株式会社Progmat 代表取締役 齊藤達哉
新しい金融インフラをつくる挑戦と変革

株式会社Progmat 代表取締役 Founder and CEO 齊藤達哉 (さいとうたつや)
三菱UFJ信託銀行株式会社 Adviser
一般社団法人日本セキュリティトークン協会 理事
■プロフィール
2010年、三菱UFJ信託銀行に入社。法人営業、業務企画、IT企画を経て、2016年にFinTech推進室設立、1人目の専任担当として三菱UFJ信託銀行のデジタル戦略を企画・推進。
“シリアルイントレプレナー(連続社内起業家)”として、情報銀行基盤「Dprime」、デジタル証券基盤「Progmat」、ステーブルコイン基盤「Progmat Coin」、機能型NFT基盤「Progmat UT」、数多くの組織が入会する「デジタルアセット共創コンソーシアム」等を立ち上げる。
2022年、複数の金融機関や取引所、ソフトウェア企業の出資による、デジタルアセット基盤事業の独立会社化を発表し、2023年10月創業より代表就任。特許登録8件。
金融は社会の仕組みを支え、人々の生活を豊かにする。そんな想いから、より多くの人が安心して利用できる仕組みづくりを通じて、新たな可能性・金融インフラの提供に取り組む株式会社Progmat。今回、同社の代表取締役Founder and CEOである齊藤達哉さんに、Progmatの活躍と大学生が持つべき心構えについて伺った。
◾️証券とお金を繋ぐ新しい金融インフラ
私たちProgmatは、新しい形の金融のインフラを提供しています。事業内容は大きく二つあります。一つ目はみなさんが投資可能な資産の新しい市場を創る事業です。具体的には、これまで機関投資家しか取引できなかった非上場証券や資産そのものをトークン化(ブロックチェーン上のデータとして移転可能な形にすること)し、個人でも少額からアクセスできる仕組みを提供しています。二つ目は送金や決済の新しいネットワークを創る事業です。日本円や米ドルをトークン化することで、特に海外送金において発生する様々な問題を解決し、国境を越えた資金移動をスムーズにできます。従来の海外送金は複数の銀行を経由するために手数料が高額で不透明だったり、送金完了までに数日を要したりすることが一般的でした。しかし、Progmatが提供するインフラを活用することで、多様な地域との送金を即時かつ低コストで実現します。
Progmatは、国内で唯一、資産やお金をトークン化するプラットフォームをどちらも提供しています。このような独自のポジションを築くことができた背景には、ブロックチェーン技術と信託法を融合させている点があります。私の信託銀行員時代に、社内の専門家の皆さんにアクセスできる関係性と知見を得て、それをブロックチェーン技術と組み合わせることで、競合他社が容易に真似できないユニークなサービスを作り上げることができました。特許を8つとれたのも、信託とブロックチェーンを結びつける取り組みは世間一般では希少だからです。実際、この分野では日本国内はもちろん、世界的に見ても同じことをしている企業はごく少数しか存在していません。私たちは、資産とお金の流れをより自由にし、社会全体の取引を活発化させるインフラを提供しています。こうしたProgmatが提供するユニークな金融インフラが実現した背景には、私自身の予測できなかったキャリアの道筋が深く関係しています。
◾️予測不可能だからこそ面白い人生
今振り返ってみれば、私のキャリアは先が見えない状態で始まったものでした。私は青森県青森市で生まれ育ち、大学は東北大学の経済学部で過ごしました。学生時代は特に真面目なタイプではなかったです。就職活動では幅広く業界を見ましたが、金融業界特有の、民間サービスと公共インフラの中間のような独自のポジションに惹かれました。三菱UFJ信託銀行に入社後、当時希望していた法人営業も若手のうちに経験できましたが、キャリア的な失敗や意図しないバックオフィス部門への異動もありました。非常に戸惑い、正直なところ退職を考えたことも1度ではないのですが、私は時々の上司からもらった「転ぶことはある。立ち上がるかどうかは自分次第」「捲土重来」の言葉で奮起。部長直下でエンジニアと二人三脚で取り組んだ立て直しプロジェクトが、その後の大きな転機になりました。結果として生産性を劇的に上げられたことで、部署内外からの評価を得ることができました。この成功体験がきっかけで新設されるIT企画部署に呼んでいただき、「FinTech推進室」の立ち上げを企画することになります。唯一の専任担当者として数々の新規事業に挑戦し、その一つが、現在のProgmat事業です。
キャリアを通じて私が学んだ最も重要なことは、「目の前のことに全力で取り組む姿勢」です。キャリアプランは、描いた通りに進まないことが多く、予測できない出来事や異動、変化が必ず起こります。しかし、その予期せぬ状況に遭遇したときにこそ、自分の可能性を広げるチャンスがあります。入社当時は、まさかブロックチェーンを駆使するスタートアップの代表をやるとは想像もしていませんでした。しかし、常に目の前の課題に誠実に取り組んだ結果として、新しい事業の立ち上げや独立のチャンスが訪れました。人生に偶然はつきものです。キャリアの中で訪れる偶然を前向きに受け入れる姿勢こそが、自分の可能性を広げる最大の鍵だと実感しています。思い通りにならないことがあったとしても、それをチャンスに変えられるかどうかは自分次第です。その時々の環境で精一杯努力することで、新たな未来を切り拓くことができるのだと思います。
◾️大学生へのメッセージ
大学生の皆さんに伝えたいことは二つあります。一つ目は「計画的偶発性理論」です。人生は予測がつきませんが、だからこそ変化が起きやすい環境に身を置くことで、予期せぬ素晴らしいチャンスに巡り合うことができます。迷ったら常に変化が多い選択をすることをおすすめします。私自身もキャリアの中で、最初は想像もしなかったバックオフィスの仕事を任されました。最初は落胆しましたが、それが結果的に次の大きなチャンスに繋がりました。自分では選ばないような出来事も、前向きに取り組むことで大きな転機になりうるのです。二つ目は、スティーブ・ジョブズが語った「コネクティング・ザ・ドッツ」です。これは今やっていることの意味が、その瞬間には分からなくても、後になって必ず意味を持つという考え方です。私も学生時代や社会人になってから経験した数々の困難や予期せぬ出来事が、後から振り返ると現在の成功の土台になっています。例えば、IT企画の仕事やFinTech推進室の立ち上げなど、一見関係のないような経験も後に全て繋がっているのです。皆さんも、目の前の小さな挑戦を決して無駄だと思わず、一つ一つ全力で取り組んでください。それが未来を形作る重要なピースになることを信じて進んでほしいと思います。
学生新聞オンライン2025年2月14日取材 東京大学 4年 吉田昂史

中央大学 3年 向井来幸/京都芸術大学 1年 猪本玲菜/東京薬科大学 2年 庄司春菜/城西国際大学 1年 渡部優理絵/東京大学 4年 吉田昂史
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