iU 学長 中村伊知哉

大学を創りあげるのは生徒自身! 世界一面白い大学を生徒と一緒に創りあげる

iU 学長 中村伊知哉(なかむら いちや)

■プロフィール
京都大学特任教授、東京大学研究員、慶應義塾大学特別招聘教授、デジタル政策財団理事長、CiP協議会理事長、国際公共経済学会会長、日本eスポーツ連合特別顧問、大阪・関西万博2025 事業化支援PTプロジェクトリーダー、理化学研究所コーディネーターなどを兼務。
1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。MITメディアラボ客員教授、スタンフォード日本センター研究所長、慶應義塾大学教授を経て、2020年4月よりiU学長。内閣官房、内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省などの参与・委員を歴任。著書に『新版 超ヒマ社会をつくるーアフターコロナはネコの時代―』(ヨシモトブックス)、『コンテンツと国家戦略』(角川EPUB選書)など多数。1961年生まれ。京都大学経済学部卒、大阪大学博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。

「全員起業、全員インターン」をビジョンに掲げる情報経営イノベーション専門職大学(以下iU)。世界で初めて「イノベーション」を大学名に入れ、今後の未来を担う若者たちの輩出を目指している。変化が激しい現代に新しい大学を立ち上げた背景やその想いについて、学長である中村伊知哉氏にお話を伺った。

学生時代は勉強よりもバンド活動に熱中していました。周りがどんどんプロになっていく一方、「バンドで食べていけるのか」と自分の将来が不安になり、就職活動をすることを決心したんです。就職活動では、「自分と同じように、何かに熱中している人たちのサポートをしたい」という想いを軸にしていました。そして、国の様々な制度を取り扱っていた郵政省(現、総務省)に入省しました。郵政省では、法律を作ったり予算のプロジェクトを手掛けたりするほか、2001年には総務庁、郵政省、自治省を統合した新たな役所である、総務省の立ち上げなどに従事しました。15年間郵政省で働き、一区切りがついたタイミングで、アメリカに渡りました。アメリカでは、大学と協働して行う「子供とメディアの研究所を創るプロジェクト」や、「ポップカルチャーのプロジェクト」などに取り組みました。海外では、このように企業と大学生が一緒にプロジェクトを進めることがよくあります。しかし、当時の日本ではこのような取り組みはほとんどありませんでした。そこで、「日本でも企業と大学が新しいものを創りあげることのできる大学を作りたい」という想いが芽生え、iUの創設に至りました。

■教育の手段として掲げているのが「起業」

iUは、ビジネスシーンで活躍できる人を育てる学校で、全員が起業することを掲げているため、就職率0%が学校の目標です。しかし、「全員起業」といいつつも、あくまで起業は1つの教育の手段であると私は考えています。起業は「自分で学び、必要な知識を習得する力」を身につけることができる方法のひとつです。そんな自発的に動く力を学生には育んでもらえるように学校創りに取り組んでいます。そのため、本学では多数の客員教授や連携企業、インターンシップを導入し、いろいろなバックグラウンドを持つ大人と触れ合う機会を設けて学生たちの刺激になるように働きかけています。また、30人いる専任の教員は大学出身者が少ないこともあり、柔軟な発想に富んでいることも特徴です。教員一同で生徒が楽しめるようなユニークなカリキュラムを作成し、生徒が学びを楽しめる場所にできるように試行錯誤しています。このような環境を提供することで、自分のやりたいことを考えて行動できるような、社会で活躍する人材を育てられるのだと思います。
今後は、学生のやりたいことの実現のため、我々の学校創りについて関心のある学校や教授を増やし、繋がっていくことで大きなコミュニティを形成していきたいです。
実は、iUでは「起業」のほかにも意識していることがあります。それが「壊して創ること」です。これからは従来のルールなどが通用しない変化の時代になっていくのではと思っています。そんな時代を生き残れるのは、変化することを楽しめる人たちではないでしょうか。実際、学生たちに「コロナはピンチか、チャンスか」と問うと、みんなが即答で口を揃えて「チャンス」と答えます。社会が逆境なときこそ、従来の考え方を壊し、新たな考え方で、新しい概念やルールなどを生み出すことが社会の希望になると思うんです。コロナをチャンスと捉えられるような逆境で上を向くことのできる学生たちが、今後の社会に様々な影響を与え、社会の希望になってくれるだろうと今から楽しみですね。

■世界一面白い大学を創りあげる

私の目標は「iUが世界一面白い大学」と呼ばれることです。面白い大学にすることで、多くの学生の夢を後押しすることが出来ると思うからです。そのように呼んでいただけるように、現在は様々な取り組みやカリキュラムを作成しています。しかし、大学の評価は、卒業生が社会に出て活躍をして、初めて得られるものです。そのため、本学が評価されるにはまだ時間がかかると思います。ただ、大切なのは周りの評価ではなく、学生たちの評価です。学生たちに「学ぶことは楽しい」「iUに入ってよかった」と思ってもらえるように、初めて大学でテレビ局を作ったり、世界中の学生と繋がれるような国際的なメディアを作ったりと、画期的かつ学生のしたいことを実現できるような大学にしていきたいです。そうしていくことで、自然と大学としての評価はついてくると思います。
ビジネスではできないけれど、大学ならできることは社会にはたくさんあります。だからこそ、学生たちにはたくさんチャレンジして欲しいです。そして、今後はいろんな人たちとお互いの考えや妄想をぶつけ合って欲しいです。本学は、そこで生まれたアイディアを実現できる場を提供し、ビジネスの垣根を超えた「社会と大学の架け橋」にしていきたいです。

■大学生へのメッセージ

「大学生のときにしかできないことは何か」を真剣に考えてほしいです。そして、社会人になってからではできないことに今のうちに挑戦してください。
大学生のときに考え、行動に起こすなど、様々な経験をした人は学ぶことの重要性をいち早く知ることが出来るとともに、経験という宝を得ることができます。そういう人は社会で大いに活躍できるはずです。今後の社会で活躍できる力を身につけるためにも、「学ぶ意識」を常に持ち続けてください。

学生新聞オンライン2023年8月9日取材 國學院大學3年 島田大輝

法政大学 2年 佐伯桜優/武蔵野大学 4年 西山流生/国際基督教大学 1年 渡邊和花/立教大学 4年 須藤覚斗/國學院大學 3年 島田大輝/専修大学 4年 竹村結

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