株式会社エブリー 代表取締役 吉田大成
今までにないものを作り、利便性の高い社会へ
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株式会社エブリー 代表取締役 吉田大成(よしだたいせい)
■プロフィール
ヤフー株式会社、グリー株式会社を経て、2015年9月、株式会社エブリーを創業。2017年、「Forbes JAPAN 日本の起業家ランキング2018ライジングスターアワード」第1位を受賞。同年、「DELISH KITCHEN」がApp Store・Google Play共に「BEST OF 2017」に選出。エブリーとしても「Forbes JAPAN WOMEN AWARD 2017 企業部門 300名未満の部」を受賞。
レシピ動画メディア『デリッシュキッチン』などを運営する株式会社エブリー。
料理・育児など日常生活に関わるメディアコンテンツを通じて、利便性の高い社会の拡大に大きく貢献している。今回は代表取締役である吉田大成さんに、起業までの道のりや事業内容、そしてエブリーの目指す社会についてお伺いした。
大学1~2年生の時には、アルバイトに力を入れていました。普通のアルバイトをしたくなかったので、飲食店での集客や名古屋ドームでビールの売り子などをしていましたね。自分の成果が給与に反映されることが、モチベーションにつながったのかなと思います。
大学生活の後半では、エンジニアとしてのスキルを高める目的で、ホームページの制作受注や大手企業との共同研究をゼミで行なっていました。当時から将来的にエンジニアリングを用いて社会課題を解決したい、社会にインパクトを残したいという気持ちがありましたね。当時は、会社経営や企業には興味はありませんでした。
僕が在籍していた工学部の生徒の大半は、研究職の道に進みます。しかし、研究職は成果が出るまで数十年かかるのが一般的なうえ、成果が出るかもわからない世界だと言われています。しかし、海外では20代の人たちがインターネットを用いて、社会課題を解決するなどの成果を挙げていました。自分ももっとスピード感をもって仕事をしていきたいと思い、当時、インターネット業界でNo.1だったヤフー株式会社に入社をしました。
■社会インフラに向き合う姿勢を学んだ一年半
ヤフーに在籍した1年半では、非常に多くのことを学びました。エンジニアとして大規模なWEBサービスの基盤をみたり、サービスの品質へのこだわりや社会インフラに対して向き合ったりなど、今につながる経験を多数積むことができました。
一方、ヤフーでは、海外のサービスを日本に持ってくることがメインの業務でした。そのため自分たちで何かを発信して社会にインパクトを残すといったことは、あまりできない環境でした。当時からインターネットは「どこでも・誰でも」サービスを発信できるのが強みだと考えていたことから、日本をサービスの発信地にしたいと思うようになりました。そこで、ヤフーを退社し、ゲーム会社のグリー株式会社に転職をしました。
■正しい情報が届くインフラづくりへ
グリーで過ごした10年間では、ゲームを開発しつつ、モバイルゲーム業界の開拓に努めていました。日本初のモバイルゲームを世界に発信できたことは、今でも誇りに思っています。
ゲーム業界での技術革新が進む中で、高性能なスマートフォンが年代問わず多くの人に普及していきました。しかし、自分の母親の世代は、検索などの機能をうまく使いこなせていないという実情を垣間見るようにもなりました。しかも、「検索結果の一番上=正しい」と認識してしまい、情報の取捨選択が難しくなっている。その様子を見るようになってから、「信憑性のある正しい情報を発信していけるインフラ・サービスを提供しよう」と思うようになりました。グリーを含む多くの企業は、そこに焦点を当てていなかったため、自身が起業する形で、株式会社エブリーを立ち上げました。
立ち上げ当初は、再生回数が乏しく、厳しい状況でした。でも、その中でもユーザーやマーケットに対して、コンテンツを提供し続けることで、データを集め続けました。仮説を立てるよりも、アウトプットを繰り返す方が、ニーズなどを確認しやすいからです。そのデータを分析して再度アウトプットをすることを、ひたすら繰り返したことで、一か月後には再生回数が大きく伸びました。現在でも、アウトプットをし続ける「感性」の部分、得られたデータの「数字」の二つの要素は、当社の大事なカルチャーとなっています。
■3つの情報メディアを軸に、より便利な社会へ
当社では「デリッシュキッチン」「トモニテ」「TIMELINE」の3つを主軸にサービスを展開しています。それに加えて、メディアと小売店・店舗といった「オフライン」の世界を繋げるリテールメディアを展開しています。
4つのサービスの根幹には、「世の中がどれだけ良くなるか」という思いがあります。世の中が当社に求めているのは「日常生活の利便性を高めること」です。そのために当社では日々、技術と情報のアップデートをし続けて、ユーザーに継続利用してもらえるようにしております。
まず「デリッシュキッチン」では20〜30代の料理初心者を含む幅広いターゲットに、「だれでもおいしく簡単に作れるレシピ」をテーマにして、サービスを提供しています。文字と写真をベースにした既存のレシピサイトでは、料理初心者がレシピの難易度や味を想像するのが難しい傾向にありました。そのため当社では、実際に調理する人と同じ目線になるように、調理シーンはすべて動画で手元を映しています。また、全レシピを管理栄養士が監修し、なおかつ調理手順や衛生基準といった300項目以上のルールを設定しています。そのため、手軽さ・味・栄養などが保証されたレシピを提供できています。
「トモニテ」では、子育て世代を対象に育児に関する情報を発信しています。現在、子育ては女性だけが行うものではなく、家族やコミュニティ全体で行うものだと社会全体が変化しています。その際に、起こりうる課題や不安を解消するためのコンテンツを、専門家の監修のもと提供しています。最終的には子供を産むこと・育てることへの不安を解消することが目標になっております。
「TIMELINE」では、動画×マーケティングのサービスを提供しています。地方の名産品やアピールポイントを、当社のメディア媒体を通じて全国に発信することをサービスとしており、メディアを通じた地方創生を行っています。タイアップ動画の制作やWEB広告、ライブコマースなどの媒体を通じて、お酒や土鍋といった名産品から話題のスポットまで幅広く情報を発信しています。
■「野心」と「挑戦」がより良い社会と新たな安定を生み出す
当社は、今までにないものを作り、社会をより良くすることを目標に掲げています。
そのため、何かを成し遂げたいという野心をもった人と一緒に働きたいと考えています。人生において、社会に出て働く時間は非常に大きな割合を占めています。安定した給与や仕事を好む人たちも増えていますが、せっかくならその時間は社会を良くする・生活を便利にすることに使う方が、より有意義なものになると思います。そして学生の皆様には、在学中に野心が湧いてくるもの・人生を賭けて成し遂げたいことを見つけてほしいです。もし仮に在学中に見つからなかった場合は、ぜひ当社のようなベンチャー企業に入社をしてほしいです。ベンチャー企業は野心をもった社員が多いため、一緒に仕事していく中で見つかるかもしれません。
また「安定」という言葉を改めて考え直してほしいと思います。現在、社会では終身雇用がなくなり、実力主義に変化してきています。国としても「安定」の反対の存在である「ベンチャー企業」に期待やリソースをかけています。そのためお金や優秀な人材も集まってきています。将来性や自身のキャリアを考えるうえでも、スキルを磨いてキャリアの選択肢を増やすことも、一種の安定といえるかもしれません。選択肢を増やすうえでもベンチャー企業をキャリアのスタートにぜひ選んでほしいです。
学生新聞オンライン2024年11月8日取材 武蔵野大学4年 西山流生
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