木梨憲武 チームという存在があってこそ個が輝く!
お笑いタレント・歌手・画家1962年3月9日生まれ。1980年、高校時代の同級生、石橋貴明と「とんねるず」を結成。NTV『お笑いスター誕生』で10週勝ち抜き、グランプリを獲得。KTV『ねるとん紅鯨団』(87年~94年)、CX『とんねるずのみなさんのおかげです』(88年~97年)など、数々のバラエティー番組を担当。歌手としても「情けねぇ」(91年)で日本歌謡大賞を受賞するほか「ガラガラヘビがやってくる」(92年)、「一番偉い人へ」(92年)などでミリオンセールスをはたす。2019年よりソロ音楽活動をスタートさせ、1stアルバム「木梨ファンクザベスト」は、iTunes総合アルバム・ランキング1位をはじめ8冠を獲得。画家としても94年より7度の個展を開くなどマルチに活躍中。 高校時代からテレビ出演をしていたという木梨憲武さん。今や芸歴40年。バラエティー番組だけでなく、音楽活動や自身の個展も開き、多方面で活躍している。木梨さんが芸能人生で大切にしていること、軸になっている考え方など、学生時代を振り返りながらお話を伺った。 ■サッカー一筋だった学生時代 小学校からずっとサッカーをしていて、高校では当時サッカー強豪校として知られていた帝京高校に進学。そこには全国から集まった選りすぐりの選手たちがたくさんいてプロに行く人もいました。しかし、自分はプロからは声がかからないだろうなということが分かっていました。大学で続けるという選択もありましたが、大学に入れば1年生だしまた雑用から始めるのか、と思うとそれが嫌で、高校まででサッカー人生を終えようと思いました(笑)。そして時を同じくして帝京高校野球部には石橋貴明がいて、彼もずっと野球をやっていたのですが、引退すると同時にテレビ番組への出演を始めていました。ある日、貴明に「面白そうなテレビ番組があるから一緒に出ないか?」と誘われ、二つ返事で快諾しました。それが初出演した所ジョージさんの番組「ドバドバ大爆弾」でした。その後も「お笑いスター誕生」などのお笑い勝ち抜き番組に出演していきました。すると周りのテレビ関係の人たちから、ウチの番組に出ないかなどと誘われることも多くなっていき、どんどんテレビに出始めました。 ■台本通りが必ずしも正解ではない テレビ番組の出演が多くなってきたのですが、僕たちは師匠もいなければ習う人もいない。コントや漫才というものがどういうものなのか全く分かりませんでした。そこで当時から披露していたのは、僕と貴明の持ちネタを交互に見せるツッコミもボケもないというお笑いでした。高校の部室でやっていたことをそのままテレビでやっているようなものでした。だからいまだにそれが正解だったのかどうかはわかりません(笑)。ただ、出演したオーディション番組でタモリさんと赤塚不二夫さんが「お前ら何やってるかわからないけど面白い」と言ってくれたのです。40年経った今でもその当時のスタイルを続けていますね。その後、レギュラー番組を持つようになり、番組内では自由にやらせていただきました。台本とは展開が違ってもいいから自由にやれと言われ、僕らも思いっきり暴れ回りました(笑)。大概はそんなことをしていたらプロデューサーやマネージャーに止められたりするのですが、僕らの周りの人たちはそれを許してくれていました。そのほうが僕らにはすごく向いていたのです。もちろん台本があり、決められたストーリーや流れはあるのですが、台本通りにやることが必ずしも正解ではないと思っています。流れにぴったり沿う必要はないし、一言一句違わずに言う必要もないと思います。物事の順番が前後したり、トラブルが発生したりしても最終的に面白いものが作れればそれでいいと思います。一番大切なのは、そこに笑いがあることなのです。だから共演者とのコントも1回だけ合わせて、内容もしっかり把握しないままに本番を迎えます。共演者には、本番では絶対に面白くしてくれる何かが起きる。怯まないであたかも練習通りです、みたいな感じでやってみてと(笑)。音楽や個展も同じです。初めはテレビの一コーナーだったのですが、周りから本格的にやってみないかと言われ、二つ返事で引き受けたところ、とんとん拍子に進んで行きました。そこにはプロの人たちがいるから、絶対いいものができるってわかっていました。後は僕の面白そう、やっちゃおうという気持ちを乗せるだけでした(笑)。 ■ゼロから作り上げるやりがいだらけの世界 芸能界、音楽、美術とたくさんのことをしているけれど、すべてやりがいだらけの世界です。どれも何もない世界なので、そこからみんなで一つのチームとなって作り上げていく。それを見て僕自身も面白いと思うし、みんなが面白いと言ってくれる。それがテレビなのかYouTubeなのか、音楽なのか芸術なのかの違いだけで、全部一緒の作品だと思っています。そこにはチームという存在があって、どうすれば相手に伝えられるかをみんなで考えて、一丸となって作り上げていくものなのです。アートだったら線と色で、音楽だったら歌詞とメロディーで人に伝える。こんなに面白くてやりがいのある世界はないと思いますね(笑)。だから苦労は全くありません。たくさんのことをしているけれど、どの番組でも共通して一番大事にしていることは、作り上げていく上でそこに笑いがあるかどうかですね。自分も面白くて周りもそれを面白いと言ってくれる。自分だけが面白いと言ってはしゃいでいても絶対ダメだし、いいものは出来ないですね。チームが力を合わせることによって、一つの作品を作り上げていくものです。チームで楽しむことができていたらすごくいい作品ができますし、チームとして強いと思いますね。 ■やりたいことを優先する人生を 今まで全て自分のやりたいようにやってきましたが、それでよかったと思っています。自分のやりたいこと、面白いと思うことを優先してください。そうすれば不安や心配があっても最終的には苦労することはないし、面白い人生を送れると思いますよ(笑)。それと間違ってもいいから、何か思い立ったら早い勝負を仕掛けることが大事です。どんなことでもとりあえずやってみる。やってみて間違っていたらすぐに修正する。それを何回も繰り返していると、どんどん人生がいいほうに回転していきますよ! 学生新聞別冊2021年10月号 早稲田大学3年 原田紘志 <英文記事> Noritake Kinashi Individuals shine because of the existence of the team! ■Profile: Comedian, singer, painter. Born on 9 March 1962, he formed ‘Tonneruzu’ with his high school classmate Takaaki Ishibashi in 1980. After winning the competition for ten weeks, he won the grand prix in NTV’s ‘Owarai Star Tanjo!’. He has been...