を追求できる場所として弊社を選んでいただけたら嬉しいです。

学生新聞オンライン2022年9月26日取材 駒澤大学3年 三上山明里

國學院大學3年 峯松諒太 /立教大学4年 須藤覚斗 / 中央学院大学4年 田根颯人 / 駒澤大学 3年 三上山明里 / 明治大学3年 北條あさみ / 東洋大学3年 濱穂乃香

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