株式会社ビーグリー 代表取締役社長 吉田仁平

ネットサービスだからこそできるコンテンツ作りで業界に貢献!

株式会社ビーグリー 代表取締役社長 
吉田仁平(よしだじんぺい)

■プロフィール

1971年生まれ、1994年早稲田大学理工学部を卒業後、日商岩井株式会社(現双日)入社。2007年に株式会社ビービーエムエフ(現当社)に入社、要職を経て2013年に代表取締役に就任し、2017年3月に東証マザーズ上場、翌年3月に東証第一部への市場変更を遂げる。その後、まんが王国の成長に加え、電子小説サービスの株式会社ノベルバ、総合出版社であるぶんか社グループのM&Aを実行し、コンテンツプロデュースカンパニーへの変貌を図る。

 お得感№1コミック配信サービス『まんが王国』を運営する株式会社ビーグリー。2020年10月に総合出版社であるぶんか社グループの株式取得を行い、ぶんか社グループの目利き力を生かしたコンテンツ提案やオリジナル作品制作を強化し、更なる成長と新たな価値の創造を目指すコンテンツプロデュースカンパニー。
日々進歩していくITビジネスの中で、時代が求める価値を模索すべく冒険を続ける吉田社長の考えを伺った。

高校時代は、福島から上京したくて大学受験をしました。そのため東京に出て知らないことが多く、好奇心も強かったです。当時、航空券が安くなり始めた時期だったので、勉強よりもバイトをたくさんして、貯めたお金で海外旅行に行っていました。とはいえお金はなかったので、行先は東南アジアや東欧が中心。人と違うところに行きたい思いがありました。その頃は日本の製造業が世界に名を轟かせていて、例えばタイの山奥でも冷蔵庫が日本製だったりと、日本企業の力を実感できたのはいい刺激でした。

コンテンツの打席に立つ

 実家が酒屋だったので商売への意識も強く、就職して人生の莫大なリソースを割くのであれば商売を極めたい、そして極めるなら商社だと。海外旅行での経験もあり、日商岩井(現:双日株式会社)に入社しました。商社では、本当は砂漠に石油コンビナートを作るような大きなプロジェクトを請け負いたかったのですが、大学で人工知能の研究室にいたためか情報産業本部に配属されて、最初の仕事は携帯電話の販売でした。全国の契約者数が200万台程度だった当時、年々市場が拡大していくのを肌で感じました。
 その後商社では幅広くIT関連について経験しましたが、コンテンツだけはやったことがありませんでした。ITとは突き詰めるとインフラ・手段であり、それを使って何をするかというのが重要なテーマですが、商社は投資規模の大きさで稼ぐのが得意なので、エンタメなどコンテンツは苦手でした。「ITの成長は最終的にコンテンツがけん引する」ということが頭の中にあって、それで縁あってこの会社に飛び込みました。もちろん漫画は好きでしたが、漫画をやろうというよりも、コンテンツをやろうと思って目の前に現れた打席が漫画だったという感じですね。

競合サービスとは違う『まんが王国』の「お得感」と「媒体性

 『まんが王国』と競合サービスの違いは、まずお得感です。当社は仲介業者を使わずに作り手と直接コンテンツの取引をして、広告も代理店を通さず自分たちで出稿しています。そのため収益性が高く、ユーザーや作り手への還元が可能です。
 また、ポイントの購入と使用の両方でポイントが還元されるポイントプログラムによって、お得に多くの作品を楽しんでくださっています。『まんが王国』を使うほど、ユーザーがたくさん読めるようにしているところが強みですね。
 もう一つは、電子書店としての役割だけでなく、雑誌のような「媒体」として役割を担えるようになってきたことです。元々漫画は紙で描かれて雑誌になり、面白いものが単行本になるという流れがありましたが、その雑誌の市場規模は年々縮小しています。これは新しい漫画を生み出す場が減っているということ。代わりにその役割を担っていけるのが、作り手と直接取引し媒体力を持っている当社なのです。
 電子書籍が普及する前は、書店で立ち読みをして気になった作品をつい買ってしまうという流れがごく当たり前でした。しかし、今は立ち読み防止のため包装している書店が多くあります。だからこそ当社では漫画をある程度無料で読めるようにしています。そもそも漫画とは続きが気になるように作られているもの。だから入り口を広げることは市場拡大に繋がります。ここで忘れてはいけないのが、消費スピードと生産スピードのバランスを保つこと。無料にすることで消費スピードが上がりすぎたり、営利目的に走りすぎると、クオリティが低下してコンテンツ自体の衰退を引き起こしかねない。作り手にきちんと適正な利益が行き渡るバランスを見極めることが業界成長には重要なのです。

「逆張り」できるが故のIT市場の使命

漫画が市場に出回る時、紙の場合だと、配送など流通コストが高くなってしまいます。市場規模が大きければ収益も出ますが、市場が小さくなると、確実に“当たる”ものしか商品にしにくくなります。しかしコンテンツは主流となる流行に逆らうこと「逆張り」によって、新しい流行が生まれます。流行と違うものを作る人がいて、流行に食傷していた消費者がそれに群がり、それに勝ち筋を見出した人がさらに流れに乗る。その新陳代謝が文化を形成するといっても過言ではありません。もちろんそれが全てではありませんが、コンテンツに逆張りは重要です。数字が見込めるものしか商品にできなくなっている出版市場では、この逆張りを試すことが難しい。
 流通コストがかからないネットサービスの世界ではそれが可能です。漫画に限った話ではなく、昨今はどの業界でもニーズの細分化が進んでいます。100人中5人が見るようなニッチなもの作りは流通カロリーの低いネットだからこそ可能であり、ネットの使命だとも思っています。
 コミック雑誌から単行本という出版市場の流れを電子で確立する。目指すのはそこです。一番いいのは、当社の媒体から誰もが知るような大ヒット作品を生み出すこと。『鬼滅の刃』のように一漫画作品がこれほどのムーブメントを起こせるのだから、漫画の力は全く衰えていない。当社のコンテンツが、誰もが知るものになるという野心は持ち続けています。

諦めの悪い人と働きたい

 会社としては、自らの意思で粘り強く動く「考動力」、常識に囚われず発想する「発創力」、物事を周りの理解を得て推進する「巻き込み力」のある学生を採用しています。
 そして私自身で言うと、諦めの悪い人と働きたい。他と抜きん出るには型に従えるかではなく示されていない答えを見つけに行けるかが重要で、それには試行錯誤をするしかない。だから粘り強さがある人と働きたいです。

大学生へのメッセージ

 目先のことに一生懸命取り組んでください。目標を見定めて逆算していくことももちろん重要だとは思いますが、最近は特に、その逆算のシナリオが常に正しいとは限らない。なので、とにかく目先のことを一生懸命やりましょう。逆張りすることも恐れず、食わず嫌いはせずに。

学生新聞WEB2020年12月15日取材  慶應義塾大学 1年 宮田峻輔


駒澤大学 4年 如意太一 / 日本女子大学 2年 神田理苑 / 明治学院大学 3年 菅井七海 / 慶應義塾大学 1年 宮田峻輔

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