参議院議員 厚生労働委員長 小川克巳

理学療法士としての専門性を活かし、リハビリの重要性を届ける

参議院議員 厚生労働委員長 小川克巳(おがわかつみ)

■プロフィール
北九州市出身、理学療法士。九州リハビリテーション大学校卒業後、臨床・教育に従事する傍ら、熊本県理学療法士協会会長、日本理学療法士協会副会長などを歴任。
現在、参議院議員(2期目)。厚生労働委員長(2度目)、リハビリテーションを考える議員連盟事務局長、産前産後の母体に対するケアを通じて包括的に女性支援を考える議員連盟事務局長など要職を務める。

理学療法士として臨床や教育の現場に立ち、その後政治家になった小川克巳さん。現場経験や専門性を活かし、リハビリテーションを真に議論できる仕組みづくりに取り組んでいます。現場の声を法案の一文字に込める想いやチーム医療を阻む原因への問題意識など、自ら政策議論の土俵を作り上げた情熱の源泉に迫りました。

■患者さんと直接関わる道へ

私のこどもの頃の夢は、身体が弱かった母の影響もあって、医師になることでした。しかし、家庭の事情等で医学部への進学が難しい状況になった際、せめて医療には関わっていきたいという思いから、その頃はまだ珍しかった理学療法士を目指すことにしました。
当時は「リハビリテーション」という言葉の認知度も低く、理学療法士自体が新しく珍しい職業であったため、純粋に面白そうだと感じました。何より、大きな魅力だったのは、患者さんと直接関わることができる点です。進学した九州リハビリテーション大学校では、障がいを持つ子供たちと社会との接点をつくるボランティア活動に注力しました。在宅障がい者の方々のご自宅を訪問して外出を手助けしたり、障がい者同士をつないだりする経験を通じて感じた、理学療法士としてのあり方と様々な問題意識。これが私の理学療法士としての軸を作り上げてくれたと思っています。
ともあれ、理学療法士として臨床で一定の経験を積み、次へのステップを模索していた私は、強力にお誘いを頂いた理学療法士養成校の教員へと環境を変えることになりました。それに伴い、昼間は教員として、夜は夜間大学の学生として経済や商業を学ぶという二つを同時並行でやったこともあります。商学に特別の関心があったわけではありませんが、後に日本理学療法士協会で副会長と事務局長を併任したときには大きく役立ちました。人生においてまったく無駄な経験というのはひとつもないんだなと改めて感じた経験でした。どんなことでもひとつひとつが自分自身の血や肉になるということを是非皆さんにお伝えしたいです。

■リハビリテーションを真に議論する

私は、自分自身が政治家になるとは夢にも思ったことはなく、国会議事堂の中を走り回っている現在でも実感は伴っていません。しかし、理学療法士協会の役員として、関係省庁など、様々な方々と接する中で、政治力の重要性に気づかされました。日本は法治国家であり、法がすべての規範となっているため、その立て付け一つで人々の生き方が変わってしまいます。これは医療の現場でも同じことが言えます。法に守られている反面、逆にそこから外へ広げようとしても、法律が不必要な壁となって動けない場合があるのです。
例えば、本来であれば専門知識を持つ有資格者が行うべき行為であっても、理学療法士はライセンスがあるがゆえに、法律によって縛られていることがあります。一方で、全く資格のない人たちは逆に法律による縛りがないからこそいろんなことできてしまう。こうした世の中の枠組みの不自由さがあります。私はこうした制度の問題に、社会保障を舞台として今まさに取り組んでいるところです。
理学療法士として現場の経験はありますが、それでも理学療法の分野ですら自分が知っていることはごくわずかです。知らないことの方が圧倒的に多く、個々の領域の問題はその現場にいる人たちに直接聞かなければ分かりません。隣接する分野であれば多少の想像はついても、実際に声を聞くと全く異なることもあります。こうした現場の声は、各省庁の部会、私で言えば厚生労働部会などで活かされます。様々な立場の議員が集まって議論を練り上げ、原案に修正を加えていきます。閣議決定されて国会に出されると法案は事実上変えられないため、修正が可能なタイミングで訴えていくことが必要になってくるのです。
また、議論をするためには、まず相手と共通の土台を持たなければなりません。たとえば、少子高齢化社会においてリハビリテーションは重要だと言われながら、これまではそれを政策的に議論する場が日本にはありませんでした。そこで私は、議員になって5年目に自民党の政務調査会の中に、「リハビリテーションに関する小委員会」というものを立ち上げました。他の議員にリハビリテーションを知ってもらうステップが必要で、これには時間がかかりますが、ようやく専門知識を広め、課題を詳しく知らない人とも政策的に議論ができる土俵ができたのです。また、議員連盟というものがあり、私のもうひとつの活動として、妊娠・出産のケアにおける理学療法の普及や女性の生涯を通じての支援システム構築などに向けて動き始めています。

■互いの専門性を認め合う「チーム医療」を目指して

政策を動かす中での難しさは、同じ業界内での摩擦や既得権益との調整にあります。何かを実現しようとしても、他職種との軋轢が起きる場合があるため、周囲に迷惑をかけないようすり合わせを行う必要があります。しかし、自分の考えがたとえ一文字でも法案に載り、一人の人間として国の動きに具体的に貢献できたときには、大きなやりがいを感じます。
現在のわが国の初歩の課題は、それぞれの専門性を持つ人が対等な立場で認め合い、補完し合うことで相乗効果が生まれる「真のチーム医療」の実現です。しかし現状の日本の医療制度は、医師を頂点とした上意下達のようなシステムになっており、多様な視点からのアプローチが活かされていません。これからの深刻な人手不足を考えると、相互に連携して2人の力を3人分に高めていくような仕組みが不可欠です。一人の患者さんを多角的にサポートできるよう、こうした制度的な問題を早く解消していきたいと考えています。

■大学生へのメッセージ

大学は、リサーチマインドを育て、幅広い志向の中から多くの選択肢を持てるようになる大事な場です。もし人生の途中で行き詰まってしまったとしても、次の選択肢を選び直せることが重要です。例えば、リハビリテーションを学んでいる学生は、必ずしも理学療法士になる道だけではありません。そこで得た知識や技術は日常生活でも役に立ちますし、それを活かせる仕事は他にもたくさんあります。
皆さんに大切にしてほしいのは、色々なことに問題意識を持ち、単に困ったなぁで止まらず、じゃあ、どうすればいいのかという解決策まで考えていく姿勢です。そうすることで、自分自身の人生に希望を持てるようになるはずです。「こうしたい」「こうなればいいな」と思うことがあれば、ぜひ考え続けてください。その願いを常に自分の中で意識することで、いつか実現するものだと、私自身の経験からもそう思うからです。最初は与えられた環境であっても、その先の環境は自分で作っていくものです。自分が理想とすることを日常の会話の中で口にしていれば、自然と同じ志を持つ人たちが集まり、大きな力になります。それが結果として、国や政治を変えることにもつながることがあるでしょう。私も、若い皆さんがこれからも希望や夢を持ち続けられるような社会にしたいと考えています。

学生新聞オンライン2026年4月1日取材 東京都立大学3年 坂倉彩月

早稲田大学3年 中澤京平/東京都立大学4年 坂倉彩月/獨協大学2年 中津亜結梨/城西国際大学3年 渡部優理絵/法政大学4年 島田尚和

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