際コーポレーション株式会社 代表取締役 中島武
唯一無二の感性とオリジナリティで飲食業界を席巻する。

際コーポレーション株式会社 代表取締役 中島武(なかじまたけし)
■プロフィール
1948年福岡県生まれ。’70年 拓殖大学卒業。東急航空㈱、東洋ファクタリング㈱を経て’82年に独立、翌年デモデトレーディング㈱(軽衣料品輸入卸)を設立。’90年際コーポレーション㈱設立。「紅虎餃子房」を代表とする中華、和食、イタリアンなどの飲食業態、アンティーク家具や骨董器、アパレル、ホテル・旅館を展開。ライフスタイル全般に関わる店舗を運営している。
全国各地に300を超える店舗を運営する際コーポレーション。代表取締役の中島武氏は、その類い稀なセンスで「紅虎餃子房」や「万豚記」をはじめ、ジャンルを問わず、数々の事業で成功を収めてきた。どのような信念のもと飲食業界に飛び込み、展開してきたのか。学生時代の経験から今後の展望までお話を伺った。
小さい頃から弱虫だった私は、「強い人になってほしい」という母の思いのもと、拓殖大学の附属高校に入学し、その後、応援団を立ち上げました。応援団への熱中は、拓殖大学進学後も継続しました。当時は、男臭い友人に揉まれながら、将来どうしたら人間として恥ずかしくない生き方ができるのかをずっと模索していたのを覚えています。大学卒業後は普通のサラリーマンとして一般企業に入社したのですが、1ヶ月で辞めてしまいました。自分が大学4年間で抱いてきた希望は、ここでは叶えられないと感じてしまったんです。
その後は、大学生時代に取り組んでいた海外ボランティアでの経験もあってか、「いつかは独立するんだ」という強い気持ちのもと職を転々としていました。35歳で独立、不動産会社を始めましたが、バブル崩壊も重なり、業績は悪化。正直、お手上げ状態でした。それでも、「誰かに頼るのではなく、自分で道を切り開かなければいけない」と思い、これまでのスキルや仲間をすべて捨てて、新たに飲食業界に踏み出すことを決めました。
◾️スキルゼロの状態から話題性ある店舗を展開
その後、学生時代から慣れ親しんでいた街、福生で中国料理屋を始めることを決意しました。中国料理店を始めたのは、台湾や香港など海外に何度も訪れるなか、海外と日本の中華料理屋の味の違いに疑問を持ち、現地っぽさのあるお店の展開を夢見たからです。スキルゼロから始めましたが、あっという間に話題性を呼び、正直自分でも驚きましたね。
2軒目は目黒の鷹番に、かつて高級外車を販売していたときのショールームを改装して香港料理を出す高級中国料理店を始めました。でも、ある日近所から来てくれていたお客さんから言われたんです。「毎日ここに来るには高いから、安くてもっと気軽に楽しめるお店を作って欲しい」と。そこから、八王子の川沿いの空き店舗を改修し、新たなお店「万豚記」を開業します。合計約450万円の出資をもとに、踏み出しました。すべてが初めてで、どうなるかまったく予想もつかないスタートでしたが、12席しかない小さな店舗で、1500万円の売上を記録することができました。その後も一軒家の空きスペースなどを活用し、「紅虎餃子房」や「万豚記」をはじめとする安くて手の届きやすいお店をオープンしました。3年間で30億ほどの売り上げを記録したときは、流石に自分でも天才なんじゃないかと思いましたよ(笑)。さらに、その頃には、ハンバーガー屋やイタリアンも展開していました。
◾️目線は低く。オリジナルの精神で。
事業を展開する際は、「人と違うことをする」というオリジナルの精神をずっと持っています。もともと古着屋やアンティーク屋をやっていたこともあり、店舗のスタッフがTシャツを着て働く文化を日本で初めて導入するなど、あらゆる所にこだわりを持っていました。
周囲の同業者の方を見ていると、海外の三つ星レストランなどの高級レストランを真似た事業を始める人が多かったように思います。しかし、私は反対で、路地裏のお店など街中のお店に目をつけ、「これを日本に導入したら面白いんじゃないか」という視点を持って、ビジネスを始めました。たまには自分も格好つけて高いフレンチのお店などを始めたいと思うこともありましたが、それよりも「どんな人達でも楽しめるお店を作ろう」と意識したことが、結果的によかったんだろうなと思います。
さらに、身近に溢れているような事業であっても、オリジナル性を取り入れています。たとえば、とんかつ屋のオープンに伴い、厚切りとんかつや骨付きとんかつを導入した際は、世界各国から注目され、他チェーン店に真似されるほどでした(笑)。また、うなぎ屋を開業した際も、生きたうなぎを見せるというライブ感や、蒸さないうなぎを提供するなど、他店にはない工夫をしています。当時はコロナ禍で、客足も途絶え、飲食業界は大打撃を受けていたので、あえて昼夜で値段の変わらないうなぎに目をつけました。宣伝方法はSNS一本だったものの、安さと質へこだわったことが、瞬く間に客足を獲得できた秘訣だと思っています。
繰り返しになりますが、みんながやっていることをやっても成功はしません。マーケットを分析すると、成功の秘訣が見えてきます。格やブランドにこだわらず、誰もが憧れるようなカフェではなくて、あえてとんかつ屋にチャレンジするような独自性が必要なのだと思います。
◾️感性とアイデアで働き手が誇れる会社に
お店作りでは、訪れた人々の記憶に残ること、インパクトがあること、過ごしていて楽しい雰囲気を提供することが大切だと思います。一方で、今の時代は働き手が少ないからこそ、今後は働き手が誇れるようなお店にしていきたいです。
例えば、餃子屋よりもビストロを始めた方が、若い働き手を取り込みやすくなるかもしれません。しかし、「有名人やDJが集まる餃子屋」と聞いたらどうでしょうか。それだけで「格好良いお店」になりますよね。こうした感性やアイデアのもとで働ける環境にしたいと思っています。
◾️大学生へのメッセージ
リスクを選ばなければ大きな糧は得られません。だからこそ、学生のうちに常にチャレンジをして、リスクのある選択をしていってほしいと思っています。たとえ一流企業に入っても、会社の名前が無くなった定年退職後には、自分自身の生きる力や魅力が必ず問われます。年をとっても輝いている人、いわゆる価値あるビンテージ品になるためには、仕事が一番大事です。たまには計算もしないで、感性に頼り、リスクをとりながら何かを発見していってほしいなと思います。
学生新聞オンライン2025年4月3日取材 田園調布雙葉高等学校3年 伊藤凜夏

法政大学4年 島田大輝 / 城西国際大学2年 渡部優理絵 / 田園調布雙葉高等学校3年 伊藤凜夏
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