テリー伊藤 コラムVol.13  英国紹介の古い本見つけました

押入れを探っていたら25年前の本が出てきた。『英国の一流品The BRITISH BEST』(読売新聞社1998年発行)。綺麗な写真構成のカタログ本になっている。英国王室御用達ブランドから始まりWEDGWOOD、ROYAL DOULTONなどイギリスが世界に誇る陶磁器類や、花柄でお馴染みのLAURA ASHULEYのカーテンやソファー、超高級車ロールスロイスの革張りシートで知られているCONNOLLY社のバッグなどの逸品が頁を埋めている。ファッション界ではVIVIENNE WESTWOODやKATHARINE HAMNETT。全く古く感じないデザインのPAUL SMITH、Burberrysも紹介されている。自動車界ではロールスロイスからミニまで網羅されているのだ。もちろんイギリス人が最も好むアフタヌーンティーの、格調高い紅茶の数々も。押入れ掃除の途中にも関わらず時間を忘れて古本に釘付けになってしまった。

私が一番驚いたのは25年前の商品だというのに全く色褪せて感じないことだ。普通古い日本のファッションカタログ誌を見た場合、なんとなく時代遅れの感じがするが、それが全くない。それどころか伝統を今に継承しているスタイルにホッとした気分と憧れ感が沸いてくるのだ!これって凄すぎる。日本もイギリスと同じくらい伝統はあるのに。私は流行りの物も大好きだが、この本を読んでいて「伝統を次の世代に伝える意識」が羨ましくなった。

何故なんだろう。日本でイギリス的ライフスタイルができないのは、残念ながら生活環境が違い過ぎるからなのでは。例えば洋服やカフェひとつにしても、ユニクロやスターバックスは大人気でどこのお店も混雑しているが、ジェームスロックの帽子を傍らに置いて優雅に花柄のカップ&ソーサ―で紅茶を飲んでいる人を昼時全く見かけない。私が大好きだった日比谷にあったスコーンが美味しく、紅茶ポットが冷めないようにキルト製ティーポットウォーマーをかぶせてくれた、街の素敵なティールームも無くなってしまった。寂しい。

こんな時代だからこそ伝統を感じる英国スタイルが必要なのでは。価値観を変えるトップファッションも人類の進歩には必要な事だけど、温故知新のことわざを省みることで実は新たなビジネスチャンスが眠っているのでは!

私、人間の感性は意外と進んでいないのではと最近思う。世界中で大人気の新型ミニも初代ミニのスタイルを限りなく継承している。実は統計学的にも世界の80パーセント以上の高額購買者は保守的という数字が出ているんです。イギリス人は古臭い、保守的などと揶揄されますが、もしかしたら世界で一番人間の本質を掴んでいるのかも。そんなことを押入れの前で考えていました!それにしてもポールスミスの細身の黒のタキシード欲しいな~!着ていく所ないけど!

テリー伊藤(演出家)

1949年、東京築地出身。早稲田実業中等部、高等部を経て日本大学経済学部を卒業。
2023年3月、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
テレビ番組制作会社IVSテレビに入社し、「天才たけしの元気が出るテレビ」「ねるとん紅鯨団」などのバラエティ番組を手がける。
その後独立し、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」など数々のテレビ番組の企画・総合演出を手掛ける。
著書「お笑い北朝鮮」がベストセラーとなり、その後、テリー伊藤としてメディアに多数出演。
演出業のほか、プロデューサー、タレント、コメンテーターとしてマルチに活躍している。
YouTubeチャンネル「テリー伊藤のお笑いバックドロップ
LALALA USAでコラム連載中
https://lalalausa.com/archives/category/column/terry

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