株式会社キャスター 代表取締役 中川 祥太
私たちは決して、リモートワークをやめない。
株式会社キャスター 代表取締役 中川 祥太(なかがわ しょうた)
■プロフィール
ソウルドアウト株式会社にて営業を担当。その後、イー・ガーディアン株式会社にて事業企画を担当。当該部門でクラウドソーシングと出会う。日本市場におけるオンラインワーカーの発展途上な環境にもどかしさを覚え、28歳で起業を決意。2014年9月に株式会社キャスター創業。
「リモートワークを当たり前にする」をミッションに掲げ、フルリモートで組織を運営している株式会社キャスター。創業した2014年当時は、まだリモートワークが普及していない中で、なぜ会社を立ち上げたのか。リモートワークの意義やこれからのあり方について、中川 祥太さんにお話を伺った。
■インターネットを学ぶきっかけ
学生の頃から起業を考えていたわけではありません。もともと音楽をするために東京に出てきたのですが、当時下北沢に住んでいたこともあって、大学2年生の時は古着店で働いていました。その時、店を閉店することになった知り合いのオーナーから声がかかり、店舗を借りて古着店をオープンすることになったんです。以前にテレアポのアルバイトで貯めた資金を元手に開業しました。夜中にバイクを走らせて仕入れたり、店内のレイアウトを決めたりととても充実していましたね。ところが、商品価格は安い上に、店舗が広すぎて商品で埋められない。そんな時、インターネットでシルバーアクセサリーを売っている人に出会いました。当時30代だった彼は、1個150万円ほどするシルバーアクセサリーを売り出してからものの数分で売ってしまう。これはなかなか悔しかったですね。自分がインターネットを活用できていないことを実感し、勉強することにしたんです。そこで、まずはIT関係の会社に就職しました。
■働き方への疑問
就職したIT関係の職場ではアウトソーシングを担当していたのですが、当時、新しい働き方としてクラウドソーシングが注目されていました。これまでもリモートワークという働き方自体は世の中で模索されていましたが、実態としては、大企業で働く人が出産・子育て・介護などの一時的なタイミングで、福利厚生の一環として家で仕事をしていた程度でした。そんななか、クラウドソーシングという働き方が台頭してきたのです。
しかし、クラウドソーシングでは単価が安すぎる案件が多いという問題がありました。クラウドワーカーは業務委託で仕事を得るわけですが、業務委託契約では労働法が適用されないので最低賃金は決められていません。時給換算すると時給100円で働くような案件もザラでした。
もちろん、こんな単価で良い人が集まるわけはありません。次から次に働き手が変わってしまうので、働く環境は一向に整えられません。こうした状況を見て、「自分でリモートワークの会社を興そう」と決意したのが起業のきっかけでした。働き手としてはリモートワークの需要は高い上に、雇用側としてはITの分野では人手不足が進んでいました。需要と供給のバランスが成り立つことを根拠に、リモートワークを中心とした人材事業を進めることにしました。
■リモートワークをやめない
キャスターは、2022年以降ドイツやドバイにも事業を拡大しています。これらの地域は、社会環境と労働環境が日本と似ている所もあり、これまで培ってきたノウハウとスキームを活かせると判断し、最初の海外拠点として選定しました。近しい環境とはいえ、異なる国で弊社のビジネスがどの程度通用するかを検証する目的もあります。将来的には、ヨーロッパ諸国をはじめ、さらなるグローバル展開を計画しています。これまで約10年間にわたり、リモートワークを構築してきたキャスターだからこそできる業務支援を提供することで、日本だけではなく、世界でリモートワークが普及するように事業を拡大できればと思います。
世の中では、リモートワークを廃止する企業も出てきていますが、キャスターは今後もリモートワークをやめません。これは私たちの信念であり、リモートワークで働ける環境を提供することが企業としての優位性を高めると考えているからです。
■需要と供給をマッチさせる
コロナ禍で多くの会社がリモートワークを始めたものの、一時的なものでした。リモートでコミュニケーションをとることは難しいというイメージがあるかもしれませんが、単に慣れていないだけです。例えば、表情や身ぶり手振りはリモートでもわかります。相手の気持ちを読み取りにくいという方もいますが、それはリアルでも同じことです。対面であっても、相手の気持ちを完全に理解するなんてことはできません。リモートワークは特別なわけではなく、リアルで行われていることをバーチャルで構築するだけのことなのです。
実際に弊社ではフルリモートワークをしていますが、社内を見ても、困ったことは全くないですね。働く側のリモートワークの需要は高く、採用倍率は100倍にものぼります。年代は20代から50代、約9割が女性社員、約7割が地方在住です。日本は、地方に行けば行くほど賃金が低くなり、男女間における賃金の格差も大きい。事務職は女性に人気の職業ですが、その仕事のほとんどは東京にあります。地方に住んでいると、周りに何もなく畑仕事しかないという場合もあるので、リモートワークをせざるを得ない人が多いんです。日本では、女性が社会的に評価されにくいという問題もありますが、キャスターでは本人の実力を見極めた上で、チャレンジする機会を提供できるようにしています。
■大学生へのメッセージ
今の若い人たちはとても有利です。人手不足が進み、どんな職業でも自分がリードできる時代が近づいてきています。業種自体が減少している場合を除いて、何でも好きな仕事につける時代です。あと先どうなるのか、失敗するのではないかと不安になっていては非常にもったいない。リスクを恐れるのではなく、どんなチャンスも掴み取るようにしてほしいです。
学生新聞オンライン2023年11月30日取材 上智大学2年 白坂日葵
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