株式会社グルメ杵屋 取締役 代表執行役社長 最高経営責任者(CEO) 椋本充士

杵屋から世界へ。困難を乗り越えた先に見据えるものは

株式会社グルメ杵屋 取締役 代表執行役社長 最高経営責任者(CEO) 椋本充士(むくもとあつし)

■プロフィール
2021年6月に株式会社のグルメ杵屋の代表執行役社長就任(現任)。その後、2022年1月に株式会社グルメ杵屋レストランの代表取締役社長就任し、現在は代表取締役会長(現任)。

うどん屋に始まり、今や機内食、卸売、冷凍食品など多岐にわたる事業を展開するグルメ杵屋。この飛躍の裏には、低迷していた業績を見事に再建した椋本充士社長の手腕が隠されていた。今回は、そんな外食再建の裏側や、これから東南アジア地域へそのシェアを広げていく今後の展望を伺った。

大学時代は近畿大学のスキー部に所属していました。高校の時から選手としてスキーをしておりましたが、大学では一変して、4年間マネージャーを務めました。スキー部に入る前、マネージャーは、選手の手伝いや練習の組み立てなどのサポートをすることが仕事なのだと考えていました。しかし実際には、クラブの運営に関わる資金運用が主な仕事でした。年間175万円という大きな資金をやりくりするなかで、銀行の定期口座に預けることで何万円か金利がつくということなど、選手の側からは見えない大人の世界を経験することができました。

■組織は変えられると知った大学時代

当時の体育会系部活は、厳しい上下関係などは当たり前で、多少の暴力行為も指導の一環であるとして、不祥事にすらなりませんでした。しかし、ある時の近畿大学の総合ミーティングで、この風潮を廃止すべく、上級生の下級生への過度な指導は禁止になりました。この取り組みは、当時は非常に異例だったので、瞬く間に全国の学校に広まりました。そうすると、オリンピック選手レベルの後輩が次々と近大を志望するようになり、インカレで総合優勝することも叶いました。この経験から私は、組織はすぐには変わらないけれど、少しずつ変えていくことで、数年後には大きな変化をもたらすことができるのだと実感しました。

■赤字の中与えられた社長職

現在の杵屋に入社してからは、財務管理、教育研修、システム・店舗開発など様々な分野で営業をしていました。2008年にはリーマンショックが起こり、杵屋は創業初の赤字となり、その2年後に社長に就任しました。というのも、1990年に開催された大阪花の博覧会以降店舗への来客数は徐々に減り続けていて、当時の経営体制は根本の原因を突き止めるのではなく、目先の手当ばかりしていたため、この赤字という事実は驚くことではありませんでした。この状況をどう乗り越えていくかが、当時私に与えられた役割でした。

■それぞれの店舗の意識改革が

杵屋は1971年に1号店が開店し、当時は一等地に店舗を構える戦略で大きな売上を出してきました。けれど、それは高度経済成長の賜物であり、お客様が再びお店に足を運んでもらえるような働きかけを全く行ってきませんでした。さらには、バブル崩壊後、来客数が徐々に減る中で、昔と全くやり方を変えてこなかったので、香川のうどん屋を模倣したセルフ式の導入や、うどん1杯の値段格安化などの戦略を打ち出した同業他社に出遅れることとなりました。業績は赤字なのに、他社のように工夫も凝らさない当時の杵屋を変えるべく、私は他の部門の経費を削減して、教育への投資を増やしました。具体的には、各店舗の店長が、お客様にまた来てもらえるような取り組みを考えるための研修を充実させました。とある店では家族連れが多く、その店舗の店長は、近隣の図書館から絵本を借りてそれを貸し出したり、塗り絵を渡したりするなどの工夫を施しました。一方で、イオンモール内にある、平日夜の来客数が少ない店では、その店舗でパートとして働いていたジャズバンドマンの演奏会を取り入れるなど、既存の思考にとらわれないやり方で店舗を盛り上げていました。これらの工夫を、店長会で互いに報告し合うと、各々の店舗が刺激を受けて、更なる営業スタイルの変化が起こりました。これらの付加価値を生み出していくことで、杵屋は赤字を脱却し、再び飛躍を遂げることに成功しました。

■これからも変わり続けるグルメ杵屋

今や杵屋は来年に創業60年になり、その領域はレストラン事業の垣根を越え、M&Aを通じた、機内食、卸売市場、そして冷凍食品まで幅広い事業展開をしております。当初、こうした事業展開は買収先の企業を手助けするという形で行ってきましたが、現在はこれらの事業のポートフォリオをどう組んでいくかに思考を巡らせています。事実、今年の3月には世界の機内食大手であるLSGグループの、アジア太平洋地域に展開する事業の株式取得のため、神戸物産との共同出資による合弁会社を設立することを決議しました。杵屋としてはレストラン事業に加え、このアジア太平洋を軸とした機内食事業に、より力を注いでいこうと考えております。
また、他の場面においても杵屋は変化をし続けます。その1つに来年度の採用枠の追加があげられます。来年度は従来の採用に加え、幹部候補となりうる方を追加で採用するつもりです。彼らには、一年目でレストランもしくは機内食事業を経験させ、二年目からはLSGグループとして海外で活躍する役割を担ってもらいます。加えて、これからの人手不足問題に立ち向かうために、2022年より日本語学校を始めました。ここでは主に東南アジアの地域から人を集め、世界で活躍できる人材を育成したいという狙いがあります。これは杵屋の社員という枠組みに限らずに他社や海外、母国など、あらゆる領域で活躍できることを目的とし、そのための法整備も含め、私たちはこれからも努力してまいります。

■学生へのメッセージ

私が学生の頃は、「どうやってサボろうか」といったことばかり考えていました。しかし今の時代は、「在学中にどのようなスキルをどれほど身につけたか」が非常に大事になります。採用のシステムも、これからは固定の初任給ではなく、学生時代に身につけたスキルに応じて初任給が変わる仕組みに変化していくでしょう。だからこそ、卒業後でも勉強はすべきだし、大学の入り直しも視野に入れて良いと思います。時間はかかるけど学んだことはいずれ自分に返ってくる、このことを意識して頑張っていただけたらと思います。

学生新聞オンライン2026年5月27日取材 早稲田大学3年 中澤京平 / 法政大学2年 森川葵

東京女子大学3年 浮田梨紗 / 京都芸術大学1年 猪本玲菜 / 法政大学2年 森川葵 / 情報経営イノベーション専門職大学2年 山田千遥 / 早稲田大学3年 中澤京平

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