株式会社家族葬のファミーユ 代表取締役社長 中道 康彰

株式会社家族葬のファミーユ 代表取締役社長 中道 康彰(なかみち やすあき)

■プロフィール

京都産業大学卒業。1990年、株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)に新卒入社。株式会社リクルートコミュニケーションズ代表取締役社長を経て2016年、株式会社エポック・ジャパン(現・株式会社家族葬のファミーユ)に経営参画。2017年、代表取締役社長。2018年、株式会社きずなホールディングス代表取締役社長兼グループCEOに就任。

大切な方との最後の時間を「1日1組・貸切」でゆっくりと過ごせる家族葬ホールを、全国で展開する家族葬のファミーユ。多様性が求められる現代において、お葬式もご家族の思いや価値観に寄り添って行いたい。そんな思いを抱く中道社長に、家族葬への思いやここに至るまでの道のりについてお話を伺った。

学生時代は、学費のためにアルバイトに勤しみました。授業後にはバーテンダー、ボウリング場に併設されたカフェ、休日には日雇いの建設現場など、数多くのアルバイトを経験しました。どんな職種でも問題なくこなしていた私でしたが、一つだけ続かなかったアルバイトがあります。それはベルトコンベアで運ばれてくる商品を段ボールに詰める仕事でした。夜勤が体力的に厳しかったのではありません。誰とも話さず、自分なりの工夫を凝らせない、ということが自分にはつらかったのです。この時、人間には向き不向きがあるのだと気づくことができました。
そのようなアルバイト経験をとおして、人と関わる仕事が好きだと実感し、大学卒業後は営業職に就こう、やるなら日本一の営業マンを目指そうと思っていました。残念ながら、第一志望の証券会社は不採用となりましたが、ご縁をいただいたリクルートに入社を決めました。当時は毎日、売上ランキングが発表されるような環境。新人部門でトップを狙える位置につけていたのですが、残り1日で大口契約を取ってきたライバルに逆転されるなど、悔しい思いをしながらも、将来生き抜く力を身に付けるためにはより厳しい環境にて鍛錬すべきと、日々奮闘していました。
「経営者」としての道を強く意識し始めたのは30代前半の頃です。当時倒産寸前だった日産自動車がわずか1年で経営を立て直したり、IBMがルイス・ガースナーという経営者によって倒産を免れたりと、経営に関するプロフェッショナルの存在を知り、「経営者」という職業に惹かれるようになりました。そこで、リクルートでの経験を活かして、次のキャリアステージは職業経営者として生きよう、と決心したのです。
最終的にリクルートには25年間勤めました。ご恩もあったので、退職後は競争相手になるような業種を避けた結果、リクルートが参入していなかった葬祭分野に転じることにしました。

■その街の〝生活者目線〟になって考える

多くの会社が売上を目標に掲げている中、家族葬のファミーユは「NP SⓇ (ネット・プロモーター・スコア※ )」と呼ばれる、「当社を人に薦めたいかどうか」という指標を大事にしています。これは当社のサービスにどれだけ満足できたかという、いわゆる顧客満足度とは違います。お葬式は故人様が暮らしていた街で執り行うことがほとんどですので、地域における評判が何より重要です。そのため、その街に住む生活者の目線で評価をいただくこと、つまりNPSⓇが会社の評価に直結します。このことを忘れないよう、全従業員で徹底的に生活者目線にてサービスを見直し、NPSⓇ指数の向上に取り組んでいます。

■令和の葬儀スタイルは〝家族葬〟が主流に

令和時代も日本人の平均寿命は伸びる一方で、長生きすればするほど知り合いが減っていき、地域とのつながりが薄れていく傾向にあります。核家族化も進み、お葬式は家族や親しかった友人のみでお見送りする家族葬を希望される方が増えてきました。特にコロナ禍において、多くの方が参列する一般葬の実施が難しくなったこともあり、家族葬のニーズが一気に高まりました。私が社長に就任した頃は、まだ家族葬の割合というのは全体の3割程度でしたが、今では6割を超え、現代の葬儀スタイルのスタンダードになったと言えるでしょう。

■葬儀にも多様性が求められる時代

現代は何事にも多様性が叫ばれる時代です。これまでのしきたりを尊重するだけではなく、個々の思いも大切にするよう求められています。
家族葬のファミーユが提供する家族葬は、打ち合わせや準備などに追われて気づいたらお葬式が終わっていた、ということがないよう、ご家族や親しかった方と心ゆくまでお別れの時間を取ることがで
きるようにしたいと考えています。故人様との思い出も、お葬式に対する価値観も皆それぞれ異なるはずです。これまでに多かった葬儀社目線の「型」にはめたサービスではなく、ご家族の思いや希望に寄
り添ったお葬式を提供できるよう、常に生活者目線で考えることが大切だと思います。
家族葬をとおしてお葬式に対する価値観に変化をもたらすことで、家族の絆、人との絆が強く結ばれ、命の大切さを深く感じられる社会を目指して取り組んでいきたいです。

*message*

目の前のことに地に足をつけて一生懸命取り組むこと。シンプルだけど、これが自分にできることを見つけられる第一歩です。やりたいことが見つからない、と焦る気持ちもわかりますが、大学生のうちに見つけられた人は多くはないはずです。無理に自分探しをしなくても、焦らずともやりたいことは必ず見つかります。私の大学時代のアルバイトの話もしましたが、逆にこれは自分には向いていないなと思うものを知っておくことは大切だと思います。将来について考えすぎず、今、目の前にあることを着実にやり遂げてほしいですね。

※ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、ネット・プロモーター・スコア、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems,Inc.の登録商標またはサービスマークです。

学生新聞2023年10月1日発刊号 上智大学2年 白坂日葵

上智大学2年 白坂日葵/慶應義塾大学4年 伊東美優

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