熊谷市長 小林哲也
次世代へつなぎ決断力で切り拓く熊谷市の未来戦略

熊谷市長 小林哲也(こばやしてつや)
■プロフィール
熊谷市の第5、6代市長。スキーと読書を趣味とする。中央大学経済学部を卒業。父は、1市2町による合併前の旧熊谷市長。「新熊谷ブランドの創造」を政策理念に掲げ、子どもたちが未来に希望をもち笑顔で暮らせるまちの実現のため、「熊谷で暮らすことの価値が実感できるまち」、「市民の皆様はもとより市外の皆様にも誇れる熊谷」を創ることを目指す。
父親の影響から行政を身近に感じる環境に身を置きながらも、一度は民間企業へ就職した小林市長。晩年の父親の志を受け継ぎ、熊谷市を政治でよりよい街へ変えるため、地域への責任と使命感から県議会議員を経て同市の市長に。現在2期目の小林市長に熊谷市の未来を見据えた戦略を伺った。
私は現在、熊谷市長として市政を担っていますが、もともと政治一直線の人生を歩んできたわけではありません。学生時代はテレビ局やスキーツアーの企画運営のアルバイトなど、幅広い分野に挑戦してきました。多様な人と関わり、現場で汗をかく経験を重ねる中で、調整力や発信力、そして人の思いを汲み取る力を養ってきたと感じています。
父が市長を務めていたこともあり、政治は身近な存在でした。しかし当時の私は、政治の世界に対してどこか距離を置いていました。理想だけでは進まない現実や、批判と向き合う厳しさを近くで見ていたからです。それでも父の病気をきっかけに、「自分がやらなければ誰がやる」という覚悟が芽生えました。そこから県議会議員、県議会議長を経て市長へと歩みを進めることを決めました。政治活動のなかで、一貫して大切にしてきたのは信念を曲げないことです。立場が変わっても軸を持ち続けることが、組織を動かし、市民の信頼を得る基盤になると信じています。
■自ら決断する責任と都市基盤整備の推進
市長という立場の最大のやりがいは、自ら判断し、最終決定を下せることです。もちろん責任は重いですが、だからこそ挑戦する価値があります。
具体的には、埼玉県と共同で整備を進める北部地域振興交流拠点施設・市庁舎の整備や荒川かわまちづくり、利根川新橋の建設などです。とりわけ30年来の課題であった利根川新橋の建設は、市民の悲願でもあります。橋が完成すれば交通動線が改善され、物流や通勤の利便性が高まり、都市全体の生産性の向上につながります。これは単なるインフラ整備ではなく、都市の競争力強化を見据えた戦略的投資だと考えています。
■子育て支援の拡充とワンストップ体制の構築
少子化対策は自治体経営の最重要課題の一つです。私は0〜2歳児の保育料無償化をスタートさせ、国の制度と合わせて実質的な完全無償化を実現しました。子育て世帯の経済的負担軽減は、定住促進にも直結する重要施策です。
さらに、子育て支援・保健拠点施設「くまキッズ」を令和8年4月に開設し、保育所や放課後児童クラブのほか、母子健康センターや保健センター、休日・夜間急患診療所を集約しました。これにより、相談・健診・医療を一体的に提供するワンストップサービスを構築しています。行政サービスは分かりやすく、使いやすくなければ意味がありません。利便性の向上こそが満足度向上につながります。
■熊谷の強みと将来ビジョン
熊谷は新幹線、在来線、高速道路が交差する交通結節点であり、首都圏へのアクセスの良さは大きな強みです。また、スポーツの街として複数のプロ・実業団チームが活動し、県立熊谷スポーツ文化公園やグライダーの滑空場など特色ある環境も整っています。
文化面では、埼玉県内唯一の国宝建造物である妻沼聖天山歓喜院聖天堂や関東一の祇園と称される熊谷うちわ祭など、歴史と伝統、文化を感じることができます。
今後はウォーカブルな街づくりを進め、工業団地造成による雇用創出を図り、若者が地元で働ける環境を整備していきます。都市経営はスピードと戦略が不可欠です。選択と集中を徹底し、持続可能な成長モデルを確立していきます。
加えて、地域経済を活発にするためには行政だけでなく民間企業との連携が欠かせません。新しい企業を呼び込むだけでなく、地元で頑張る中小企業を支援し、新しい挑戦を応援する仕組みを整えることも重要です。大学や企業、行政が協力し合い、人材が地域の中で循環する環境を作りたいと考えています。また、デジタル技術を活用して行政手続をわかりやすくし、情報発信を強化することで、市民のみなさんにとって使いやすい市役所になれるよう目指しています。都市の魅力は建物や道路だけでなく、挑戦する人が集まることで高まります。熊谷市を多くの人にとっての挑戦の舞台にしていきたいです。
■大学生へのメッセージ
最後に、大学生の皆さんにはぜひ「動く」ことを大切にしてほしいと思います。学業だけでなく、アルバイト、留学、ボランティア、起業など、さまざまな挑戦をしてください。経験の幅が広がるほど、判断力と人間力は磨かれます。
私自身、学生時代の経験が今の礎になっています。若い時の挑戦は、将来必ず自分を支える資産になります。失敗を恐れず、一歩を踏み出してください。皆さんの行動が、次の時代の熊谷をつくる力になるのです。
学生新聞オンライン2026年2月5日取材 京都芸術大学1年 猪本玲菜

津田塾大学3年 石松果林/京都芸術大学1年 猪本玲菜


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