全国信用協同組合連合会 理事長 北村信

信用組合の要として全国の地域と人々をサポート

全国信用協同組合連合会 理事長 北村信(きたむらまこと)

■プロフィール

1984年3月 早稲田大学政治経済学部卒業、同年4月 大蔵省(現財務省)入省。
2019年7月 関東財務局長、2021年7月 全国信用金庫協会 専務理事を経て、
2023年6月 全国信用協同組合連合会 理事長に就任。

全国に145ある信用組合の系統中央機関として、日本の金融の一翼を担う全国信用協同組合連合会。その理事長である北村信氏は、金融・財政・震災復興など様々な行政分野に携わり、関東財務局長などを務められた経験がある。信用組合が社会で果たしている役割や信用組合がなくてはいけない理由、そして、信用組合の今後について北村氏に話を伺った。

■今に繋がるきっかけは行政学

大学時代は、政治や経済などを学びたいと考え、法律を学んでいました。より見聞を広めたいと思い、学内で行われていた著名な方の講演会にも積極的に参加していましたね。様々な勉強を続ける中で、特に関心を抱いたのは、政治学や経済学、社会学的な面を持ち合わせている行政学でした。大学3年生の時には行政学のゼミを取って、より深く学ぶようになったため、その頃から行政を職業の一つとして考えるようになったのだと思います。
同じ年に公務員試験に合格したことから、官庁訪問をして、全ての役所を自分の目で見ることができました。その中でとりわけ惹かれたのは大蔵省(現財務省)と警察庁でしたね。一時は警察庁に行くことを決めていましたが、大蔵省の方から強い誘いがあったことで大蔵省への入省を決めました。
2020年に財務省を退官してからは、農林中金総合研究所や全国信用金庫協会で働いていました。偶然ですが、どちらも「協同組織金融機関」と呼ばれる金融組織だったんです(笑)。

■信用組合のサポートを通じて、地域を支える

現在、私が理事長を務める全国信用協同組合連合会(以下略 :全信組連)や我々全信組連がサポートする信用組合も協同組織金融機関の一つです。銀行と同じように預金や融資などの役割を担っていますが、最大の違いは組合員(お客さま)の利益を第一に考えているということ。一般的な銀行は株主の投資で成り立つ株式会社であり、営利を目的としていますが、信用組合は組合員をサポートすることが一番の目的です。そして組合員のサポートを通じて地域社会に貢献するという役割を持っています。
私は、最も地域密着な金融機関は信用組合だと考えています。地域に密着しないと、信用組合としての役割を果たすことができないからです。信用組合は全国に145ありますが、それぞれの営業地域や、対象となる組合員はすべて異なります。例えば一定の地域の中で事業者や生活者を組合員とする“地域信用組合”のほか、警視庁や警察庁などの職員たちを組合員として一つの信用組合をつくっている警視庁信用組合のような“職域信用組合”など、様々な金融機関があります。このため、各信用組合が組合員に望まれるサービスはそれぞれ異なるものです。全ての信用組合の違いを認識し、それに相応しいサポートを考えることが、我々にとって最も重要な役割だと考えています。
営業地域が限られた個別の信用組合だけで組合員へのサポートを考える際に、知見が足りないことも稀ではありません。そこで様々な情報を集めている系統中央機関である全信組連が、他信用組合の事例を紹介したり、あるいは全信組連の職員が信用組合に出向したりと、人的な支援も行っているのです。

■社会の変化と共に変わる

財務省在籍時に、信用金庫や信用組合の監督を務める財務局の局長を2回経験したことは、地域金融機関の役割や課題をよく知る良い機会だったと思っています。現在、理事長という立場に就いたからにはこれからその経験を存分に生かしていきたいと考えています。
地域社会にとってコロナは非常に大きなショックであり、地域の中小事業者の方たちにとっても売り上げが激しく落ち込むなど大きな変化を経験しました。そんな中、地域や職域などのコミュニティが求めるものに的確に応えられる信用組合は、なくてはならないものです。コロナだけでなく、少子高齢化やSDGsなど様々な変化がこの社会に訪れており、その中で信用組合に求められるものは何か、それをサポートする我々の役割はどうあるべきかを全国の信用組合と共に考え、取り組んでいきたいと考えています。
学生からの認知度はあまり高くはないですが、全信組連では新卒採用も行っています。私たちは145の信用組合が何を一体求めていて、彼らの抱える課題は何かということを認識し、必要なサポートを提供しなければなりません。そして個別の信用組合とのコミュニケーションも重要です。だからこそ、一緒に働く方は、コミュニケーション能力と知的好奇心、そして金融機関としての業務に対する興味や理解がある方が望ましいですね。

■大学生へのメッセージ   

私が大学生の時には会社での出世を仕事における目標とする人がほとんどでしたが、皆さんの世代には自分が果たすべき役割を探し求めながら、社会貢献を目指している人が多い気がします。そんな皆さんの活躍に期待するとともに、是非国外にも目を向けていただきたいと思っています。
昔に比べて我々を取り巻く環境は、ますますグローバル化してきています。そんな変革期にこそ、変化のスピードが一段と早い外国の事情にも精通していなければなりません。世界には日本と違う成り立ちの国々があり、多様な人たちによってこの社会が成り立っているのだと認識しなければならないのです。コロナウイルスの影響で国内に目が行きがちですが、できるだけ広い視野を持ち、グローバルな社会の中で自分たちは生きているという意識を若い皆さんに持っていただきたいです。
我々の世代では出来なかったことでも、今の若者は達成できます。大谷翔平選手のように、アメリカで大活躍するスポーツ選手もいるのです。今までとは違い、様々な分野で活躍できる世界が広がってきている証拠です。ぜひ皆さんも果敢に挑戦を続けてください。

学生新聞オンライン2023年8月22日取材 国際基督教大学1年 若生真衣

武蔵野大学4年 西山流生 / 専修大学4年 竹村結 / 国際基督教大学1年 若生真衣 / 立教大学4年 須藤覚斗
 

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