株式会社 再春館製薬所 代表取締役社長 西川正明
社員の笑顔を大切にしお客様の夢の実現を目指す
■プロフィール
1973年熊本県生まれ。再春館製薬所に入社後、広告制作、研究開発等様々な業務を経験し、取締役経営統括本部長を経て2004年7月代表取締役社長に就任。2007年、コールセンター・本社機能を有するオフィス棟「つむぎ商館」を製造工場のある再春館ヒルトップに移転し、同一敷地内に製販一体の体制を築き上げる。2011年からは順次台湾・タイ等を拠点にし、海外展開も進めている。
偉大な創業者である母のあとを継ぎ、2代目として再春館製薬所を経営する西川社長。お客様の悩みに寄り添い、ともに夢の実現を目指すことで社会に必要とされる会社に育てていきたいという。創業の地、熊本にしっかりと根を張り、製品を磨き上げることに情熱を傾ける西川社長にお話を伺った。
姉の影響と、英語を学びたいという思いがあり、高校はアメリカに留学させてもらいました。高校卒業後、すぐに再春館製薬所へ入社するのですが、学生時代をアメリカで過ごしたことがいい経験になりました。日本はよくも悪くも島国。アメリカではどんな考えも一方的に非難せず、受容してくれる空気があり、少しだけですが、社会の多様性を学べたと感じています。
■どんなときでも相手の気持ちになりきって
創業者である母親は息子の私から見ても、とにかくなんでもできるすごい人。自分には同じやり方はできないし、同じ結果を出すことはできないと思っています。だからこそ社員みんなの力を借りて一緒にお客様に愛される会社にしていこうという気持ちが強いのだと思います。
お付き合いのある多くの尊敬すべき経営者に共通するのは、「社員を大事にされている方」だという点です。弊社でも最近、社員と会社のエンゲージメントを向上させるため、モチベーションクラウドサービスを導入し始めましたが、社員が元気だからこそ売上が上がるという考え方は、とても素敵だなと感じます。社長職を引き継いだときに決めたことは、社員とその家族に美味しいご飯を食べさせ続けること、つまりは社員が笑顔で働き続ける会社にすることでした。社員の笑顔は私にとって日々の仕事のやりがいなのです。
私は辛かったことも寝るとすぐに忘れるほうなんですよ。2016年の熊本地震や今年の新型コロナウイルスなど、日本にとっても弊社にとっても大きな出来事がたくさんありました。でも、この災害や感染症がなかったら気づけなかったこともあるので、私はプラスに捉えるようにしています。
例えば、年配の社員が腰を痛めないように、社内では12万円くらいする椅子を、私を含め全社員が使っています。ところがテレワークになって自宅の椅子に座った時に、会社の椅子の座り心地の良さに気づいたことなど。あらためて思いが伝わったことはうれしかったですね。
普段から一番意識していることは、何が辛いか嬉しいか、自分のこととして考えることです。例えばお客様を待たせてしまった時に、社員一人ひとりがお客様の気持ちになって考えることができたら、迅速に対応ができると思います。どんな時も相手の気持ちになりきって対応することは大事にしていることの一つです。
また、何か外に向けて新規事業を始める時は、一人ひとりの役回りを大事にしています。熊本地震の復興支援の際は、信頼できる社員に事業の再生を任せられたことで、社員に対しての独自の支援や地域にまで取り組みを拡充することができました。
■社会、お客様、社員に必要とされる会社づくり
2代目として引き継いだからには、業績を下げるわけにはいかない。しかし、今より売上を何倍も何十倍も上げていこうとは全く思っていません。そうではなく、今後100年、200年と続く会社にしていきたいと考えています。長く生き残る会社になるには、多くの人に必要とされる会社でなければならないと思います。弊社はただ単に商品を売っているだけではありません。商品を通して悩みや痛みを解決し、その先にあるお客様の夢、例えば旅行に行ったり、孫と一緒に楽しく遊ぶといったことを実現するのが私たちの役目だと思っています。お客様と一緒にゴールを目指す会社になりたいですね。
弊社は、お客様のリピート購入で存続している会社です。新たな顧客獲得に向けてやみくもにお金をかけるのではなく、お客様一人ひとりと寄り添い、耳を傾けることに注力します。例えばお客様の中に年齢を重ねていく中で更年期が辛いという声が多いとします。更年期って、気持ちが落ちこみやすいことが多いので、 しっかりとお話を伺い、お客様の悩みに寄り添うことがすごく大事だと考えています。このような他社とは違う方法や思考でお客様にサービスを届けられる会社になっていきたいし、社員一人ひとりが同じ意識を持ってほしい。毎年新卒採用がありますが、どれだけ能力がある人でも、理念や価値観が一致して同じ方向を見ている人でないと難しいと思います。一番は、お客様の喜びを嬉しいと思えること。学生に求めているのは、スキルよりもこの気持ちですね。
■message
最近の若い方は、多くの人が正解探しをしているように見えます。ですが人生は数学ではないので、間違いを気にすることなく、進んでいって欲しいですね。間違えたとしても、人の話を聞くことでより勉強になり、フィードバックをもらうことで成長します。
弊社ではアンケートを禁止しています。お客様一人ひとり、状態も動機も全く違うはずなのに、アンケート結果で「これが売れます」というのはおかしいと思う。社会も会社も人の積み重ねでできています。商売をするにしても現場、そしてお客様のリアルな声を大切にすることが必要です。
学生新聞2020年10月号 慶應義塾大学1年 伊東美優
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