株式会社タスキ 代表取締役社長 村田浩司

不器用でいい 自分の強みを太い幹に突き進む

株式会社タスキ 代表取締役社長 村田浩司 (むらたこうじ)

■プロフィール

1967年09月生まれ。
1991年 明和地所に新卒入社。
2002年に新日本建物に入社し、主に不動産開発事業に従事。
2016年に社内ベンチャーとして立ち上がった株式会社TNエステート(現社名 株式会社タスキ)に参画。
2017年に新日本建物から独立した後、2018年に株式会社タスキの代表取締役社長に就任(現任)
2020年10月東証マザーズ市場に株式公開を果たす。

不動産業界にデジタル化の風を吹かせ、多くの人々にとって身近で開かれた業界にしたいと独自の手法で成長を続ける株式会社タスキ。知識や経験の枝葉はないが不動産開発のプロフェッショナルを続けてきたという自分の強みを太い幹にここまで成長することができたという村田社長に仕事の魅力と今後の展望を伺った。

大学時代は勉強があまり好きではなく、なるべくやらなくていい方法を考えていました。オートバイが大好きだったことがきっかけでガソリンスタンドでのアルバイトを始め、大学時代の4年間、働いていました。大学1年生のときに「危険物取扱者乙4種」という資格の受験をアルバイト先の店長に勧められ無事に合格したのですが、資格を取得したことで当時700円だった時給が1100円まで上がったんです。その時、資格の持つ力の凄さを実感しました。自分が何者かを証明することができて、同じ仕事に同じ時間をかけたときの価値までも変えられることに衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。その後就活の時期を迎え、アルバイトの経験を踏まえて何かしらの資格を取りたいと思ったときがちょうど「宅地建物取引士」の受験ブームと重なりました。大学4年生でその資格試験に合格し、他に高い志があるわけではなかった私はせっかく持っているこの資格を活かそうと思い、不動産業界への就職を決め、1991年4月に明和地所に入社しました。

■資格のおかげで得た特別な経験

当時の新入社員は約100人いましたが、宅地建物取引士の資格を持っている同期社員は珍しく、皆のように顧客の新規開拓や飛び込み営業など地道な作業を積み重ねるのではなく、初めから「契約の場」に同席していました。新人で地方の契約や、深夜帯に行われる契約など都合よく使われることも少なくありませんでしたが何より、お客様に直接関わる仕事を早い段階からできたことがとてもいい経験になりました。「不動産は一生に一度、人生最大の買い物」と言われますが、その貴重な場面に若いときからたくさん立ち会ってきたのは良い経験でしたし、今日まで一つの業界でコツコツ続けて来られた原点でもあります。

■これだけは負けないというものを自分の幹に

その後2002年に新日本建物に転職し、社内ベンチャーとして始まったのが株式会社タスキであり、2018年8月に代表取締役社長に就任しました。注力している事業は、「コンパクトで無駄はないが充実している商品をニッチなゾーンに供給するTASUKI IoTレジデンス」「クラウドファンディングを通して多くの人々にとって不動産業界の間口を拡大するTASUKI FUNDS」「建築プランと事業収支の作成を自動化させその先に不動産業界の完全デジタル化を目指すTASUKI TECH」の3点です。
1つ目では、東京都内で駅近5分以内の小規模に特化したしており、スマートハウスを標準装備したIoTレジデンスの供給をしています。機能性を十分に備えつつも家賃は周辺相場と同等に抑え、新しいやり方で大手企業が投資効率の悪さを理由に供給を断念したニッチなゾーンを攻略することができました。
2つ目では、不動産投資を一口10万円に小口化と電子化したクラウドファンディングです。第1号案件を「認可保育園」という高い社会性を持ち合わせる施設にすることで、今までこの業界に関心を持っていなかった新たな顧客ニーズも取り込むことができました。この反響は想定外に大きく、クラウドファウンディングの受付開始からたったの3分で目標額に到達し、注目が集まりました。こういった少額投資から始まる不動産との関わり方も、将来的にはIoTレジデンスの購入に繋がることを期待しています。
そして3つ目では、長年不動産業界に染み付いた「アナログな面」を改善したいという思いから始まった取り組みです。これは、実際に現場に足を運ばなくても建設計画地をマップ上で選択することで、蓄積された膨大なビッグデータをもとに適切な建築プランの提案ができるテクノロジーです。私たちはこれを全国にある少人数規模の不動産事業者に向けて販売供給をしたいと考えています。全国には不動産業を主軸とする会社は約35万社ありますが、その約90%は従業員数4名以下の少数で経営しているのが現状です。少人数経営に伴う作業効率の格差をカバーして、不動産業界全体が発展していくことを願っています。
何かアクションを起こす時に今も昔も大事にしているのは、「自分は不動産開発のプロフェッショナルだ」という一つの強みを幹にして取り組む姿勢です。経営や経理を学んだことのない私が社長に就任してからこの2年、チャンスや決断の場面を乗り越えてこられたのは、今までの経験から作られた自分の幹を信じて向き合ってきたからでした。不器用でもいいから自分が続けてきたことに誇りと自信を持って日々の業務に取り組んでいます。

■目指すはオープンかつクリアな業界

このように様々な事業を展開し成長を試みていますが、私が目指すことは不動産業界全体を開かれた空間にし、仕組みを透明化することです。この業界は、規模が大きいことや専門的知識が必要であることを理由にまだまだ閉鎖的な業界です。テクノロジーを用いてそれらの問題を解決していくことで、一生に一度の買い物で悩むお客様の背中を押せたり、より多くの方々に不動産を身近に感じてもらうことができると信じています。

■大学生へのメッセージ

「何でもできる、より、なにか1つはできる」のほうが強いと伝えたいです。そのできる1つをとことん極めて、自分の幹を形成してみてください。幹は、専門性を示すことや周囲に自分の存在をアピールすることにも役立ちます。「ピンチはチャンス」です。その最強の武器を手に、果敢に挑戦していってください。

学生新聞WEB 2021年2月10日取材 日本女子大学 2年 神田理苑

津田塾大学 3年 脇山真悠 / 日本女子大学 2年 小野結貴 / 津田塾大学 1年 佐藤心咲 / 日本女子大学 2年 神田理苑 / 明治学院大学 3年 菅井七海 / 法政大学 1年 鈴木悠介

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