株式会社NATTYSWANKYホールディングス 代表取締役社長 井石裕二
「こんな居酒屋があったらいいな」の想いを実現し、大ヒット!
株式会社NATTYSWANKYホールディングス 代表取締役社長 井石裕二 (いせきゆうじ)
■プロフィール
1974年生まれ、東京都出身。1995年からIT関連業務に従事。独立のため退職し、2001年11月 有限会社ナッティースワンキー(現 株式会社NATTY SWANKYホールディングス)を設立。2011年「肉汁餃子のダンダダン」を開業し、現在に至る。2019年 東証マザーズ上場。
2011年、NATTY SWANKYが創業した餃子居酒屋「肉汁餃子のダンダダン」。長く地元に愛される居酒屋をモットーに、現在136店舗にまで拡大。そんな人気店舗は、果たしてどのようにして創業に至ったのか。店舗の人気はもちろん、人材育成にも力を入れるNATTY SWANKYの魅力に迫る。
■起業の相棒との出会い
大学時代は、経営学部に通っていましたが、たった3ヶ月でやめてしまいました。というのも、学費の半分を自分で賄っていた私にとって、度重なる休講に気落ちしたからです。駅からかなりの坂を登って着いた矢先、掲示板に貼られているのは「休講のお知らせ」。1コマ5000円くらいする講義が、教授の都合でなくなるなんて馬鹿馬鹿しいと思ったんです。学費を無駄にしたくないのはもちろん、休講と知って喜んでいる周囲にも納得がいきませんでした。大学中退後は、フリーターとして2年ほど働きました。親に甘えないように家を出て、ひたすらバイト漬けの日々でしたね。魚の加工場や漬物屋、国立競技場の売店など、とにかくたくさん経験しました。働くのが好きだったんですよね。振り返れば、仕事がつまらないと思ったことは一度もありません。のちに一緒に会社を創業した田中と出会ったのもこの頃でした。週5回も通ってしまうほどお気に入りのラーメン屋があって、そこで働いていたのが彼だったんです。若いのに一際輝いていて、30人分ものオーダーを口頭で全て覚えているのには驚きました。別の場所でばったり会う機会があってから、一緒に飲みに行って、将来について語るようになりました。私はこの頃、学校のネットワークシステムを作る会社にいたのですが、お互い起業を考えていたこともあって、その点でも話が合ったんだと思います。そして、一緒に起業した後、田中はラーメン店、私はダイニングバーを経営することになったのです。
■餃子メインの居酒屋を作りたい
「肉汁餃子のダンダダン」を作った1番の理由は、餃子が大好きだったからです。当時ダイニングバーのオーナー兼店長として毎日お店に出ていたのですが、日頃からお客さんに「餃子は好きですか?」とよく聞いていたんですよ。そしたら、誰一人「餃子が嫌い」と言う人がいなかったんです。それにもかかわらず、餃子を食べる機会といえば、ラーメン店や家が大半で、餃子がメインのお店がないことに気が付きました。自分が欲しかったお店だったし、お客さんの需要の面からも世の中に受け入れられるのではないかと思ったんです。もともと、いろんな飲食店に行くたびに、味や盛り付け、内装などが目に留まって、「どうしてもっとこうしないんだろう」と改善点を考えるタイプでした。他を見ながら、自分だったらこうするだろうなと考えていたことが、飲食店の理想像に繋がったのかもしれません。しかし、ラーメン屋とダイニングバーの営業は、俗人的な業態だったこともあって、なかなか上手くいきませんでした。でも、会社が成長しないと給料も上げられないし、社員も守れない。そこで、創業10年目にして、全てを懸ける思いで3店舗目となる「肉汁餃子のダンダダン」の開業に至りました。
■お店に来てくれるお客さんを大切に
「肉汁餃子のダンダダン」は、現在は136店舗を構えるまでに成長しましたが、その理由は、なんと言っても餃子の美味さでしょう。本当に何度食べても飽きないんですよ。もともと田中がラーメン屋をやっていたので、餃子づくりのノウハウはありました。餃子一筋で勝負するためにも、試行錯誤の末に生まれたのが現在の餃子です。もちろん、開業当時は苦労もありました。2011年1月19日に1号店を出したのですが、直後に東日本大震災が襲い、東京も物資不足や計画停電が続きました。スーパーやコンビニも閉まっている中、わざわざうちを選んで食べに来てくれるお客さんの期待を裏切らないために、何があっても店を開け続けました。ろうそくやヘッドライトを用意して灯を補ったり、計画停電が行われる直前にお米が炊き上がるようにして、発泡スチロールにアルミを引いて保温替わりにしたりするなど、とにかく工夫を凝らしました。スーパーに物がない時期だったので、お客さんにとても感謝されました。また、コロナウイルスが流行した2020年3月、自粛の影響で売上は前年の3分の1にまで下落しましたが、大手デリバリーでの勤務経験がある社員がいたことが幸いし、デリバリーを進めることで対応を図ってきました。お客さんに喜んでもらえることが何より嬉しいので、いつでも自然とお客さんのことが頭にあるのもヒットの理由かもしれません。
■飲食店の決定打は「人」
飲食店では、人材が将来を左右します。味が美味しいのは当然のことで、雰囲気や立地、値段設定も含めて評価になります。そして最後は人。Googleなどで低い評価をつけているのは、味の良し悪しではなく、大半が接客に対する不満です。ファストフードと違って、居酒屋はお客さんとの接点が多いので、接客がさらに大事です。基本的に、飲食業界は立ち上げとともにエスカレーターを下っていくようなもので、10年続く店は1割にも及びません。接客が悪いと、料理は美味しくても全てを台無しにしてしまう。もう一度来たいとは思いませんよね。だからこそ、お客さんとのコミュニケーションは特に大切にしています。例えば、お客さんとの時間を作るために、発注業務などのお客さんに見えない部分の効率化に注力しました。裏での作業を短縮する分、表で関わる時間を増やすということですね。そして今でも、餃子を焼く時間わずか数秒にこだわるなど、改良を重ねています。常にお客さんを喜ばせたいという気持ちがあるからこそ、最適解に辿り着くまで工夫できるのです。
■大学生へのメッセージ
会社には色々な人がいて良いと思っています。ただ、他人に期待しすぎる人は、どこへ行っても仕事の楽しさや面白さを感じることができません。他人に期待しなければ、自分で主体的に考えられるようになります。何もかもが自分の思い通りに行くはずはないと考える方が、より何事も自分事として捉えられるようになり、吸収や成長が早いと感じています。みなさんも、ぜひ「自分で主体的に考えられる人」をめざしてください。
学生新聞オンライン2024年3月6日取材 上智大学2年 白坂日葵
武蔵野大学4年 西山流生 / 上智大学2年 白坂日葵
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