銀座高須クリニック 総括院長・医学博士 高須 克弥
誰も成し得ていないことをやるからこそ面白い
銀座高須クリニック 総括院長・医学博士 高須 克弥(たかす かつや)
1945年愛知県生まれ。医学博士。昭和大学医学部卒業、同大学院医学研究科博士課程修了。美容整形外科医の草分け的存在として「二重瞼形成用糸」「脂肪吸引手術」など数多くの施術に関する特許を取得、世界の最新美容外科技術を日本に紹介。金色有功章、紺綬褒章を受章。「YES高須クリニック」のコピーをはじめとして、日本で最も広く知られる美容整形外科ドクター。
我が家は400年続く医者の家系です。当主は全員医者になることが決まっていました。本当は漫画家になりたかったのですが、医師免許だけはとっておけと言われ、昭和大学の医学部に入りました。
大学時代は博士号を取るため、大学院へ 年間行きました。専門は家族の誰とも被らない整形外科を選びました。大学では催眠術研究会に所属し、催眠術の研究をしていました。研究をしていく中で、切断した脚が残っていると感じてしまう「幻肢」に興味を持ち、論文を書くことにしました。頭の中に感覚領域があってそこに催眠術をかけていくと消えるということを論文に書きました。大学院1年生のときに、その論文が医学雑誌に掲載され、それが認められて博士号を取ることができました。大学院の4年間は大学に席を置きつつ鉄道中央病院や自衛隊中央病院でアルバイトとして働きながら交通外傷などを勉強していました。昭和大学では扱っていなかった分野だったので、学生だから勉強しに行くと言って自由に行っていました。
人工関節を作る研究に関心があったのですが、昭和大学の整形外科では取り入れていなかったためできませんでした。大学院2年生のときに、ドイツのキール大学との交換学生の機会があり、留学を決めました。キール大学は人工関節では最高峰の大学です。あるとき、人工関節の名人と言われていた先生の手術を見学できる機会に恵まれ、鼻を整形する手術を見ました。そのときの感動は大きく、「こんな世界があるんだ」と思い、整形外科の面白さにひかれました。そして、この技術を習得できれば日本で第一人者になれるのではないか、と思いました。
◾️高須クリニックの開業
日本に帰ってからは、病人が早く完治するよりも長く入院する方が経営的には儲かるシステムになっている医療制度に納得がいかず、名古屋で自由診療の美容外科、高須クリニックを開業したのです。
美容外科をやると言ったときは、叔父に激怒されました。当時の美容外科は、医者として失敗したものが集まる三流医者の吹き溜まりのような科で、ましてや「病気ではない人間にメスを入れる医者が高須家から出るのが恥ずかしい!」とまで言われました。しかし僕は、「これからの医療はいろいろな病気が治せるようになり、最後には病気がない世界になり、美貌と若さを欲しがる時代が必ずやってくる。だから美容外科はこれから伸びる、伸びしろのある医療なんだ!」と言い、反対を押し切って開業したのです。
あるとき、『危ない美容法』という美容系の本を出版しました。当時は美容整形の本はあまり出ていなかったこともあり、テレビ局から美容整形のことが喋れる医者ということで呼んでくれる機会が増えていきました。そしてたくさんの有名人がお客様として来てくださるようになりました。国内は北海道から九州まで13箇所、ハワイにも2箇所のクリニックを持つようになり、いつの間にか美容整形の専門家になっていったのです。
◾️美容医療は幸福追求医療
仕事のやりがいという面では、自分の体と顔を使って実験できるから面白いなと思います。今一生懸命やっているのは癌の治療で、挑戦的な治療を自分自身でやっています。誰もやっていないことをやるのが好きなのです。
今日本で流行っている、みんなが儲かっている美容整形の元ネタは、ほとんど僕なんです。脂肪吸引も僕が日本に広めたものですし、切らなくてもよい、糸で作る二重瞼も僕が発明したものです。いろいろな発明をして学会で発表すると同じことをされてしまう。だから途中からはパテントを取るようにしました。糸で作る二重瞼の糸のパテントを取り、糸で顔を引っ張り上げるパテントも取った。超音波で脂肪吸引をする装置のパテントもそうです。これらは特許庁がお墨付きを与えてくれるわけですから、僕が全部の創始者だということが公的に残ります。日本に留まらず韓国の美容整形を広めたのも実は僕です。
仕事上で楽しいことは、思いがけない歴史ができることです。医療現場では自分で実験ができるから楽しいですね。僕は全身ほとんど整形をしていて元のものがないんですよ。今の癌の治療も面白いですよ。
美容医療というのは第三医療です。第一医療は病気を治す治療医療、第二医療は病気にならないようにする予防医療、第三医療は予防も治療も関係なく、幸福を追求する医療です。だから美容医療はすごく小さな分野だけれど、これからはますます伸びる分野だと思います。なぜならば欲望には限りがないからです。
◾️message
大学に入ることを目的にしていると、入った後は燃え尽きてしまい、大成しない人をたくさん見てきました。キャンパスライフを今は楽しめないけれど、好き勝手ができるいわば最後のチャンスです。社会人になったらやれないことを学生のうちに全部やっておくと毒抜きになっていいですよ。いい子だった人は大成しなかった。ひとつ前の時代に怪しいことをやっていた人が次の時代の勝者になっていると僕は思います。
学生新聞 別冊 2022年7月1日発刊号 日本大学卒業 辻内海成
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