株式会社マウスコンピューター 代表取締役社長 軣秀樹
経験が選択肢を広げ、人生の可能性を切り拓く

株式会社マウスコンピューター 代表取締役社長 軣秀樹 (とどろき ひでき)
■プロフィール
1969年、長野県長野市生まれ。学生時代はメカトロニクスを専門に学び、機械設計を中心に電気やプログラミングなど幅広い知識を身につける。卒業後は飯山電機株式会社に入社し、長年にわたり開発の最前線で活躍。電気回路設計や製品開発、品質管理など幅広い業務を経験し、サービス品質の向上にも尽力。2024年に代表取締役社長に就任。「仕事を楽しむこと」を大切にしながら、ものづくりへの責任と挑戦する姿勢を従業員に伝えている。
国内生産と充実したアフターサポートを強みとするパソコンメーカー、マウスコンピューター。代表取締役社長の軣秀樹さんは、長年開発の最前線で培った経験を活かし、従業員や業界全体の成長を見据えた経営に取り組んでいます。ものづくりへの思いや仕事への向き合い方、そして学生へのメッセージについて伺いました。
専門職に近い環境で学んでから職につきたいという思いがあり、学生時代は小学生の頃から興味があったメカトロニクスを専門に学んでいました。機械設計を中心に、電気やプログラミングなど幅広く身につけました。学外ではガソリンスタンドでアルバイトをしていました。2年前に現在の立場になるまで、私はずっと開発職として働いてきたため、営業経験はあまりありませんでした。しかし、アルバイトを通じて多くの人と接した経験が、誰とでも自然に話せる力につながり、今の仕事にも活きていると感じています。
卒業後は、液晶ディスプレイなどを扱う飯山電機に入社しました。
長野市出身だったこともあり、「地元の企業で働きたい」という思いが強かったからです。当時はバブル景気の時代で、さまざまな企業に挑戦できる環境でしたが、地元への思いを大切にしました。
■ゼロからのものづくりを伝えたい
ものづくりの魅力は、ゼロから製品を形にしていく過程にあります。苦労も多いですが、それ以上に完成した時の喜びは大きなものです。パソコンは国内ですべての部品をゼロから作ることはできません。しかし、多くの部品メーカーと協力し、それぞれの技術を組み合わせることで、一つの製品が完成します。そうして生み出した製品をお客様にご利用いただき、その先にある喜ぶ姿を想像できる瞬間こそが、ものづくりに携わる者にとって最も大きなやりがいであり、幸せな瞬間だと思います。
従業員によく伝えているのは、「一台のパソコンが完成するまでにどれだけ多くの人が関わっているかを想像してほしい」ということです。 だからこそ、自分たちの仕事一つひとつに責任を持ち、お客様に長く使っていただける製品を作ることが大切だと考えています。こうした考え方は、私自身が長年、開発職として働いてきた経験から生まれたものだと思います。
マウスコンピューターのグループに入った2006年までは技術畑でした。電気回路の担当となったのですが、学校では軽く触れていただけだったので、社会人になってからの方が勉強しました。負けず嫌いな性格なので、教えてもらっていた先輩を超える思いでした。
1年目から担当モデルを受け持っていましたが、一から回路図を書き、実際に動かし、何度も実験をしていました。当時はCADなどのソフトもなかったので、1年ほどかけて手作業で開発していました。また、工場の立ち上げや、国内外へのアフターサービスの指導などを一通り担いました。海外にも一人で訪問し、身振り手振りでコミュニケーションを図っていました。自ら作った製品への熱意が言葉の壁を超えて伝えられたことは、私の人生で最大の糧となっています。
■仕事を楽しむ社風
マウスコンピューターは、国内でパソコンの開発、組み立てからアフターサービスを行うパソコンメーカーです。それぞれの部品メーカーからの協力で組み上げた製品が、問題なく使っていただけるための信頼性を担保できるようにチェックするのが開発部門や品質管理部門です。そして、お客様に長く安心してお使いいただくためのアフターサービスにも力を入れています。日本のお客様向けにパソコンを販売しているからこそ、国内生産ならではの品質やサポートには強くこだわっています。
私たちだけがビジネスとして成長すればいいという考えはなく、部品メーカーや流通業者、販売店の皆さまと共に成長して初めて、ビジネスが成功したと言えると思っています。
マウスコンピューターの魅力は、新しいことにチャレンジしやすい環境が整っている点にあると思います。スマートフォンや翻訳機、住宅のセキュリティ製品も作りました。世の中の流れより早かったこともあり、市場に受け入れられなかったものもありましたが、マウスコンピューターには、そうした挑戦にも積極的に取り組める環境があります。もう一つは、失敗を責めずに、学びとすることです。私自身もそうですし、社内にそのような文化が根付いています。昨年、従業員にも楽しく仕事をしようと伝えました。私も開発時代は非常に多忙な日々を送っていましたが、苦労よりも楽しんだ記憶ばかりです。楽しく働くことで、いい仕事ができると思いますし、そこから湧いてくるアイディアはとても貴重なものです。仕事のことで悩むよりも大切なのは、「楽しむために自分にできることは何か」と考えることだと思います。
■仕事を共にしたい人
自分の意見をしっかり持って、それを実行できるような活力のある方と一緒に仕事をしたいなと思います。自分の考えやアイデアをしっかり言葉にして発信できることも非常に重要だと思っています。お互いの思いや方向性を共有しながら取り組むことで、業務のスピードや質も高まり、より多くのアイデアが生まれると思います。
知識や資格は、多いほどいいと思います。自ら学び、知識を得ようとする姿勢があるからこそ、あらゆる情報が身につきますし、それが自分の中の選択肢を増やし、イレギュラーな仕事にも対応できるようになることにもつながります。
■大学生へのメッセージ
学生にしかできないことを学生のうちにやりきって欲しいです。そのうえで社会人になることで、気持ちの切り替えがしやすくなり、仕事をより楽しめる良いスタートを切ることができると思います。
若いうちは吸収力が高く、多くのことを自分の力に変えられる貴重な時期です。世の中の変化に不安を感じることもあるかもしれませんが、技術が進歩するように、人も成長していきます。 環境は変わっても、その中で自分自身も確実に前に進んでいけるはずです。
また、近年は新卒入社後すぐに転職を選ぶ方も増えています。しかし、続けてみなければ見えてこない景色もあります。「自分には合わない」と決めつける前に、一度立ち止まってじっくり考えてみてください。経験を積み重ねることで、自分の選択肢は広がります。焦らず、自分らしい道を選びながら、自分の可能性を広げていってほしいと思います。
学生新聞オンライン2026年5月1日取材 武蔵野美術大学2年 石井生成

京都芸術大学1年 猪本玲菜/津田塾大学4年 山下さくら/武蔵野美術大学2年 石井生成/城西国際大学3年 渡部優理絵/早稲田大学3年 中澤京平


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