横須賀市長 上地克明

変化を力に進むまち、横須賀

横須賀市長 上地克明(かみぢ かつあき)

■プロフィール
昭和47年 神奈川県立横須賀高等学校卒業
昭和52年 早稲田大学商学部卒業
同    株式会社ニチリョウ入社
昭和53年 衆議院議員田川誠一秘書
     新自由クラブ神奈川県広報副委員長就任
昭和58年 川崎市宮前区より最年少で神奈川県議会議員選挙初出馬
昭和62年 横須賀市より神奈川県議会議員選挙出馬
平成15年 横須賀市議会議員初当選(当選4回)
平成20年 原子力空母調査のため団長として訪米
平成23年 「横須賀市中小企業振興基本条例」を提案
平成24年 「横須賀市地域を支える条例」を提案
平成25年 「ニューウイング横須賀地域主権会議」を立ち上げ
平成29年 第37代横須賀市長就任
令和03年 第38代横須賀市長就任
令和07年 第39代横須賀市長就任 現在に至る

「人が泣いている顔を見たくない」と語り、政策を次々に打ち出す横須賀市長・上地克明氏。保育無償化や給食改革に加え、全国初のChatGPT全庁活用で庁内業務の効率化を図る。基地のある街として多国籍文化が息づく横須賀で、新しいアイデンティティを築く。市長に至るまでの歩みや大学生へのメッセージを伺った。

私は大学時代、政治一色で、それ以外にはほとんど興味がない学生でした。公正ではない現実に強い違和感を覚え、人が泣く社会ではなく、笑顔で生きられる社会をつくりたい。その思いが、日本を変えたい、政治に関わりたいという行動につながりました。改革運動に積極的に参画し、横須賀で仲間を集め、選挙や政治活動の現場に身を置き続けました。将来は総理大臣になって世の中を変えたい。そのくらいの覚悟で突き進んでいたのです。
大学卒業後、すぐに政治の世界へ一直線というわけではありませんでした。師匠から、「すぐ秘書になるのではなく、まずは社会勉強が必要だ」と助言を受け、民間企業に入りました。経理や財務を担当し、事業経営の現場を学んだ経験は、その後の政治人生において大きな財産になっています。行政と民間、両方の論理を理解できることは、政策を現実のものとして形にしていくうえで欠かせないと感じています。
その後、横須賀の仲間や若者たちに背中を押される形で、市議として市政の現場につきました。市長になった今も、私は政治を目的だとは考えていません。誰かの役に立つための手段であり、社会を少しでも良くするためのツールです。不公正を正し、人が笑顔で暮らせる社会をつくる。その思いは、学生時代から今も変わっていません。

■自然・歴史・多様性が重なるまち、横須賀

横須賀は、「いい感じで都会、いい感じで田舎」の街です。自然が豊かでありながら都市機能もあり、暮らしの距離感がちょうどいい。さらに、基地のある街として多国籍な文化が日常に溶け込んでいます。外国の方が特別な存在ではなく、生活の一部として共に暮らしていることが、この街の大きな特徴です。
街の中で多様な国籍の人々と日常的に接する環境があるからこそ、英語教育は特別なものではありません。教室内だけで完結せず、日々の暮らしとつながった学びとして自然に根づいています。多様な背景を持つ人が交わり、違いがあるからこそ助け合いが生まれる。横須賀には、そうした土壌があります。
また、三浦半島の歴史や文化も、この街の大切な資源です。私は横須賀のアイデンティティをつくり直すことに力を入れてきました。地域の歴史や価値を見つめ直し、言葉にし、形にしていく。それは観光のためだけではなく、ここに住む人が「横須賀にいる意味」を実感するための土台づくりだと考えています。
横須賀の魅力は、自然や歴史だけではありません。多様な背景を持つ人が交差し、価値観が混ざり合う環境そのものが、この街の強みです。違いがあるからこそ、助け合いの必要性が見える。地域を大切にし、人が人を支える社会に近づける。その舞台として、横須賀には大きな可能性があります。

■暮らしを支える政策、進化する行政

市長として私が最も大切にしているのは、まず横須賀に暮らす人たちが幸せであることです。37万人の市民が安心して暮らせる環境を整えることを、何よりも優先してきました。外に向けた派手なアピールよりも、内側の暮らしを強くすることが、街の持続性につながると考えているからです。
その考えのもと、子育て、教育、福祉の分野では、できることを一つずつ積み上げてきました。政策に一発逆転の魔法はありません。日々の暮らしを少しずつ楽にしていくための積み重ねです。幼稚園・保育園の段階的保育料の無償化や、中学3年生までの小児医療費の無償化と所得制限の撤廃、放課後の居場所づくり、中学校完全給食の開始、教育現場のデジタル環境の推進、電子図書館の導入など、できる施策を一つずつ進めてきました。
また、横須賀市が特に力を入れているのがDXです。私自身、変化を恐れず、変化を力に変えて前へ進むことを大切にしています。そして行政は前例や手続きが重なりやすい世界だからこそ、やり方を変えなければ人が疲弊してしまいます。事務作業はテクノロジーに任せ、人は人に向き合う。その環境をつくることが、行政の役割だと考えています。その一環として、横須賀市では全国に先駆けてChatGPTの全庁的な活用を開始しました。
一方で、やることが増えるほど、財源をどう捻出するか、国の制度とどう向き合うかという課題も常につきまといます。権限や財源のあり方には、まだ大きな壁があると感じています。だからこそ私は、国や県の枠に寄りかかるのではなく、横須賀として何ができるのかを積み上げていきたい。三浦半島の周辺自治体とも連携しながら、地域として自立する気概で取り組んでいます。
私は変化のない状態が苦手で、毎日全力で走るタイプです。政策はあくまで戦術でしかありません。だからこそ、打てる手は打ち続ける。止まったら終わるという感覚で、これからも走り続けます。

■大学生へのメッセージ

小さくてもいいので、目標を持ってください。目標がないと、人生はどこか空虚になってしまいます。職業名のような具体的なものでなくても構いません。自分は何によって生かされているのか。自分の個性はどこにあるのか。何を大切にしたいのかを、ぜひ考えてみてほしいです。それが人生の土台になります。
また、情報はAIが網羅する時代です。だからこそ、自分の経験から生まれる主観が大切になります。AIから見れば偏りかもしれませんが、偏りがあるからこそ、人は自分の人生を歩めるのだと思います。
考え方が変われば、運命の扉は開きます。ベクトルを変えることを恐れず、自分を信じて生きてください。幸せに向かって全力で生きる積み重ねが、人生のウェルビーイングにつながると、私は信じています。

学生新聞オンライン2026年1月26日取材 津田塾大学3年 石松果林

武蔵野美術大学 1 年 石井生成/東京女子大学 2 年 浮田梨紗/津田塾大学 3 年 石松果林/田園調布雙葉高等学校 3 年 伊藤凜夏

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。