株式会社サマンサグローバル ブランディング&リーサチインスティチュート 寺田 和正

ピンチだなと思ったときが大きなチャンスである


株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド ファウンダー 株式会社サマンサグローバルブランディング&リサーチインスティチュート 代表取締役社長 
寺田 和正(てらだ かずまさ)

■プロフィール

広島県福山市出身。駒澤大学経営学部卒業。
1991年 海外ブランド輸入代理会社設立
1994年 株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド 設立
2019年 代表取締役社長を退任。
2020年 株式会社サマンサグローバルブランディング&リサーチインスティチュート設立

人を喜ばせたいという想いの強い寺田社長。人とのつながりの大切さ、その根本にある「感謝と尊敬」、ピンチをチャンスと捉えることによって生まれる「運と縁」。これらのことを大事にすることで活路が開けるという。その心構えを創業者ならではの視点で語っていただいた。

 私の父は広島にある鉄工所の5代目の社長で、非常に格好よく、憧れの人でした。子ども心に会社を継ぎたいと思っていましたが、中学2年の冬に、2つ上の兄が継ぐことを知りました。私はがっかりしましたが、次男なので仕方がないと思い直し、それからは自分で起業しようと思い、一生懸命会社を作るための勉強をしました。
 私は次男に生まれて会社を継げないと分かったとき、なんて運が悪いのだろうと思いました。しかし、ピンチだなと思ったときにどうチャンスに変えていくのかが大事です。長男に生まれなかったからこそ今の会社があるのだし、今では父親の会社を継ぐよりも自分の作った会社の方が自分にとって良かったと思っています。ピンチのときこそチャンスであり、チャンスと捉えることで運が開けるのです。

■会社を作るために何をすればいいのか

 大学2年のときですが、起業をするには英語が必要だと感じ、留学を決意しました。しかし、当時は英語を話す機会もなく、人前で英語を話すのは恥ずかしいとさえ感じるような時代でした。そこで中学生に英語を教えることを思い立ちました。塾講師なら生徒に英語を教えながら英語を話すことができますし、文法を基礎から学ぶこともできてとても勉強になりました。
 大学3年のときに休学してカナダに留学するのですが、ここでもまたピンチが訪れます。留学の間際に父親が倒れてしまい、自分で留学費用を捻出しなければならなくなったのです。このピンチをチャンスに変えるために、カナダで2つのビジネスを始めました。一つはカナダ人を英会話の先生として日本に派遣するビジネスです。もう一つは、カナダ産の革のジャンパーを日本に輸出し、知り合いの商社が開催する催事で販売するビジネスです。この革ジャンのブランドビジネスは上手くいったのですが、英会話の先生の派遣ビジネスは上手くいきませんでした。人の管理が思うようにいかず、やはり人を扱うビジネスは難しいと実感しました。しかし、この経験から人とのつながりがビジネスを生んでいくのだということを実感しました。

■仕事をしていく上での大事なこと

 その後、大学4年になってもカナダにいることが多く、カナダの毛皮ビジネスも順調でした。このまま会社を立ち上げ、起業しようかと思ったのですが「、こんなに上手くいくわけがない」と思い、考え直しました。
 会社経営をするためにも一度会社勤めをしないとサラリーマンの気持ちがわからないと思い、ある商社で2年間働きました。そのときに実感したのは、人は「やりがいがあっても給与が悪いと文句を言う」「プライドがあるほどやりがいがないと文句を言う」「給与が良くてもやりがいがないと文句を言う」ことです。自分が会社を作るときは、やりがいがあり、プライドが持てて、良い給与を出せる、そういう仕事をやりたいなと思いました。

■ブランドもので起業する

 この経験で学んだことを生かして起業するには「ブランド」だと思いました。ブランドといっても、お金がないので車や時計は作れないなと感じていました。また、洋服とは違い、バッグは持っているとどこのブランドかがわかりやすいことにも気づいたのです。そのとき、「バッグが一番作りやすい」と直感的に思いました。
 しかし、私はファッション自体わからないし、ファッション系の知り合いは一人もいなく、ピンチだと思いました。当時は雑誌が流行を決める、それをテレビが追いかけるという時代でした。雑誌に取り上げてもらうだけでビジネスとして成り立つくらいの勢いがありました。しかし、雑誌で取り上げてもらうのは至難の業です。それだけ雑誌は敷居が高かったのです。
 当時、4人で会社を経営していたのですが、雑誌社に電話をかけることに全員が反対しました。しかし、反対されたことで私はむしろチャンスだと感じました。運良く会ってくれる雑誌社の方がいて、少しずつ関係を築きながらお付き合いをしていくうちに、次に来る流行の情報を教えてくれるようになったのです。仲良くしていただきながら常に心がけていたのは、相手が求めていることを先読みし、行動することでした。人との出会いをいかに活かすかが大切なのです。

■message

ピンチを感じないとチャンスは生まれません。コロナで大変ですが、こういうときだからこそ人と同じことはしない、人がやっていないことをしないと勝つことはできません。今はチャンスの時代なのでピンチを楽しんでチャンスをつかんでほしいと思います。
 人間は「~したい」か「~しなきゃ」の2つの感情で動きます。おいしいものを食べたいと思う感情、学校に行かなきゃと思う感情のことです。いやなことでもしないといけないもの、「~しなきゃ」を「~したい」に変えていくことが大切です。そのためには明確な目標と目的をしっかりと持つことです。ここをきちんと決められると半分くらいは目標を達成したようなものではないでしょうか。

学生新聞2021年4月号 日本大学3年 辻内海成


日本大学3年 辻内海成/日本大学3年 大橋星南/駒澤大学4年 安齋英希/日本女子大学2年 神田理苑/津田塾大学3年 松本麗奈/青山学院大学2年 鈴木理梨子/明治学院大学3年 小嶋櫻子

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