株式会社バトンズ 代表取締役 CEO 神瀬悠一
コンフォートゾーンを捨て、激動の時代をチャンスに

株式会社バトンズ 代表取締役 CEO 神瀬悠一様 (かみせ ゆういち)
■プロフィール
1977年生まれ。エンジニア、コンサルタントを経験後、リクルートにてリクルートマーケティングパートナーズ執行役員、リクルートライフスタイル取締役、リクルート住まいカンパニー取締役を歴任。2019年4月にバトンズへ取締役CMOとして参画、2022年3月に代表就任。
IT業界、コンサル、リクルートを経て、M&Aプラットフォームを運営する株式会社バトンズの代表取締役CEOを務めている神瀬さん。「会社の結婚」とも言われるM&Aを通して、日本の中小企業や地域の未来を支えている。成長を軸にキャリアを重ねてきた背景や学生へのメッセージを伺った。
私の学生時代を振り返ると、今の仕事からは想像もつかないほど「学業以外」に熱中していました。小学校時代はずっと野球少年で、中高はバスケットボールに熱中していましたが、大学に入ると急に音楽に没頭しました。下北沢でライブをしたり、音楽サークルに所属したりと、当時は音楽とバイト以外にはほとんど熱中していませんでした。
本来、学業を主とすべきでしたが、正直に言えば音楽ばかりの毎日でした。私が通っていたのは早稲田大学理工学部の情報学科(当時)です。1996年から2000年の在学期間は「Windows 95」が登場したばかりで、誰もがパソコンを使い始めた時代。プログラミングを学ぶ場に身を置いてはいましたが、真面目な学生だったかと言えば、だいぶ怪しいものでした。
就職活動においても、現在のようにインターネットで調べる仕組みはなく、自宅に届く大量のダイレクトメールを眺めるような時代でした。「絶対こうなるぞ」という強い意志があったわけではなく、情報学科にいたことから自然とIT系に流されるようにして、1社目のエンジニア職へと進みました。
■会社と会社の幸せをプロデュースする
その後、リクルートでの経験を経てバトンズの立ち上げ期に顧問として関わり、現在はCEOとして経営を担っています。私たちが展開する「BATONZ(バトンズ)」は、M&Aのマッチングプラットフォームです。例えば、家を探すときに見る不動産サイトのような役割で、会社を売りたい人と買いたい人を結びつけています。
会社の売却という情報は、秘密保持が極めて重要です。そのため、最初は会社名を出さずに「神奈川県の売上〇億円のネジ工場」といった概要だけで募集し、秘密保持契約書などを交わした相手のみに社名を公開し交渉を進めます。
私はM&Aを「結婚」に近いものだと考えています。事業的なシナジーも大切ですが、最終的にはトップ同士の相性が合うかが極めて重要です。だからこそ、私たちはDX化とコンサルタントによる人のサポートを融合したサービスを提供しています。「社員をどう思っているか」「未来をどうしたいか」といった価値観が一致していないと、成約後の成長は望めません。条件交渉を含め、社長同士の間に入るこの仕事は「ビジネスの総合格闘技」と言われるほど大変ですが、その分大きなやりがいがあります。
■急成長組織のさらなる進化とAI革命への挑戦
もちろん、会社としての課題もあり、大きくは二つあります。
一つ目は、急成長フェーズにおける組織力のさらなる強化です。バトンズは2026年4月で9期目の若い企業ですが、数年前まで数十人程度だった仲間が、今では100人を超える規模まで増えました。新卒の採用も始めていますが、私たちは経営者の人生に一度の大きな節目に寄り添うプロフェッショナル集団でなければなりません。急拡大した組織の中で、全体の組織力をさらに高め、現場のプロフェッショナル意識や「お客様に感動を届ける現場力」を一層磨き上げていきたいと思います。
二つ目は、「AIへのキャッチアップ」です。現在のAIの進化には凄まじいものがあり、プログラミングさえAIが書く時代になりつつあります。M&Aの現場でも、これまで人間が手作業で行っていた数十ページのPowerPoint作成や、複雑な決算書の財務分析といった仕事は、今後AIに置き換わっていくでしょう。バトンズにとってこれは大きなチャンスですが、もし対応が遅れれば、より便利なプラットフォームに取って代わられてしまいます。この「第四次産業革命」とも言える環境変化にどう適応し、ビジネスモデルをぶっ壊すほどの覚悟でキャッチアップできるか。これが私たちの未来を左右する大きな課題だと考えています。
■日本の未来を繋ぐ夢
私の夢は、日本から「黒字廃業」をなくすことです。現在、日本では年間で6万社以上が休業・廃業、解散していると言われており、その約半数が黒字であるにもかかわらず、高齢化などの理由で事業を畳んでいます。地方の美味しい食べ物や独自の文化を支えているのは、こうした中小企業です。これらが消えてしまうことは日本らしさが失われることに直結します。バトンズが支援できているのはまだ一部ですが、これを1万組、2万組と増やし、「バトンズがあったおかげで廃業が減った」と言われる未来を実現したいと考えています。
■大学生へのメッセージ
これから皆さんが社会に出る中で、環境はさらに激しく変わっていくでしょう。人間にとって「変わらないこと」は快適なコンフォートゾーンですが、そこに留まっていては人生を豊かにすることはできません。変化はストレスでもありますが、それこそがチャンスなのです。
変化を恐れず、むしろ「遊ぶ」ような感覚で楽しんでください。好奇心を旺盛に持ち、目の前のことに熱中できる人は、必ず成長していきます。ダーウィンの進化論と同じく、変化できるものこそが生き残り、人生を豊かにできるのです。日本の未来を担う皆さんが、この激動の時代を楽しみながら進んでいくことを心から応援しています。頑張ってください。
学生新聞オンライン2026年4月28日取材 情報経営イノベーション専門職大学 2 年 山田千遥/上智大学 2 年 石川仁菜

駒澤大学 3 年 前田康介/上智大学 2 年 石川仁菜/実践女子大学 2 年 土屋栞菜/法政大学 2 年 渡辺碧羽/情報経営イノベーション専門職大学 2 年 山田千遥/京都芸術大学 1 年 猪本玲菜


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