monoAI technology株式会社 取締役COO 山下 真輝
メタバースでn対nのコミュニケーションを心がける
monoAI technology株式会社 取締役COO 山下 真輝 (やました まさき)
■プロフィール
1981年愛知に生まれ、20歳の時に起業。
広告代理業、店舗ビジネスなど複数事業を立ち上げ年商15億まで拡大させたのち売却。
その後、SBI証券にて資金調達業務などを行い、イーファクター株式会社(現metaps)に入社。
2013年にライヴエイド株式会社を創業。
2018年からはエンタメ系メディアなど複数立ち上げ、営業利益1億円を達成。2021年3月に弊社取締役XRCLOUD事業本部長に就任。
クオリティの高いバーチャル空間を提供するメタバースプラットフォームであるXR CLOUDを手掛け、メタバース業界初の上場企業となったmonoAI technology株式会社。取締役COOに就任する前にはさまざまな事業の起業を経験された山下取締役に、現在の仕事に生かされた経験や企業の強みなどを伺った。
高校2年生の時に、大手の音楽事務所にデモテープを送ったことがきっかけで、プロミュージシャンとして3年半ほど活動していました。しかし、音楽の先行きが怪しいと思った頃、叔父が起業する姿を見て「おもしろそうだな」と思い、起業にチャレンジしました。
手掛けたのは、メイクサロンや金券ショップ、カレー屋さんなどの店舗ビジネスを立ち上げて、規模を大きくするというビジネスです。
その後、店舗ビジネスのMAの仲介がきっかけとなって、「会社組織もおもしろそうだな」と思ったことから、SBI証券へ入社したり、ベンチャー企業の取締役を担当するなど、組織に入る経験もしました。ただ、そこから「もう一度自分で起業してみよう」と思い、それまで手掛けていた事業を売却して新たな会社を作り、IoT、民泊など、いろいろな事業を展開しました。
そんな中、知人のベンチャーキャピタルを通して、弊社の代表取締役の本城を紹介されました。彼は当時VR事業を行っていたので意気投合し、自分の会社を社員にお任せしてジョインしました。monoAIに入った一番の動機は、「いまこの会社に自分が入って、上場を果たしたい」という大きな目的があったからです。
私が入社した当時は、今の主力ビジネスであるXR CLOUDというメタバースを簡単にできるサービスはまだ試験段階でした。もともと、弊社はクライアントから仕事を受託してゲーム開発を手掛けるエンジニアが多い会社でした。また、営業がいなかったため、新しく営業組織を作るなど、ビジネスや管理体制を整えることに取り組みました。
また、株主に対してどのような見せ方をしたら会社の価値を上げられるかなど、上場に向けて必要な作業は、証券会社での勤務経験や起業の経験が役に立っていると思いますね。そうした努力が実り、2年間をかけて2022年10月に上場できました。
■大人数とクオリティの高いブラウザ
元々ゲーム開発をしていたことを生かして、「モノビットエンジン」というツール上で動くソフトやVRを作るunityのエンジニアが多いため、通信の部分で強みがあります。メタバース空間内に1000人以上が同時に入れるのは、国内でうちだけです。これが大きな差別化ポイントになっています。
また、メタバースを使うパターンにはいくつか種類があります。大きく分けるとブラウザとアプリの2種類です。ブラウザではシームレスに入ってもらえるものの、画素数を落とさなければならないというデメリットがあります。一方のアプリは、画像のクオリティが高いもののインストールをしないと利用できません。両者はそれぞれメリットとデメリットがあります。そこで、うちではクラウドゲーミングという機能を使い、ブラウザで入りつつも、アプリと同じクオリティの画像を提供できるという独自性があります。まさに、ブラウザとアプリ両方のいいとこ取りですね。少しコストがかかるのですが、どちらの利点も得たいというクライアントからは好評です。
■n対nのコミュニケーションを大切に
お客様のやりたいことに寄り添いつつ、n対nのコミュニケーションを必ずコンテンツに入れています。日頃から「こういうものがあった方がいいのではないか」という議論をたくさんするように心がけています。
例えば、展示会や企業内の納会、医療交流会などでは、ユーザー同士で交流できる仕掛けを作るなど、一方通行の情報発信ではなく、コミュニケーションツールとしても活用されています。基本的にクライアントは企業が多いのですが、最近では地方自治体の案件もあります。XR CLOUDだけではなくFortniteの運用もしていて、渋谷の街をゲーム空間にしてPRを行うという取り組みもあります。
1-2年前までは、メタバースは、ライブイベントのような形で活用されることが多かったのですが、n対nのコミュニケーションはほぼ行われないため、興業用にするのが難しい点がありました。しかし、最近はコミュニケーション部分を中心にクライアントの課題解決をする形でメタバースを活用できるので、いい傾向にあるなと感じています。
■一緒に働きたいのは素直な人
リモートが中心の会社なので、素直な人と一緒に働けたらなと思いますね。やる前から「これはやっても意味がないのではないか」という邪念を持ってしまうのは良くないので、食べず嫌いではなく、言われたことはまずいろいろと自分で取り組んでいった中で自分のオリジナリティを出しつつ、PDCAを回していける人がいいと思います。
■産業に組み込まれるメタバースを提供
monoAI technologyは、XRというジャンルにおいて、国内で唯一上場している会社です。今後もその軸はぶらさずに、産業に組み込まれるメタバースという強みを生かしていきたいです。XRというジャンルで言うと、ARはAppleなどがビジョンを出したので、今後も伸びていくという印象を持っています。技術者が多いという強みを活用して、メタバースの非現実な部分に加えて、もう1個の軸としてリアルな場にも拡張現実も進めていないかと画策しています。
■学生へのメッセージ
学生のうちだからと限定せず、何事もいつでもできるのではないかと思っています。一つ挙げるとすると、学生のうちは周りに迷惑をかけられる時期だと思うので、たくさん迷惑をかけてもいいのではと思いますね(笑)。その人がどういう風に生きたいかによってだいぶ変わってくると思いますが、もし起業に興味があれば、大企業ではなく、自分のビジネスに転用できそうな事業を手がける会社にインターンに行き、実際のビジネスの泥臭さなどを味わってみるのもいいかもしれないです。学生時代に事前にやっていると、就職活動の面接などでも、実際は大したことないかもと思えるようになるかもしれないです。
学生新聞オンライン2023年10月13日取材 上智大学短期大学部2年 大野詩織
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